アイドルデスゲーム★乙女の生の叫びを聞け

@asashinjam

Prologue

アイドルデスゲーム開幕!!~入場、アイドル八女傑~

日本国、 ビッグ東京ドームタワーのスタジオにて

大勢のスタッフが慌ただしく動いている。

今日は10年に1度の日本国を挙げての大イベントである。

そのイベントの視聴率は2000%を超す。

嘗ての戦争を経て日本人口は500万人と激減したが

海外にも放映しているので

国民総人口の20倍の1億人が見ると言うマンモスイベントである。

動く金も人もけた違いである。

そのイベントを放送する為に日本国の放送全てを牛耳る日本国放送は

最精鋭のスタッフで事に当たっていた。

今日はイベントそのものでは無く開幕セレモニーだが

その気合いの入り様は凄まじかった。


「機材セットは!?」


日本国放送トップのうるし社長自らが陣頭に立ち

スタッフ達に指示を飛ばす。


「OKです!!」

「よばり様の席のスタンバイ!!」

「3度目のチェック完了しました!! OKです!!」

「ヴァーチャルアイドル達は!?」

「3Dホログラムは全部OKです!! アイドル本体も問題無し!!」

「リアルアイドルは!?」

「全員準備万端!!」

「良し最終チェックだ!!」


漆社長の指示で全ての事柄を社長自ら全てチェックする。


「良し・・・良し・・・良し・・・」


チェックを進める社長。

ばたり、 とADが倒れる。


「退かせ!!」

「「はい!!!」」


慌てて倒れたADを運ぶ別のAD2人。

彼等は倒れたADを床に空いた穴に投棄する。

この穴は下の階のメディカルセンターへの直通路である。


「良し・・・良し・・・良し、 全部大丈夫だな!!

ADの残りは何人だ!?」

「10人です!!」


チーフADの鹿島 束かじま たばが叫ぶ。


「10人か、 予想以上に少ないな、 おいお前達!!

ちゃんとADを育ててるんだろうな!!」


社長のげきが飛ぶ。


「使い捨てたり使い潰している様じゃあ

成り上がった時に駒が無くなるぞ!! 社長になっても結果を出さなきゃ

俺達テレビ族はスポンサーに殺されるぞ!!」

「「「「「はい!!!!!」」」」」


社長の言葉は誇張でも何でもない。

彼等が今準備をしているのは10年に1度の日本国を挙げての大イベント。

そして今年は50度目の開催となる節目の年。

ここで失敗をしようものならば漆社長を含めた日本国放送職員全員が

責任を取って介錯無しの切腹と言う地獄の責め苦を味わう事になる。


「ご苦労様ね」


しゃなりしゃなりと華美な飾りを付けた芸者よりも派手で

しかしまるで少女の様に清純な印象の女性が現れた。

肌に刻まれた皺から壮年を思わせる、 しかし皺すら美しい。

まさに別格を思わせる。


「よ、 よばり様!!」


彼女の名は照星しょうせいよばり。

今から行われるイベントに嘗て参加し勝ち抜き

トップアイドルの地位に就き

50年も芸能界の頂点に君臨した女王である。


「今日はよろしくお願いします」


よばりは頭を下げて挨拶した。

その数動作、 あまりにも美しい。

優雅で動きに一切のブレが無いまさに美、 そのものだ。


「い、 いえいえいえ!!

