第5話 思いもよらず
「アレクさんお帰り〜!!」
アレクさん率いるパーティ、『
規模で言えば、僕が登録を済ませたギルドよりは少し小さめといった具合。
「おう、戻ったぜ」
アレクさんは、僕の手をむんずと掴むと前へと引っ張った。
「実はよぉ、レッドキャップと遭遇しちまってな、コイツが俺たちに代わって倒してくれたんだよ」
「ちょっ!?」
予測してた展開と違うんですけど!?
お金の受け取りとかあるから「ついてこい」と言われて来たのだが、てっきりこっちの事情を慮って僕が討伐したことは伏せてくれると思ってたのに……。
「いいだろう?折角の大手柄だ、隠す方が勿体ないってもんよ」
そう言ってアレクさんは僕の頭をわしわしと撫でた。
そんなアレクさんの言葉に、ギルド内にいたほかの冒険者たちの視線が集まった。
「おいおい本当かよ」
「流石に何かの間違いなんじゃないのか?」
懐疑的な視線を向けてくる冒険者たちがその大半。
でもギルドのカウンターでお酒を飲んでいた冒険者の一言で流れが変わった。
「仮にもCランクの冒険者パーティの証言だ、信じれないのは妬みか?嫉みか?」
余りにも直接的な言葉に、懐疑的だった冒険者たちはたじろいだ。
何しろ彼らに返す言葉はなかったのだ。
なぜなら―――――
「あの人、誰なんですか?」
ただならぬ空気を放つ男のことが気になってアレクさんにそう尋ねるとその答えは、男が発した。
「少年には自己紹介をしていなかったな。俺はここのギルドマスターとS級冒険者とを兼任するオーギュスタだ」
高位の冒険者だったことに思わず僕は身構えた。
何しろ、自分が用いるのは闇属性の魔法だ。
それが露呈すれば、きっとタダじゃ済まない。
折角得た自由を命と共に手放しかねない危機なのだ。
「そんなに固くならなくていい。普通に接してくれ」
手に出来た無数のタコが、鋭い目が、立ち振る舞いがその男の全てを物語っている。
この男には気をつけろ、本能がそう警鐘を鳴らしている気さえする。
そんな考えを見透かしたかのようにオーギュスタさんは言った。
「少年がどんな魔法を使おうと構わない。大事なのは心根だ。お前はアレクたちを救ったんだろう?そんな人間を罰したりするわけが無いだろう?」
どこまでこの男に見透かされているのか、或いは言葉の全てがブラフなのか……とにかく分からない。
だが一つ確かなことがあるとすればそれは、気を抜けないということだった。
「あ、ありがとうございます」
そう返すのがやっとで、格の違いというものを如実に実感させられる。
そんな僕を射抜くような視線で見つめたオーギュスタさんはこう切り出した。
「ところで少年、せっかくだからうちのギルドに所属しないか?」
それは余りにも突拍子もないことで、
「えっ……?」
思わず間の抜けた声が出た。
「お、そいつはいいなぁッ!!」
「これも何かの縁だし、ウチのパーティに入って欲しいなぁ」
主にアレクさんたちを中心に外堀を埋められるのはどうやら時間の問題らしかった。
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