第10話 孫と一緒にダンジョン②
やはり支給品が良かったのだろう。
真っ暗闇でありながらも順調にレベルが上がっていく。
ゲーム的な要素の手助けもあり、ほぼ一本道が分かれ道になっても特にトラブルは起きなかった。
「では私達は右側に行きます」
「そうですか、そちらとご一緒すると多めに取り分を持ってかれそうなので僕達はこっちに向かわせてもらいます」
「うん、じゃあ」
道中居合わせて、近い距離で灯りを提供しあってた一団と別れる。
私、と言うよりは孫に興味津々なのは明らか。
ただの保護者である私が付き添っていたからこその遠慮だろう。
うちの孫は祖父目線抜きにしても可愛い。
ゲーム内でアイドルをしてるのもあり、VR学園でも非公式のファンクラブが設立されているくらいだ。
「うわ、人が減ったら真っ暗になっちゃった!」
「そりゃそうだよ。人手が多ければ多いほど安全性は確保される。けどね、全員が全員私達の活躍を喜んでくれる訳ではないんだ。皆がこのダンジョンから成果を持ち帰りたくての参加だからね」
「うん」
「だから暗いけどここからは二人で頑張ろう。攻略記事もレベルさえ上がれば視界は良くなるって記されてたよね? 後はお爺ちゃんが守るから。前は頼むよ?」
「分かった!」
孫の元気な声。不安な気持ちは一緒だと言ってあげれば込み上げるものは一しか消えていた、とその表情を見てわかる。
欽治さんよりやっぱり身内。ハッキリわかると言うものだ。
「赤いスライム! と、青いのが数匹?」
分かれ道に出会したのは複数の色違い。
元気に指差し確認しながら、どう攻めようか思考内でシミュレーションしている。第三世代の強みである試行演算だ。
同じ事を第一世代である私達はあまり得意じゃない。
赤は炎のブレスを吐き、青は転がってぶつかってくる。
情報はあらかじめ取り揃えてるが、未だ攻撃手段が揃わぬ手の内。
こちらのレベルは4(私は12)。
「色違いは初めてだね。初めは距離を取るかい?」
「情報はもう出てるから、多分大丈夫だと思う」
「それは心強いね」
美咲はまず初めにブルーゼリーをレッドジェルに向けて蹴っ飛ばした。
炎のブレスの道を塞ぐ壁としたのだ。
当然、こちらに向けて吐き出そうとしたブレスは、弾けたブルーゼリーが壁になって炎症を免れる。
「フッ」
しゃがみ込み、回し蹴り。
赤いスライムのブレスが真横から真上に吹き上げられた。
上手い。
「フィニッシュ!」
それぞれ属性の異なる二つのナイフで、トドメを刺した。
一つは無属性のナイフ。しかしもう一つはブルーゼリーのコアで付与した水の属性だ。
無属性の時と違い、水属性のナイフでの怯み具合は明らかに強い。
明滅するスライムのライトが俄かに強く光ったからだ。
「お見事」
パチパチと拍手を送る。
「お爺ちゃんが後ろにいてくれたからだよ」
特別なことはしてないと慢心せずに受け止める。
こういうとこ、うちの孫はしっかりしてる。
普通ならイキりがちになるんだ。欽治さんみたいに。
「いやいや、私がいたくらいでそこまで何か変わる訳ではないよ?」
「じゃあ、そう言うことにしておく。次はお爺ちゃんの番だよ?」
「よーし、美咲にいいところを見せちゃうぞ!」
「ふふ、期待してる」
基本的に孫が先攻すれば、後攻は私。
だからと言って強敵のレッドジェルは討伐済み。
残りは最弱のブルーゼリーなので、いつも通りの攻略だ。
私の攻撃手段はパタークラブ。
転がして、ぶつける。
ちょうど良い位置に三つ。
ビリヤードのようにぶつけてやると、釣られて弾かれた。
ただ、面白いのは3回目に弾いたスライムが破裂したこと。
まさか今ので倒してしまった?
レベルアップが楽しみになった。
まだ当分先だと思うけど。
「お爺ちゃんこそお見事。一気に倒しちゃった!」
「偶然だよ。視界の方は開けたかい?」
「まだ、ダンジョンの全体像は見えないよ。お爺ちゃんは?」
「そうだねぇ、美咲の存在はハッキリわかる」
「あたしも、お爺ちゃんはちゃんとそこにいるって見えてるよ」
「それは良かった」
分かれ道の奥はまた長い長い一本道。
そう言えば、途中で休憩場があると言ってたけど全然見当たらないよね?
