財宝の山。それでも僕は…

 「これは…」私は目を丸くする。


「こ、これは…」レオンも中を見回す。


「宝物庫だ!」下級パーティーの皆が歓喜の声を上げる。


「これはすごい!初めて見る!」私も周りを見回す。


「この装備すげえ!俺たちのよりすげえ!」パーティーの皆もおおはしゃぎだ。


「この剣前に買ったのよりなんか強そうですよ。光ってますし。」レオンは嬉しそうに剣を見せつけてくる。


たしかにここにある品物は全て美しい装飾が施されており、どれもすごい装備に思える。売ればかなりの金になるだろう。


金が入ればレオンの家の片隅に立てかけられる必要もない。


「よし、戦利品を山分けしよう!」私は呼びかける。


「イリーナさんノリノリですね。」レオンが苦笑した。




「これもすごい!」


「私の杖より性能がいい。」


「この盾もすごい!」


「錆を落とせばかなり使えそうだ。」向こうで盛り上がっている。




「レオンは何か気に入ったものはある?持って帰れるだけ持って帰ろう。」私は剣や装飾品を眺めている。


「あっ、これなんかいいんじゃない?レオンが持ってるのと同じくらいの大きさだし。こんなところにあるからきっとすごいよ。」私は良さげな剣を渡す。


「いや、僕はこれがいいです。」レオンはそう言っていつもの剣を握りしめる。


「どうして?こっちの方が研げば強そうだけど。」私は尋ねる。


「いえ、僕はこのイリーナさんと一緒に買ったこの剣が気に入ってるんです。」彼の言葉に私の中の乙女ポイントが規定値を超えて倒れそうになる。


「き、気持ちは嬉しいから、まあ、それなら気に入った武器を使いなさい。」私はしどろもどろになる。


私は動揺を隠すために黙々と戦利品を漁り始めた。

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