第23話 互いの信ずるもののために

【グィネヴィア軍視点】


アーサーのことだ、兵士の削減は考えていたけれどまさか半数にされるとは、だがこの兵数で、エイコーンフォレストを抜け魔頂村を襲い、砦から出てきたクレオを討ち取れば良いだけのこと。


そうすれば私はやっとアーサーの元を離れて愛するランスロット様の妻になれる。


遠征の前夜、ランスロット様から呼び出しを受けた私は、そこでクーデターの話を聞いた。


モルドレッド第2殿下が王になれば、私はアーサーと婚約破棄ができランスロット様と婚約できるそうだ。


私の役目はあくまでアーサーをこの戦場に引き付けモルドレッド第2殿下のクーデターの成功のお膳立てをすること。


だがもう一つモルドレッド第2殿下から密命を受けていた。


魔頂村のクレオの暗殺だ。


だが、同じ女騎士として憧れたエレインのあんな姿を見て、考えが変わった。


アーサーはあの演技に気づかなかったみたいだけどアレは完全にもっとやって〜の類だ。


エレインのハートを射止めたクレオとやらに別の意味で一目会いたくなってしまったのだ。


たとえこれが私を誘き出すための罠だったとしても。


「グィネヴィア様、間も無くエイコーンフォレストに入ります」


「そのまま直進して、抜けた先の魔頂村を襲撃よ」


考えが甘かった。


抜けた先に罠があると思っていた。


だが逆に我々がコボルトどもに襲撃されたのだ。


「コボルトの伏兵です。グワァー」

「動きが早すぎる。グワァー」

「えぇい狼狽えるな。相手をよく見、あびゃ」

「投擲物も飛んでくるぞ。気をつけろ。うっ」


動きの速いコボルトに翻弄され馬に乗っている我々の方が混乱してどんどん討ち取られていく。


「あの額にバンダナを巻いているコボルトを狙いなさい。あれがきっと敵の指揮官よ」


私の言葉に反応したコボルトは笑みを浮かべて消えた。


まさかコボルト如きに200も減らされるなんて。


「怪我人の手当て次第、行軍再開」


「魔頂村にどれだけの兵数がいるかわからないのに無茶です」


「無茶でもやるのよ」


「くっ」


野営をして怪我人の手当てをしていると再び襲撃された。


今度はオーガとスライムだ。


オーガが前衛を張りスライムが後衛で魔法を使ってくる。


この襲撃により私の隊は私と20ほどの供回りしか残らなかった。


そしてその20の供回りも事ここに至っては仕方ないと降伏してしまった。


私は相手の懐近くで1人となったのだ。


ここまで魔族同士の連携を完璧に取れるようにするだなんて、クレオとやらは一体何者なの。


そして目の前に私に引導を渡すかのようにエレインが現れた。


【エレイン視点】


クレオ様に頼まれたグィネヴィア殿の捕獲のため私はシュテン殿とメデイア殿とアラン殿と共にエイコーンフォレストに潜伏した。


「まずは動きの俊敏なアラン隊による奇襲にてグィネヴィア殿の兵士を削りましょう。その次にシュテン隊とメデイア隊による連携攻撃にて殲滅。グィネヴィア殿は私に任せてもらえますか?」


