第29話 お疲れさん会

「なんか、今回もバズったみたいっすよ?」


「へぇ。凄いね。ただ戦ってるのアップしてるだけなのに、そんなにバズったりするんだ」


 まぁ、たしかに敵が急に強くなったりとかおかしな所はあったからなぁ。だから、バズったりするのかな?


「まぁ、俺たちにしてみりゃ楽勝だったよな? それよりさ、なんかお疲れさん会みたいなのやらねぇ? 今回のボス結構強かったじゃん?」


 そう提案したのは賢人。


「はははっ。あれ? 楽勝だったんでしょ?」


 僕があえて茶化すように言う。

 すると、頭をポリポリと掻きながら照れくさそうに笑った。

 ただ、やりたかったんだよね?


「なぁにぃー? 賢人がやりたかったんでしょー?」


 肩に奈々がしなだれ掛かる。

 すると、賢人の顔が忽ち不機嫌になった。


「うるせえ! お前は来なくてもいいぞ?」


「なんでよぉ!? 行くわよ! 私を除け者にしていいと思ってるのぉ!? ビリビリの水かけるわよ!?」


 二人の喧嘩はいつもの事だけど。

 ここではやらないで欲しいな。


 今はまだダンジョンの奥の部屋で宝箱を物色しながらダンジョンコアを登録しているところだった。そんな時に賢人がいきなりお疲れさん会やりたいって言うからこんな騒ぎになっているんだけど。


「お二人さん、まず、ここ出よ? ね?」


 僕はにこやかに言ったんだけど。

 二人の反応は明らかに挙動不審になっている。


「お、おう。すまん」


「ご、ごめん! 行こ!」


 そそくさと外への魔法陣に乗る。

 んー。なんか反応があれだなぁ。

 僕が恐かった? そんなまさかなぁ。


「恐ろしや恐ろしや」


 猛もそそくさと魔法陣にのる。


 何でだろ?

 笑ったのに。


 首を傾げながら後をおった。




「で、どこでお疲れさん会する?」


「そんなにしたいんだ?」


「良いだろ? ほら、何が食いたい?」


 奈々に話を振ると「うーん」と悩み出す。

 僕もどうしようかなぁ。

 ラーメン好きだけど、お疲れさん会って感じじゃないしなぁ。


「私は中華とか?」


「あっ。いいね! 中華。僕、麻婆豆腐食べたいかも」


 僕がそう言うとみんな頷いた。


「俺も餃子食いてぇわ!」


「自分も中華好きなんすよねぇ。自分は坦々麺っす!」


 賢人と猛も賛同する。


「奈々は何が好きなの?」


「私は、小籠包!」


「はははっ! 美味しいよね!」


 奈々の顔がパァッと明るくなる。

 いい顔だね。

 あんまり母親のことは心配ないかな?


 ま、それも含めて少し気分転換した方がいいよね。賢人に感謝しないとね。


「じゃあ、『陳』行こうぜ」


「いいね! 行こう」


 この辺りの中華屋さんで『陳』は結構有名なんだ。

 リーズナブルでお酒も飲める。

 幅広い年代に人気があるお店である。


 店に着くとたまたま四人分の席が空いていた。

 案内されると、それぞれで好きな物を頼む。


「今回はさ、上手く動けたよな?」


「うん。そうだね。みんな、動き良かったよね?」


「そうっすね。修行の成果が出た感じで」


「私、杖術使えてないんだけど……」


 皆が賛同する中、奈々が一人で不満そうにしている。


「そりゃしょうがねぇよ。俺と猛みたいに動ける前衛がいるんだから、後衛が直接殴ったりする必要がねぇだろ? それは、このパーティーが上手く回ってるって事じゃねぇか?」


 賢人が奈々を諭すようにいう。

 言い合いにならなかったからよかった。


「むー。確かにそうねぇ。後衛としては活躍できてるし……」


「だろぉ? なら良いじゃねぇか?」


「そんなこと言ったら、自分もほぼたってるだけっすよ?」


 そこに猛が割り込んできた。

 猛も何やら言いたいようだ。


「自分なんて、収斗さんがいなきゃ役に立たないただ突っ立ってるだけなんすから!」


「いやいや、動いてたよね? 横に」


「あれは……何とか、あれだけは出来るようになって……」


「じゃあ、いいんじゃない?」


 僕も猛を諭すように言う。

 何だかんだでみんな悩み事はあるんだね。


「収斗のスキルとナイフさばきは凄いよなぁ。なんか更に強くなったよな? ただでさえ反則的な能力なのに」


「そうかな?」


「いやいや、だってよ、あれ見たか? ナイフ刺さった魔物を飲み込んだと思ったらナイフだけポンって出てきてよぉ」


 三人ともウンウンと頷いている。

 そんなに言うほどかな?


「なんか、スキルが学習してるっつうの? そんな感じだよな」


「それはそうかも。なんか指示してる間にスキルも考えてくれるようになったって言うか、考えを読んで動いてくれるっていうか」


「うーん。そんなスキルがあるんだな?」


 賢人が不思議そうに言う。


「自分のスキルもそんな考えてくれるみたいに思ったことないっすねぇ。発動したら動けなくなるから、このまま動けたら良いのにって思うけど、動けないっすもん!」


「それはさあ、なんか、念が足りないだけじゃない? 違うかな?」


「念っすか!? それでどうにかなるんすか!?」


「うん。僕の認識では」


 凄く驚いている。

 僕はそうやってスキルと一緒に成長してきたんだけど。


「それは初耳っす! 今度やってみます!」


「うん。試してみる価値はあると思うよ?」


「はいっす!」


 凄い意気込んでいる猛。

 そんなに力入ってて大丈夫かなぁ?


「あぁー。でも、俺はなんか分かるかも。ひたすらスキルと向き合ってたら、剣技を認めさせるっつうか。そういうのが出来るようになってきたんだよな」


 賢人がそう言うと猛はさらに驚いた。


「認めさせるっすか!? なんかカッコイイっす!」


 興奮した猛は質問が止まらず、食べ物を口から出しながら喋っている。


「猛、汚いわよぉ」


 奈々が苦言を呈している。

 なんか。

 やっぱりこのパーティー楽しいな。


「なぁにぃ? 収斗が変な笑み浮かべてる」


 奈々がそう言うと賢人と猛が怪訝な顔をしてみてくる。


「きもちわりぃぞ?」


「なんっすかぁ?」


「気持ち悪いは酷くない?」


「「「「ハッハッハッハッ!」」」」


 あぁ。

 楽しいな。

 昔じゃ考えられないや。


 疲れも吹き飛ぶ。

 このパーティで良かった。

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