正しい復讐
工藤ひより
爪が甘い弟
「お前は相変わらず爪が甘いな」
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双子の弟のテストの答案用紙を見て、父はそう言った。
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弟は中学校の数学のテストで1問ケアレスミスをして100点を逃したのだ。
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弟は昔からおっちょこちょいな性格であり、ドジも多い。
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この前は、家族旅行で泊まるホテルを弟が予約したのだが日程を間違えていた。
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あと1歩だったのにというところで上手くいかない事が多い。
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そういう時にいつも僕に助けを求めてくる弟のことが可愛かった。
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父親は優秀な医者であり、頭も良く何でも完璧にこなす。
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そんな優秀な父親から弟は爪が甘いと口癖のように言われていた。
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僕はと言うと、父親ほどではないがそれなりに勉強もできる方だ。
我ながら父親に似たと思っている。
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母親が父親とは真逆の性格でかなりおっとりしているので、きっと弟は母親に似たのだろう。
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厳しいがなんだかんだ優しい父親と、おっとりした母親と、爪が甘い弟の4人家族で僕は楽しい毎日を過ごしていた。
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だが、ある日を境に平和な日常は終わりを迎えた。
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それは僕たちが中学2年生の12月だった。
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夜中の2時
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「2人とも起きなさい!」
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いつものんびりしている母親が珍しく大きな声で僕たち兄弟を叩き起こした。
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寝ぼけながら目を開けると、部屋中が炎に包まれていた。
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火事だ
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家が燃えている。
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僕たち3人は慌てて逃げようとしたが火はすぐそばまで迫っていてもう逃げ道がない。
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煙を吸い、体が動かなくなってきた。
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だんだんと意識も遠のいた。
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死んでしまう。
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そう思った時
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「大丈夫ですか!助けに来ました!」
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と叫ぶ声が聞こえた。
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朦朧とする意識の中、声がした窓の方を向くと消防士のおじさんがいた。
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「もう大丈夫だよ」
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助けが来た、、、
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そう安心したところで、僕の意識は遠のいた。
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あの火事から10年が経った。
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僕は消防士になった。
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