14 考察
汚染区画が広がれば、やがて世界は滅びてしまうかもしれない。
最初にその可能性が語られたのはいつだったろうか? 不思議と『白』に対する一般人の恐怖は少ない。もちろん際物だと思われていたが、世を席巻するような派手な現象とは認識されていなかったのだ。
何故だろう?
『白』による環境汚染がすぐ止まったことにもよるだろうか?
最初の『白』発生から、それはジワジワと広がりはしたものの、それでも半径五〇〇メートルくらいの範囲で衰える。どこの国でも同様だ。小さくなったり、消えたりすることはなかったが、周囲の環境とバランスをとったようにも思える。
安定化?
でも事実はどうなのだろうか?
『白』が生物だとしたら採り出せる食料が一定になったのかもしれない。食べているのは区画内の空間要素か、それとも時間要素か? あるいは時空自体を書き換えるのが結果として『白』の目的なのか?
何のために? あるいは誰のために?
生物の生存に目的はない。それは偶然が生み出した区画と環境とのバランスだ。その偶然は計算の仕方によって奇跡となる。だから創造主を想像したくなる気持ちはわかる。けれども、おそらくそんなものはいないだろう。
『白』が自然現象かどうかはわからない。時空に取り付いた黴かもしれない。コンパクト化された空間または時間を喰っているのかもしれない。
『白』とは直接関わることができないので――だから抽象だとか、純粋な白だとか、抽象の直接の具象化だとか言われるのだろうが――何をどう調べれば良いかもわからない。完全に安全といえないことはわかるが、究極的に危険かどうかも不明だ。
『白』を思って死んでいく者たちが時折現れるのも、そう思えば不思議な現象ではないのかもしれない。
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