始まりはささやかなもの ―アガパンサス―

 すらっとした茎から涼し気な薄紫の花を咲かすアガパンサス。そんな花々の脇を半袖の人々が通り過ぎてゆく。


 ふと、この花の前で女性が足を止める。


「これ、キレイな花だね」

「うん、可愛らしくて綺麗だ」


 一緒に居る男性も足を止め、少し花を眺めてからまた歩きだしてて街の雑踏に消えてゆく。


 ふたりの消えた方向に夏風が吹き抜ける。頭も体もやられてしまいそうな暑さの風はほんのりとを乗せて、花と人の心を揺らしてゆく。

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