ピロリ戦記

芦原瑞祥

第1話 前夜

 ピロリって、凶悪なくせになんでかわいい名前してるんでしょうね。


 10代後半から胃痛に悩まされていた私は、会社の人間ドックオプションでピロリ菌検査を受けた。親がピロリ持ち(しかも胃癌)なので、まあ9割方陽性だろうなと思っていたら、案の定結果は陽性。

 ピロリ除菌経験者の母によると、「一週間薬飲むだけで副作用もなかった」らしいが、ネットで調べてみると下痢や発疹などの副作用がちょいちょいある。どうしようかと迷ったものの、やはり長年の胃薬とセット生活とサヨナラしたいので、意を決して病院へ。


 しかしドクターからの「抗生物質にまける性質だと、副作用でるかも」の言葉にちょっと決心が鈍る。

 下痢くらいなら耐えられる(または会社でなんとかごまかせる)けれど、若い頃に抗生物質の副作用で婦人系の症状が出たことがあり、あの診察台や器具入れられることがやっぱり嫌なのだ。

 とはいえ現在微妙齢(中年ともいう)となった私は「婦人科受診くらいなんぼのもんじゃい!」とピロリ除菌の方を選択した。


 飲むぜ! 俺は除菌剤を飲むぜ! ピロリと死闘を繰り広げるぜ!

 ガッチガチに決意を固め、果たし状を突きつけるように薬局へ向かったところ。


「この薬はうちにはありませんね」


 数件まわってどこにも薬はなく、結局お取り寄せとなったため、土日にできたのは「ピロリよ、命拾いしたな。首を洗って待ってろよ!」とうそぶくことくらいであった。


 そして今夜、取り寄せてもらった薬を引き取りに行ってきた。


 救世主の名は「ラベキュア」。400と800があるらしいが、800の方を処方された。こっちの方が服用量が多い(副作用がきつい)ので、非喫煙者は400を推奨されるらしい。……私、煙草吸わないのに、なんでキツイ方!?


 一日に一シートを、朝夕二回服用。一回につき、パリエット錠1,クラリス錠2、サワシリン錠3の、計6錠を飲むことになる。

 薬局で「副作用って結構出るんですかね?」と聞いたところ、やはり出やすい、と。下痢がひどくて「これ一週間飲まなきゃいけないの?」と震え声で訊ねてきた人もいるとか。


 ……なんのそれしき! ピロリ死すべし! 開戦のゴングは明朝!

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