第44話 誰もいない

13回忌のあの日から

私達夫婦に笑顔はない。

いや、私に生きる気力がなかった。

朝起きて仕事に行って帰ってご飯食べて寝る。

ふいに涙があふれている事がよくある。


家に帰りたくない。


きっとこんな日が

ダンナにもあったんだろうな。


そして、こんな日に

会ってたんだろうな。


でも私には行くところがない。

『グチを聞いてもらいたい。』

電話をかける友人の名前が

思い浮かばなかった。

きっとグチではない。

仮に100人に話しても結果は同じだろう。

【離婚しなよ】

全員言うだろう。

わかっている。

今日は月末だ。

ダンナの請求書を作る日だ。


帰らないといけない

帰りたくない。


家を通り過ぎていた。

車の中で大声を出して泣いた。

クラクションが鳴った。

車線をはみ出していたのだ。

危なかった。

近くの公園に車を停めた。


誰もいない。

思いっきり泣いた。

ダンナへの文句も言った。

叫んだかも知れない。

よく覚えていない。


もうすぐ20時だ。

いつもより帰りが遅い。

ダンナは電話をしてきてくれない。

心配ではないのか。

十分自覚した。

帰ろう。


泣きながら帰った。


はなちゃんへ

長い間、この日を待っていた?

私はもう心が折れたみたい。








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