第45話 人魔戦争(吸血鬼領編)
それを遠くから見ていたヒカリはザイガスのことを早々に見切りをつける算段を付けていた。
「ほらね。何かあると思ったんだけどまさかあれほどとはね。攻め寄せたランスホース帝国も壊滅するわけよね。石が降ってきて、城門に迫ってもあの大型の矢でグサリとはね。(ザイガス、私は忠告はしたわよ。逃げ帰ろうとしたらアイツを殺さないとね。アンドレ様との約束だし)皆、撤退の準備だけしといて」
「かしこまりましたヒカリ様」
「よろしくね(アンドレ様が付けてくださったこの名前気に入ってるのよ。先代魔王に奴隷として売り飛ばされたスレイブシティで、娼婦として色んな男と文句も言わずに寝て。モネのことは気に食わなかったけど媚を売り、一つの娼館の女将にしてもらった。そこからは魔王様に接近して、奴隷を回していた。クレオにスレイブシティを解放され、私の悪事が発覚することを恐れて逃げ出した。今度は失敗しないように知恵も付けた。そしてアンドレ様の女になった。もう邪魔はさせない。クレオがザイガスを仕留められなかったときは私がザイガスを仕留めて帰るだけ)」
撤退準備を始めている後方部隊を見たクレオは、もう一つの秘密兵器を使うことを決めた。
「はぁ、めんどくさいなぁ。でも後方部隊を無傷で返してあげるほど僕は甘く無いんだよ。だって、すでにそこって僕のテリトリーだからね」
「殿、あれを使うのですな」
「シュテン、号令をかけてくれる」
「心得ましたぞ」
シュテンの号令で、魔王軍の後方部隊の後ろに突如として壁が地面から上がる。
「ハハハ。あれ以上後ろに陣取られたらどうしようって思ったけど、範囲内で良かったよ」
「殿らしいですな」
元サウザンド王国の国王であり、現魔頂村にて人間たちを束ねてくれているラングレンが20万の殲滅を考えるクレオに不思議そうに尋ねた。
「10万やれただけで十分でしょう。残りは返してやれば良かったのでは?」
「今回魔王軍が遠征に出した総数は100万ってとこでしょ。200万を本国内に置いてるそこにさらに10万増えるなんて後がめんどくさいじゃん」
「はっ、これが魔王軍の全軍では無いのですか?」
「アランから報告があってな。3分の1らしいのだ。それゆえ、殿は各地でも殲滅するために援軍の派遣を積極的に行っていたのだ」
「成程、それゆえ、この城には守りに長けたものしかおらんのですな」
「まぁね。だから誰1人逃すつもりなんて無いんだよ。徹底的に叩き潰すだけ。攻め寄せてきた相手に持ち合わせる慈悲なんてないからね。さて絡繰壁の性能はどうかな。壁が迫ってきて戦場へと押し出されるなんて相手も思わないだろうな。クスクス。死ぬ前に楽しんでもらおっと」
「殿」
「クレオ様」
2人がこの人だけは敵に回したく無いとクレオを見ていた。その一方で撤退の準備を始めていたヒカリはピンチに陥っていた。
「何で、急に後ろに壁が!?」
「壁なんて壊して撤退すればいいんですよ。オラァ」
壁を壊そうと渾身の力で殴る兵士であったが「イッテェーーーーーーー拳が砕けた。グワァーーー」とのたうち回っていた。その壁が突如動き出し、要塞の方へと押し込まれるのだ。巻き込まれたく無いヒカリとしてはたまったものでは無い。
「動く壁なんて、聞いたことないわよ。クレオはいったい何者だというの?」
「ヒカリ様、不味いですこのままだと我らも飛んでくる石の射程範囲に」
「まさか本気であの兵数で20万を殲滅するつもり。そうはさせない。こうなったら活路は前にしかないわ。皆、飛んでくる石を避けつつ、魔頂村へと攻める。全軍行くわよ」
「ヒカリ様に続け〜」
同時期、投石と連弩により、10万の兵を失ったザイールは、終わりの時を迎えようとしていた。
「クソ、俺は、どこで間違えた。リグレスト聖教国の時か、ヒカリの助言を聞き、もう少し様子を見るべきだったか。ガハッ」
連弩の大きな矢が手と足に当たり凄い力で押し倒される。その拍子で地面に矢が刺さり動けない状態となるザイガス。地面に両手両足を広げたまま磔の状態となった。
「簡単には殺さぬか。クレオめ俺から情報を聞き出すつもりだな。ならこれでどうだ」
ザイガスは舌を思い切り噛み自害したのだ。それを見たクレオはどちらとも取れない表情を浮かべると一言だけ呟く。
「あーあ、死んじゃったか。仕方ない。でももう1人の指揮官を捕らえれば良いだけだし、問題ないか。すぐ逃げる準備を始めるぐらい臆病だった訳だし余裕でしょ」
そうクレオは攻め寄せてきた魔王軍の奴らに持ち合わせる慈悲など無かった。徹底抗戦してきたものは全て討ち取り、武器を置いたものは、全て捕らえた。残りは後方にいた部隊10万だけである。それも迫り来る壁により、徐々に前線へと押し出されてきている。投石と連弩により壊滅するのも時間の問題であろう。そうまだ半年も経っていない。圧倒的な要塞による一方的すぎる戦であった。魔頂村の面々に疲れの色など無い。クレオによる美味しい炊き出し、安全なベッドでの就寝。まるで戦争など起こっていないほど中はのほほんとしていた。これも住民街にだけ開発して置いた音遮断機のおかげである。兵士たちもここと戦場を行き来する事により、ここの者たちを守るという使命感が戦場での緊張感へと繋がり、良い結果をもたらしていたのである。
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