辺りはずっと暗いまま。
「お爺ちゃん、敵!」
「うん、見えてるよ」
いつものスライムとは毛色の違う、妙にゴツゴツした格好の明滅するボール状の存在がそこにあった。
色はブルーとグリーン。
スライムより随分とツヤがある。
ゴト、ゴト。
動きも何処かぎこちない。
まるで器の中に入ってるかのようだ。
「美咲、ステータス抜ける?」
「見えないよ!」
「もしかしたら、強いやつかも?」
ヒュパッ──フォン!
こちらが様子を見ていると、突如鎌首をもたげる様に持ち上がり、硬い部分をこちらへと投げつけてくる。
重そうな見た目と違って意外と素早い。
そしてごつごつとした先端が私達を狙う。
「受けたらまずそう!」
「硬いのなら任せて!」
「うん!」
美咲が横に逸れ、私は着弾点に向けてパタークラブを合わせて振った。
──ガキン!
手が痺れるほどの重み。
しかし手を離す訳にはいかない。
パタークラブを振り切れば、向かってきた瓶入りスライムはお仲間とゴッツンコしてその中身を地面ににこぼしていた。
そしてこぼした部分はジュワジュワと溶け出していく。
つまりそこに答えがあるのだ。
「美咲。この相手、中身が地面に触れたらアウトっぽい」
「割っちゃう? 割っちゃう?」
「割っちゃおっか?」
最初は見慣れない造形に警戒した。
が、弱点が分かれば臆することはない。
孫と二人でいい顔して、瓶を高く持ち上げるなり地面に叩きつけた。
やはりスライムより強敵だったのか、経験値が溜まって一気にレベルが上がる。
取り敢えずの到達点、レベル8まで一気に駆け上がってしまった。
私の方もレベルが13となり、新しいスキルの獲得があった。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
ユウジロウ・ササイ
レベル13
称号:スライムキラー、ジャイアントキリング
スキルポイント:★★★★★★
☆
ジョブ:セットされていません
┣ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー┫
<アイテム・情報>
◯金塊【スキルグレード+1】
◯金塊・大【スキルグレード+3】
◯光苔【武器グレード+1】
◯スライムコア【属性付与・食欲解消+15%】
◯スライムドリンク【属性耐性付与・喉の渇き解消+15%】
赤【火/林檎味】青【水/檸檬味】
緑【木/抹茶味】黒【闇/珈琲味】
金【光/バナナ味】
┣ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー┫
<武器>
【火】パタークラブ【斬・打】Ⅱ
┣ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー┫
<スキル>
コアクラッシュ【斬・壊】Ⅲ
草刈り【斬】範囲Ⅰ
クリーンヒット【打・貫】Ⅰ
食いしばり【減】Ⅰ
┣ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー┫
<獲得可能スキル>
☆挑発Ⅰ【怒】
☆☆☆煽り芸Ⅰ【怒】範囲
☆☆☆☆☆ドヤ顔Ⅰ【憤怒】
★消火Ⅰ【殴・貫】火特効
★伐採Ⅰ【斬・貫】木特効
★水切Ⅰ【斬・貫】水特効
★剣閃Ⅰ【斬・貫】闇特効
★漆黒Ⅰ【斬・貫】光特効
★★チェインクリティカルⅠ【打・貫】連撃
<獲得可能ジョブ>
条件を満たしてません
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「スライムドリンク? これ飲めるの?」
「わからないから地上に持ち帰ろうか。必要かどうかは国のお偉いさんが決めてくれるよ」
「そうだね、そのまま飲むのはちょっと怖いもん」
「ははは、そうだね」
普通はそう思うか。欽治さんと一緒だったら多分、私は飲んでたと思う
「念の為、特徴をメモしておこう。新種だったら報酬がもらえるって話だよ?」
「情報がお金になるの?」
「なるよ。AWOでもそうだったでしょ?」
「そうだね、じゃああたしも描く!」
「ようし、どっちが上手く描けるか勝負だ」
「負けないよ!」
私は孫にメモ帳とペンを渡しながら、どちらがうまく描けるか競走した。
一緒に何かをするだけで楽しいものだ。
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