私共としても毎度の事ながら御足労頂き感謝の極みです!!」


社長以下スタッフ全員土下座である。


「そうですか、 そう言って頂き私も誇り高いですね

所で今回のアイドル達は?」

「全員準備万端です!! 呼びましょうか!?」

「いえ、 結構です。 先輩への挨拶程

野心有る後輩達にとって憂鬱な事は無いでしょうからね」


言葉端から匂う冗談の空気に感応し笑うスタッフ一同。


「後輩への気遣いをも怠らないとは流石です!!」

「えぇ、 あ、 そうどうゲスト・・・は如何なっています?」

「そちらも抜かり有りません、 が興奮気味ですね」

「そうですか、 まぁ大丈夫でしょう、 では開始まで待ちますね」

「は、 はい!! 何か飲み物は!?」

「水道水を頂きましょうか」

「分かりました!! お前達最終調整を!!」


社長は全力で走り出した。

そして皆、 作業を再開する。


「チーフAD、 水道水で良いんですか?」


ADの一人が鹿島に尋ねる。


「良いんだよ、 よばり様は日本水道局の看板娘

その看板娘が常飲する以上の宣伝効果は無い」

「へぇ・・・よばり様でもそこまで気にするんだ・・・」

「当たり前だ、 日本水道局からよばり様に支払われる宣伝費は

年にして1000万を超すと言われる、 全力を出して当然だ」

「マジか・・・トップアイドルすげぇ・・・」


社長から水道水を受取り飲むよばり。

その姿だけでも倒れる者は続出した。

無理もない、 広告越しに見て魅力を感じる程の存在が

傍に居れば魅力によって倒れる者は大勢居る。

芸能人に触れ合うテレビマン達でも耐えられるのは少数のみ。


「・・・凄い練度のスタッフ、 いや・・・」


老い、 か、 嘗ての自分ならば一挙手一投足で放送局程度制圧できたが・・・

と思いながらも、 気を失わない者達の多さに賞賛を心で送った。





「じゃあスタート1分前ー!!」


待っている間に放送開始が迫っていた。

社長自らがカウントダウンを行っていた。

よばりもスタンバっていた。


「5, 4, 3・・・」


証明が落ちてよばりの足音が響く。


「時は西暦4500年、 7月

地上を彩ったひまわりの絨毯も

空に響いたセミの声も遥か彼方・・・」


よばりをスポットライトが照らす。


「人類は5度の世界大戦を経て世界情勢も凄まじい変動を見せた

2つの世界の覇権国家は消滅し、 世界の中心はアフリカ大陸に移行し

文明は退行し、 人類もその数を多く減らした・・・

しかし!! 古代の超兵器でも!! 

日本の魂は殺せぬ!!」


ステージに証明が一斉に点灯する。

そして3Dホログラムシアターにて一斉に多くのヴァーチャルアイドルが現れる。

そしてよばりが巨大な門のセット、 否、 宮大工が拵えたセットと言う名の

本物の門の前に立った。


「日本の魂とは!! 化外払う火と雷を扱う為の技術!!

そして!! 命を華々しく使い燃え上がる武士の精神!!

此度も北海道、 東北、 関東、 中部、 近畿、 中国、 四国、 九州!!

8つの地区から集まりし武士の魂を現在に宿したアイドルが集まった!!」


門の横にそれるよばり。


「今年は開催50回目の節目の年に恥じぬ戦いを見せよ!!

アイドルデスゲーム!! 参加者入場!!」


ドライアイスの煙の中、 8人のアイドルが入場して来た。


マイクを手にしたピンクのツインテールとアイドル衣装に身を纏った少女。

薙刀を背負ってドレスに身を包んだ長い金髪、 青眼の美女。

弓道着に身を纏い、 長弓を持った黒髪ポニーテールの眼鏡美人。

洗練されていないアイドル衣装にミスマッチ肉体美が光る黒髪ボブウルフの少女。

ボディコン衣装を身に纏った銃器を手に持ち踊るラテンの美少女。

薄い金髪に青眼、 そして軍服に身を包んだ長身の美女。

シスターとしか言い様の無いシスターにしか見えない少女。


「・・・・・」


よばりは社長を睨まずに睨む。

7人しかいないのはどういう事だ?

眼で訴える。


その瞬間、 爆音が鳴り響く。


「・・・・・」


この場で? 日本国最大のイベントで? そんな大事な場で?

勝手やっちゃうの? 面白い!! 飛び込め!!

よばりは心の中で歓喜の声を上げた。


最後の一人はマスクで隠した特攻ファッションのアイドル。

ド派手な特攻仕様のバイクで会場に入り込んだ。


天晴あっぱれよ!!」


他の誰かが何か言う前に檄を飛ばすよばり。


「この場でそんな馬鹿な真似をするとはな!! 一歩間違えば炎上待った無し!!

にも拘わらずこの場でやらかすその意気や良し!!」

「意気も糞もあるか、 私達命賭けてるんだぜ?」


マスクアイドルは笑うよばりを睨みつける。

他の7人も同様だ。


「今年の大会、 大荒待った無しだな」


にっ、 と笑うよばりだった。

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