「御館様より、エレイン様に従うようにと聞いております。奇襲ならお任せください」


「殿からエレイン様の御身を守るように仰せつかっておる。それに暴れられる機会が貰えるとはかたじけない」


「魔法での援護なら任せて、必ず殲滅してエレイン様とグィネヴィアの一騎打ちのお膳立てをしてみせるわ」


「皆、ありがとう。私もクレオ様のため必ずグィネヴィア殿を捕縛してみせる」


私達はすぐに作戦に取り掛かった。


【アラン隊視点】


「我が隊の役目はグィネヴィア隊の戦力を削ぐことよん。みんな〜大いに暴れちゃっていなさい」


「へへへ、我ら訓練されたコボルトのナイフ捌きと投擲物に恐れ慄かせてやるぜ」


我らの攻撃に全くついてこれないグィネヴィア軍を攻撃しこのまま我らだけで殲滅しようと考えたが私を頭領と見破ったことに笑みを浮かべて引いた。


【シュテン隊、メデイア隊視点】


「200ほど減らしてきたわよんシュテンちゃん」


「ガハハ、ちと減らしすぎだアラン」


「そうよ私たちの見せ場もちゃんと残しといてよね〜」


「ゆるしてねメデイアちゃん。じゃあ私は一足先に御館様の元に戻るわね。あとはよろしくねん」


「うむ任せておれ」


アランからの報告を受け野営に入ったグィネヴィア軍をメディアと共に襲撃する。


「おらおらおら、我が殿に仇名す。愚か者共を討伐しに参ったぞ。ガハハ」


「私の新魔法の鯖にしてあ・げ・る」


「うっ、魔族なのに可愛い。あっ惑わされては、いかんいかん。皆敵襲だ〜」


「強い、まさか兵長のおれを含めて20しか残らないなんて、待ってくれもう抗うつもりはない降伏する」


「兵長何言ってんだ?まだ戦える」


「いや事ここに至っては無駄な抵抗なぞせんほうが良い」


「あら〜私素直な人って大好きよ」


「うっそんな露出高めで近づいてくるな可愛い。って違う違う破廉恥め」


「素直になってくれたら御褒美あげるのになぁ。チラ」


「すごく可愛いです。すみません嘘つきました」


「素直な良い子ね。では皆の降伏を受け入れます」


こうして残った20人も降伏し、エレイン様がグィネヴィア殿の前に現れた。


【エレイン視点】


「グィネヴィア殿、こんな形での再会本当に申し訳ないと思いますが、これも我が信ずるもののためここで捕まってもらいます」


「やっぱり、アレは演技ではなく本当でしたのね。私が憧れた女騎士エレインをここまで籠絡したのがよりにもよって魔族とはね。でも私も信ずるもののため捕まるわけにはいかないの。捕まるぐらいならここで潔く散るわ」


「どうあっても投降はしないと」


「えぇ」


「そうですか残念です。なら騎士としてお互いの信ずるもののため最後まで戦いましょう。我が名はエレイン・ヴラッド、愛しいクレオ様のためここで貴様を打ち倒す。いざ参る」


「グィネヴィア・ブライド、その勝負受けて立ちます。たとえここで打ち倒されようとも愛するランスロット様の宿願のためこの身を捧げましょう」


2号3号と打ち合う。


「流石エレインね」


「グィネヴィアこそ」


カキーン、カキーン、さらに打ち合う。


「私たち別の形で会えてたら親友になれたわね」


「今からでも遅くはないグィネヴィア、剣を納め投降して、悪いようにはしないから」


「それは無理だわ。ごめんなさい」


「この頑固者が〜」


ザシュッと音がしてグィネヴィアは倒れる。


「やっぱり敵わなかったわね。ランスロット様の宿願見届けることができずお許しください。願わくば次の世で貴方のそばにいられますよう」


そう言いグィネヴィアは事切れたかに思えた。


次の瞬間、禍々しいオーラがグィネヴィアを包み込み、身体が青白くなり物言わずただ目の前の者を襲うだけの獣と化したのだ。


「なんだ、この禍々しさはとても人ではない。全員捕虜達を連れて撤退せよ」


シュテンとメデイアは残った。


「お前達も早く」


「水臭いことを言うな。それにまさか魔素を注入されておったとはな」


「魔素?」


「えぇ死んだ人間をただ襲うだけの魔獣にしてしまう薬よ。解除方法はないけどクレオ様ならもしかしたら治せるかもしれないわ」


「では捕まえるしかあるまい」


「2人とも苦労をかける」


「気にするな。あの者は精一杯戦い抜いたのだ。それをこのような形で水を刺すとは許せん」


「えぇ、私も同感よ」


シュテン殿が攻撃を受け止め、メデイア殿が魔法で生み出した触手によりグィネヴィアを絡め取っていく。


暫くすると触手により絞め落とされたグィネヴィアは気絶した。


「ふぅーなんとかなったな」


「えぇ、今のうちに拘束しちゃいましょう」


「えぇそうね」


縄という縄でこれでもかと括り付け動けなくした。


こうしてグィネヴィア隊の壊滅もなんとか成し遂げた私とメデイアはクレオ様の元に戻ることにした。


グィネヴィアはこのままシュテン殿が魔頂村近くの高台拠点に運びそこにある捕虜収容のための地下牢にて繋いで、そのまま守備につくそうだ。

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