十一話 蜘蛛の巣
突如現れたそれを察知できたのは奇跡だった。
この世界はレベル高すぎだろ。
とにかく今は息を殺してデッドイーターが去るのを待つしかない。
「ウジュルゥゥゥゥ」
デッドイーターがその口腔を開く。
青白い炎が口の中で燻る。
デッドイーターが自身の身体からどす黒い触腕の様なものを事切れたジャンピングラビットへと伸ばす。
そして耳を掴みゆっくりと自身の口へと運ぶ。
ゴリッと音がしてジャンピングラビットがその面影を徐々に無くしてゆく。
そして炎は焼却炉の如くその哀れな魂も無慈悲に燃やし尽くす。
やがて一際大きな炎が上がった後、デッドイーターは闇の中へと消えていった。
辺りは暗くなり、生き物の気配が完全になくなってやっとバエルが動いた。
いや、動けた。
「ぶっはー」
極度の緊張から解放されて特大のため息をつく。
「だからなんなのだ!一体全体、我になんの恨みがあるんだぁぁぁぁ!」
慌てて自分の口を塞ぎ、再度隠密魔法を発動させる。
(何をやっているこの馬鹿が、奴が寄って来るだろうが!
はぁ…獲物も奪われたし、ゴブリンどもの集落に戻るか)
偵察していた丘に戻り、コミコミの実を食べて空腹を紛らわせる。
本来なら手に持っているのは新鮮なウサギ肉だったのにと自然と口が漏れる。
だが、
「コミコミの実も案外悪くないな。柔らかい芋の様だ」
コミコミの実の優しい味を噛みしめていると
集落の広場と思われる場所に子ゴブリンが3人集まっていた。
鑑定をかけると平均して110レベル前半といったところか。
ステータスは平均して2000と職業補正が掛かったところでも3000あるかないか。
例外として戦士風の子ゴブリンは体力と防御力、筋力が4500、他より高いがスキルが一つもない。
他の2体の子ゴブリンがレベル110と幼体のジャンピングラビットと比べるとステータス成長速度は遅い。
やはりどの世界でも亜人種・人間種のステータスの伸びは魔物よりひくいようだな。
全員武器やアイテムを装備しているのを見ると今からでも狩りにいくのか。
大人もついてくるだろうから流石に無理があるな。
半ば諦めかけて他の場所に移ろうとした時、
「あいつら…3人だけで森に行くつもりか?」
大人も気づいている様子もない、我の様な輩を釣るための罠ではない様だな。
たとえ子供とはいえこの世界で情けなど持った方が死ぬ。
それに相手は三体だ。
ここは入念に準備して挑むが吉か。
バエルは森の中へと踏み入る子ゴブリンを冷たく見下ろす。
「いくか」
手に持ったコミコミの実を口に放り投げて踵を返した。
一体の子ゴブリンが丘の方に視線を移したが、そこにはすでに何もいなかった。
子ゴブリンの進行ルートは獣道に沿っているから簡単に予測できた。
《
見ていると思わず涎が垂れるが、ぐっと我慢し茂みの中に隠しておく。
ジャンピングラビットの動きが不自然にならない様、少しだけ練習する。
5分ほど動かしていたが、それなりに自然な動きにすることができた。
「うーむ、まだ足りないな。」
バエルはしばらく考えていたが、
「あのゴブリンども、集落生活の中で生きている獲物も見たことがあるだろう……
だからこのジャンピングラビットも幻影であることがばれてしまうかもしれんな」
そもそも《
「ここは念には念を入れて《
《
その効果はほんの少しだけ相手の思考に影響するのため気付きにくい、なんとも陰湿な魔法だ。
魔力がいつ必要になるかわからないから、ジャンピングラビット(偽)の移動ルートに合わせる様に改良して発動させる。
「さあ、罠の出来上がりだ」
用語説明、
HP=体力 MP=魔力量
STR=物理攻撃力 INT=魔法攻撃力
DEF=防御力 AGI=素早さ
この小説では魔法は《》、スキルは【】を使って表しています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます