第34話 山賊団と戦おう
「進むほど状況悪くなてます。セルリカに入れば安全思いますが確証ありせん」
メイコンが口を開いた。
今後の話し合いである。
街道に山賊団が出て荒らし回っている状況をどうするか、というのが議題だ。
私たちは商団であって治安維持部隊ではないので、放置したってかまわないのだが街道が荒れると困ってしまうのだ。
フィルスバートに戻るときだって使う道だしね。
村や集落がいくつも消滅しちゃったら、移動だって難しくなる。
「山賊退治やっちゃいます? メイコン父様」
「不本意ですがやむを得ませんね」
いろいろ先回りしていった私に、苦い顔を向ける。
じつは私たちは、そうそう滅多に襲われない。
武装しているものが五十人以上もいるからだ。ちょっとした軍隊と変わらない戦力なのである。
モンスターとかは頭悪いんで襲ってくるけどね。
人間ってのはやっぱりリスクを見ちゃうから。
「まあ、もし私が千の兵力を持っていたら襲うけどな。商団は襲う価値がある」
怖いことをいってるのはムーランだけど、千人規模の盗賊団っていうのは、逆にありえないのである。
あたりまえだけど、千人を養うには千人分の食料や物資が必要になるし、住居も必要になる。
水や排泄の問題もクリアしないといけない。
ぶっちゃけ千人なんて村レベル。それより人の少ない宿場なんていくらでもある。
そんな数を指揮統率できるような人が頭な集団だったら、山賊なんぞに身を落とさなくても普通に食べていけるだろう。
そっちのほうがずっと安心安全だし、官憲に追われることもないしね。
ところが山賊にそんな脳みそはない。
腹が減ったから食い物を奪う。むかついたから殺す。ムラムラしたから女をさらって犯す。
その程度のメンタリティなのだ。
組織を運営するとか、軍団を経営するとか、そういうことができる人たちではないのである。
まずは可能な限り山賊団の詳しい情報を集める。
生き残ってる人たちからね。
とにかく情報は命なので玉石混淆でかまわない。集められだけ集めて、整合性をとるのはそれからだ。
これって商売の基本でもあるんだよね。
市井に流れている情報って、本当のことばっかりじゃないから。
これが流行ってるよ! なーんて情報も、よくよく調べたらほんとうに狭い界隈での話ってこともよくあるんだ。
あと、願望が含まれてたりするケースも多い。
売れればいいなあ、こういう世の中になったら面白いなあってね。
だから情報は鵜呑みにするんじゃなくて、集められだけ集めてそれを前後矛盾しないように整合させていくの。
なるべく客観的に、自分の願望をはさまないでね。
「敵は三十人くらいって感じかな。けっこう多いね」
「ひとつの拠点を持たず、移動しながら略奪を繰り返している感じだな」
アウィとムーランが地図の上に駒を置きながら相談を交わしている。さすが歴戦の傭兵だけあって、私たち素人には判らない敵の戦略構想が見えているのだろう。
「盗賊ごときが遊撃? 新しい教書がいるわね」
「油断はせぬことだ、アウィ。一頭の獅子に率いられた羊の群れは、一頭の羊に獅子の群れを駆逐するからな」
「つまり指揮官が有能ってことね」
「三十人規模の盗賊を率いて、街道沿いの村々を荒らし回り、未だ捕まっていない。これを有能といわないとしたら、私やアウィも無能のカテゴリだろうな」
皮肉げに肩をすくめるムーランだった。
たしかに、おきてる事象を繋げていくと、ちょっと普通の山賊団とは思えなくなってくる。
うますぎるのだ。行動が。
風のように村を襲撃し、風のように去る。
襲っている時間も長すぎず、整備隊が駆けつけたときにはとっくに逃げ去ってしまっているのだ。
小憎らしいほどに洗練された戦術。
軍隊みたいだ。
「まずは一当たりしてみましょう、主人。手の内が判ります」
「戦闘指揮はムーランに任せてるね。好きしてくれていいね」
鷹揚にメイコンが頷く。
丸投げっぽいことをいってるけど、これは信頼の現れた。
ムーランは傭兵だけど、セルリカ皇国正規軍の将校だった人物だから戦略や戦術の部分は完全に任せちゃって問題ないのである。
むしろ、なんてそんなエリートが傭兵やってんだって話なんだけどね!
病床の父親に変わって従軍したんだってさ、元々は。そしたらなんか軍才があったみたいで、あれよあれよといううちに千騎長(騎兵千人と歩兵五千人を率いる将)まで出世しちゃった。
でも、出る杭は打たれるのたとえ通り、周囲から足を引っ張られまくったらしく、馬鹿馬鹿しくなって退役したんだそうだ。
しがらみだらけの正規軍なんかくそくらえだってね。
二十代前半で将軍になっちゃうのもすごいけど、その地位を簡単に捨てちゃうのもすごいよね。
で、糊口を凌ぐために傭兵になって、最初の仕事でメイコンと出会い、秒で引き抜かれたんだそうだ。
百万の金貨を積んでもほしい思たね、とは、傭兵ギルドにもっのすごい額の契約金を支払って引き抜いた当のメイコンが語ったこと。
ある意味で彼は非常に運が良い。
ムーランほどの人物と出会えたことも、それを引き抜くだけの資金力もあったことも。
普通は、どっちもそう簡単にはいかないからね。
「ならば、襲ってくるように仕向けましょう。おそらく一両日中には釣果があるでしょう」
にやりと笑うムーランだった。
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