第8話
僕の代わりにリザードマンの頭を消し飛ばした一匹の猫、タマ。
この子は僕が路地裏で雨にうたれ、震えていたところを見つけた一匹の野良猫である。
このまま何も見なかったことにするなどとてもじゃないが出来なかった僕がそのまま連れ帰り、己の飼い猫としたタマが何故かダンジョンに立っていた。
「え?え?え?」
あまりにも常識離れした光景に僕は困惑する。
「え?なんでタマがダンジョンにいるの?え?あのリザードマンは?え?タマ?ん?え?どういうこと?」
「にゃー」
呑気に鳴き声を上げ、僕の足に己の頭を必死に擦りつけているタマを前に僕はただ困惑していた。
だからこそ、僕は自分へと近づいてきていたリザードマンの気配をスキルで察知しておきながらそっちに意識を裂けていなかった。
「ガァ!!!」
「……ッ!?」
いつの間にか僕の方へと迫ってきていた数匹のリザードマンの気合の声と攻撃を前に僕は驚愕し、後ろの方へと転移することでなんとかギリギリのところで難を逃れる。
「あっ、待って!?タマぁッ!!!」
転移を使って後方へと反射的に下がった後。
自分の足元にタマがいたことを思い出して動揺の声を上げる。
「ニャー」
タマは己一匹ででリザードマン数匹に囲まれている……これは不味いッ!!!
「ニャー」
僕が慌てて助けようと転移を発動しようとした瞬間。
「……ガァ?」
リザードマンの頭が消し飛ぶ。
「ニャー」
タマが跳躍して2mほどの高さに上がり、前足で猫パンチを繰り出せばリザードマンの頭が消える。
一匹……また一匹と頭を失ったリザードマンが地面へと倒れ伏し、ついにはタマ一匹でリザードマンを軽々しく殲滅してしまう。
中級の冒険者パーティーが一匹でも苦戦するリザードマンを、だ。
「んんんんんん?????」
なんで猫が2mも跳躍し……あまつさえただの猫パンチ一発でリザードマンの頭が粉みじんになっているんだ?
猫のパンチって障子を壊すどころかコンクリートの壁を破壊するほどの威力を秘めていたっけ?あれ……?
というか、リザードマンの頭を消し飛ばすとかコンクリート壁を破壊するよりも難しいよね?
「いやいや!驚いている場合じゃなくない!?ここで配信は終わり!とりあえず僕の飼い猫であるタマを連れて地上に帰らないと!……帰る必要があるのかはわからないけど!」
タマの方へと転移し、タマを抱き上げた僕は口を開く。
「ニャーッ!ニャーッ!ニャーッ!」
嬉しそうに僕の胸へと頭を擦りつけてくるタマの頭を撫でながら僕はスマホを操作して配信を終わらせた。
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