第10話 一進一退

ヴァンレス川では、王侯貴族3家が指揮をとり、戦上手な諸侯貴族レスト公爵家の奮戦により何とか持ち堪えていた。後方支援が得意なナスタ子爵家、マクスウェル男爵家、サンド伯爵家、フォン侯爵家はこの戦場に来ていないので、諸侯貴族として、レスト公爵家が参戦している。

「シュタイン様、ライトキャノンが飛んできます」

「総員退避」

ライトキャノンから放たれた砲弾が着弾しあたりに光の魔法を炸裂させる。

「グワァー」

「クソ、引きが甘かった」

数人巻き込まれて被害を受ける。

「見よ。これぞ神の雷ぞ」

「次弾装填準備に入れ」

「はっ」

リグレスト聖教国軍はライトキャノンの次弾装填準備に入る。それを援護するかのように今度はライトデスガンによる攻撃が開始される。

「当たれば傷を負うぞ。盾で防御せよ」

「シュタイン様、このままでは、いずれ突破されます」

「わかっている。だが、耐えるしかない。あの新兵器は直撃すれば跡形もなく消されるぞ」

「くっ。一体上は何考えてるんだ」

「嘆いている余裕があるなら手を動かせ。抜かれれば次は本陣。そして我ら家族の住む領地。ここが踏ん張りどころぞ」

「オオオオオオ」

なんとか士気は持ち直した。もうひと頑張りせねばな。

戦場を見つめるバーン8世法皇。

「吸血鬼共も存外粘りよる。なぁ、ザイール」

「法皇様。ですが、各戦場での夜の馬鹿騒ぎ、絶えず攻め寄せる傭兵共で、疲れ果てているはず。そろそろ各地も崩れる頃かと」

「フハハハハ。長年続いた因縁もここまでぞ。ヴラッド家、滅してくれるわ」

「明日終いといたしましょう」

ザイールは、明日が吸血鬼共の終わりの日だと考えていた。だが、この時リグレスト聖教国軍は知らなかったのだ。クレオという男の存在に。

その日の夜、伝令が温かいご飯を運んでくる。

「これは物資配給かたじけない。婿殿にによろしくお伝えください」

トーマスの言葉に頷いた伝令は、アーロンの元に戻る。

「トーマス殿、一体何を考えているのかお聞かせ願いたい」

「シュタイン殿、王侯貴族に対してその口の書き方はなんだ」

「よさぬかジール。シュタイン殿、正直手をこまねいているのだ。川を挟んで向こう側から飛んでくるライトキャノン、的確に狙ってくるライトデスガン、終始攻め寄せる精鋭の十字軍、対処するだけで手一杯で反撃に出れない現状だ」

「命じてくだされば、このシュタイン反撃して見せましょうぞ」

「ダメだな。この戦は防衛戦だ。シュタインのあんちゃん。それに明日がどっちみち最終日だ。相手の兵糧もそろそろ尽きるはずだ。攻勢をかけてくるのは間違いない。それさえ凌げれば良い」

「ナターシャ殿ともあろう御方がなんと弱気な」

「なんとでも良いな」

「ナターシャも煽るでない。全く、シュタイン殿、娘をアーロン様に嫁がせたもの同士。ここは、アーロン様の作戦を信じませぬか?今必死に本陣にて考えておるはず。我らはアーロン様の元に敵をいかせぬように食い止めるのみ」

「アーロン様と言われれば信じるしかありますまいな」

「御理解いただき感謝しますぞ」

納得した全員が食事に手を付ける。

「おい、今日の給仕担当は誰だ?」

「伝令は?」

「帰っちまったな」

「なるほど」

「ハハハ」

「トーマスもシュタインのあんちゃんもどうしたんだ?」

「いや、この料理が娘から聞いていたクレオ様の料理かと思ってな」

「あぁ、不思議と力がみなぎる。さっきまで悩んでたのが馬鹿馬鹿しくなる」

「確かにな。これは美味い」

「ジールもウルファスから聞いているもんだと思っておったが?」

「アイツはクレオ様が剣を使いこなせたとかそんな話ばっかりであったわ」

「ウルファスらしいな」

「ハッハッハッそうだな」

食べ終わり、今日も騒いでいるせいで寝られんなと思っていたトーマスの元に伝令が戻ってくる。

「どうした敵襲か?」

「いえ、伝え忘れたことがありまして、アーロン様より夜の見張りに少数の兵のみを残し、後のものはこれを耳に詰めて寝るようにとのことです」

手渡されるスポンジを丸めたみたいな物を試しに耳に詰めてみた。するとさっきまでうるさかった騒ぎが掻き消えたのである。外して伝令に御礼を言う。

「ハッハッハッこれはいい。ゆっくり休めそうじゃ。アーロン様にも宜しく頼む」

「はっ。あっもう一つ伝え忘れておりました。『明日は正念場だ。激戦になる。助っ人の派遣もするので、頼んだぞ』とのことです」

「心得た」

「ではこれで」

そう言って、伝令は戻った。

「散々やられた分、返してやらんとな」

「おぅよ」

「任せときな」

「このシュタインもお付き合いしますぞ」

今までも騒いでいるだけで、夜襲を仕掛けてきたことはないので、必要最低限の見張りの兵以外全員に耳栓を渡し眠りにつく。そして正念場の朝を迎える。助っ人として来たクレオ様に驚く。

「クレオ様?貴方様がここの助っ人?」

「はい。トーマス殿の陣形戦術お側で拝見できる機会そうそうないかと思って志願しました」

「安心なされよ。殿に触れようとする馬鹿共は我らオーガの餌食にしてやろうぞ。ガハハ」

「それにどうやらここ以外の戦場は昨日決着が付きました。耐え抜いたそうですよ。傭兵団、冒険者、ヴァンパイアハンター全て完全撤退。残っているのは精鋭の十字軍と新兵器部隊です」

「なんと、だがそんな情報入って来ておりませぬが」

「向こうが新兵器に関して情報統制を行なっていたのと同様にこっちも情報統制をしました。おそらく相手にもこの情報は流れていませんから。今日迎え討ち撃滅すればリグレスト聖教国は暫く立ち直れないかと」

「皆の者、聞いたか?我らの勝利は近いぞ」

「オオオオオオーーーーーーーー」

士気が極限まで跳ね上がる。

そして始まる最終局面。

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