ひとつ
とあるところに仲の良い双子がいた
性別こそ反対だが親でも見分けがつかなかったらしく、二人はよく同じ格好をし遊んでいた
ある日の事、上の双子が行方不明になった
突然の出来事である
下の双子が言うには一緒に帰っている途中、振り向くと居なくなっていたという
ランドセルの中は"上の子は幸せの星になりました"と書かれた紙だけがあった
両親は警察に頼み、誘拐と見て捜査したが見つからない
母親は泣き崩れ、立ち上がることすら困難な状態な為、父親がなだめて家に一旦帰宅した
下の双子はそんな両親を寂しげに見つめていた
見かねた下の双子は母親に言った
「あのこは、いるよ」
その言葉に母親は悲しみをぶちまけた
「あの子は頭もよくて、気のきいた自慢の子だったのに!どうして?!どうしてあなたが残ったの?!」
母親はその後、「あ…」と口を押さえ下の双子を抱き締めた
父親は目も向けられないようだった
「あ……あ……ごめんなさい……ごめんなさい……」
母親は、抱き締めたまま謝り続けた
だが、下の双子は母親をそっと抱き締め返した
「だいじょうぶだよ……おかあさん」
父親と母親は、その言葉に下の双子を唖然と見つめた
下の双子は満面の笑みを浮かべ、母親の頭を撫でる
「あのこのぶん、がんばるからなかないで」
母親は小さく頷き、下の双子の頭を優しく撫でた
父親は泣きながら、母親と下の双子を一緒に抱き締めた
「ただいま…くーちゃん。きょうはがんばって100てんとってきたよ。でも、おかあさんもおとうさんも100てんじゃなくても、あなたががんばったなら、どんなてんすうでもいいっていってくれたの♪」
下の双子は、大きな熊の縫いぐるみに百点用紙を見せ嬉しそうに話しかけた
熊の縫いぐるみの背には、縫い合わせた糸の隙間からチラリと…
「あなたは私。私はあなた。やっと1つになれたね」
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