嫌われ者になる為に~モテ体質なので学校一人気のない部活を始めることにしました~
なみかわ
第1話 プロローグ~回想
俺は自分ではそう思っていなかったのだが、モテる体質らしい。
たんに気に入ったやつでも、そうでないやつでも、男でも女でも、俺はあんまり気にしないで話せるのだが、意外とみんなそうでないらしく、結果女子には「秋沢君って話がしやすくて気さくで」なぜか「かっこいい」となったらしい。
たしかに俺の姉貴が美容師やスタイリストをめざしていたことがあって、頭を刈られたり服を選ばれたりしたことがあった。親や姉貴がクラブとかサークルとかの仲間を家に連れてきていて、それで初対面の人でもあんまり引っ込まずに話せるようになったからだろう、と予想する。
俺は中学時代、剣道部に所属していた。
いつからか、同じ学年の女子と、クラブの後に一緒に帰るようになった。たんに時間が一緒だっただけだし、冬だとまあ暗いから途中まで送ってやるというのもあったけど、それ以外に何もそいつに気をかけることなんてなかった。
しかし、俺の知らない間に、その噂がどんどんでかくなっていった。
あの日だけはたぶん、絶対この先も忘れないだろう。
妙にじめっとした天気で、ほこり臭い廊下をぬけて、俺は時間になっても剣道場に現れないそいつを探して、教室へと向かっていた。
やけに甲高そうな声が、締め切られた教室からもれていて、俺は窓側のドアの前で立ち止まる。
「いったいどういうことなの?!」
「あたしたちの竜くんをひとりじめしないって、掟じゃないの?!」
……い?
ひとつも認めていないのに「秋沢竜ファンクラブ」なるものもできていたらしい。さらに、「○○さんが、ファンクラブの掟を破って、ぬけがけしている」となったらしい。
「許せない!!」
「許せない!!」
群をなした女子はすんごく怖いと思う。やがてわあきゃあした声がドスン、バタンとほこりとともにもれてきた!!
「そういえばあんたも、この前手紙渡したんじゃない?!」
なんて、他のやつへの因縁付けまではじまっている。いや俺年賀状はもらったことあるけど? あ、あと中学ではスマホ禁止で、SNSも俺は何もしてない。
俺がそのときドアを開けて、
「いーかげんにしろ!!!!」
と叫んでいなかったら、たぶん数人はもっとけがをしていたんじゃないだろうか。
こんなことが起こるなら、もうこりごりだ。
そう思って、俺はそれ以来自分から女子に話しかけることはやめたし、高校もあんまり皆が知らないような私立を探したし、そしてここでは--
そしてこれからは、絶対に嫌われておこうと決めたのだ。
誰にも関わらなければ、あんな事件は、誰かが俺のことを原因にしていがみあったりして、つらい顔をするとかなんて……もう起こらないだろうから。
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