最終章第一幕 内乱の行方 第1話 リグレスト聖教国の内乱勃発

 話は少し戻り、新魔王が全国に特別特例措置として5年の停戦を呼びかけた直後に戻る。

 吸血鬼軍との和平通商条約を締結し、リグレスト聖教会と名を改め新首相にザイールが就任する。その傍には名実共に妻となったノエルが寄り添い。近衛兵隊長にはフィーが就任し、十字軍は、神聖十字軍と改め軍団長にマクシムが着く。そして、新法皇に就任する人が今国民たちの前で挨拶をしようとしていた。

「皆様、初めまして、新しく法皇に就任することになりましたティメールです」

「キャー ティメール様よ。今日もカッコいいわ」

「何言ってんだ今日もお美しいだろ」

 皆が新法皇のティメールを祝福している。

「私は女でありながら神父と偽っておりました。魔族を匿ったりもしました。それにこの国では否定意見の多い、孤児院の経営もしておりました。そのような私が新法皇など納得できない方も多くいられることでしょう。無理に納得する必要はありません。どうぞ怒りをぶつけてください。ですがこれだけは言えます。創造主リグレスト様は招く人々に祝福を与えてくれます。それは人間だけでなく魔族や魔物、亜人たちにもです。神は等しく平等なのです。今までの価値観をすぐに捨てろとは言いません。ですが約束して欲しいのです。魔族だから何をしても構わない。魔物だから必要以上に殺しても構わない。亜人族だから虐げても構わない。断じて否です。そのようなことをすれば己に必ず還ると戒めてください」

「確かにその通りだぜ」

「そうよティメール様のいう通りよ」

 歓声がところどころで上がる。それもそのはずだ。ここにいる多くの人が妻や娘を吸血鬼に保護してもらっていた者や孤児院でティメールと共に魔族と過ごしたことのある者なのだ。ここにリグレスト聖教国は一つになったとそう感じる雰囲気だった。この場においては。このとき別の場所で事件が起きていた。そう、バーン8世前法皇が捕えられている牢屋だ。

「貴様ら一体何者だ。うぐっ」

「バーン8世様ですね」

「うむ。お主は?」

「新魔王に仕えているザイガスと申します。貴方様を救出しレジスタンスの結成を頼まれました」

「なるほどのぅ。アンドレ様は約束を守ってくださったようじゃな。ザイガスよ。我の信奉者たちは集めたか?」

「はっ」

「ククク。ザイールにノエルよ。我を謀ったこと後悔させてくれるわ」

「手始めに、信徒たちに破壊活動を命じておきました」

「どこにじゃ?」

「勿論、新法皇就任の挨拶が行われているセイント広場です」

「ククク。よもや信徒が違和感も感じずにセイント広場の破壊活動に参加するとは、流石魔素の力じゃな」

「お伝え忘れておりました。アンドレ様より『負ければお前との縁はこれまでだ』とのことです」

「うむ。わかっておる。必ずやザイール共を殺し政権を再奪取してくれるわ。ククク、カーッカッカッカ」

 新法皇ティメールによる就任の挨拶が終わろうとしたその時、ドカーンと大きな音と共にセイント広場の創造主像が壊される。そして続け様にところどころから火の手が上がる。

「何ですかこれは?」

「バーン8世様のために」

 全身真っ黒な信徒がティメールに斬りかかる。しかしその剣先がティメールに届かない。それどころか逆に切られる暗黒信徒。

「舐められた者ですね。私は昔麗しき剣聖と呼ばれた傭兵ですわよ。まさかまたこの剣を抜く時が来るとは思いませんでした。闇を祓う聖剣レーヴァテイン、毎日研いでて良かったですわ」

 斬られた信徒が起き上がる。

「あれっ俺はこんなところで一体何を?」

「闇が消えたようですわね。貴方は魔素に侵されていたのよ」

「ティメール様!?操られていたとは言え貴方に刃を向けるなんて、俺は俺は」

「悔やんでる暇があるのなら剣を取りなさい。相手は感情の無い殺戮マシーンです。貴方も剣を扱う者ならその力を守るために使いなさい」

「!?はい」

「皆、慌てずに目の前の相手にだけ集中するのです。私の心配は要りません」

「まさかティメール様がかつてリグレスト聖教国最強といわれた剣聖様だったとは」

 ティメールの剣捌きにより、次々と魔素から解放される信徒たち。そこに一向に訪れないザイールたち。この違和感にティメールは不安を感じていた。

『ザイール、そちらも大変のようですね。えぇすぐに救援に向かってあげませんとね。強がりのザイール、その後ろに隠れる恥ずかしがり屋のノエル、好奇心旺盛なフィー、3人とも私の大切な子供達ですもの。バーンに捕らわれていた私を助けてくれた貴方たちを今度は私が助けませんとね』

 ティメールは、心の中で決意を誓うと目の前の暗黒信徒たちに向き直る。

「このような悪魔の所業に手を出すとは貴方は心までも失ったようですわね」

「バーン8世のために」

「彼らに言っても意味はありませんね」

「どけどけどけ」

 ザシュッ。倒れる暗黒信徒たち。

「あらイスルギじゃない。どしたの出戻りかしら?」

「レイン団長!?いえティメール神父でしたね。ご無事で何よりです」

「誰に言ってるのかしら。貴方を鍛えたのは誰だと思って?」

「ハハハ。目の前の剣聖様でございます」

「よくわかってるじゃない。魔素への対処法は覚えているわね」

「はい。昔教えられたことが今役に立つとは思いませんでしたが」

「なら、この場は私1人で構わないわ。貴方は城に向かいザイールを守りなさい」

「ザイールが王城に!?すぐに向かいます」

「えぇ、頼んだわよイスルギ」

「お任せを」

 イスルギはティメールとの話もそこそこに王城へと向かう。こうして、内乱の火蓋が切って落とされたのだった。

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