第3話 王都アルボー公爵領

「ギィイイッ!」


奇声を発しながら出てきたのは、人型の生き物だった。

そいつは、俺の腰ほどの背丈しかない。

肌は青白く、長い耳をしている。

そして、そいつは俺を見るなり襲いかかってきた。


『我が主よ! そいつはゴブリンです! 素早い動きに惑わされずに攻撃を当ててください! 私の【破壊】のスキルなら、必ず当たるはずです!』


必ず当たる……!

それは心強い。俺は魔剣を振った。

黒い斬撃が飛んでいく。


「グゲェッ!」


命中した。

当たった箇所が消滅し、頭部を失った身体がドサッと倒れる。

う、うぅ……グロいって……。

あと、こんな小さな体の魔物を殺すなんて罪悪感も生じている。

けど俺は、この世界に順応するために勝利を喜ぶことにする。


「やったぞ! グリム!」


『おめでとうございます! 我が主よ!』


俺がガッツポーズをしていると、グリムが話題を切り替える。


『では、次はもう少し強い相手と戦ってみましょう!』


「強いって言ってもな……。もう魔物はいないんじゃないか?」


辺りを見回すが、他に魔物の姿は見えない。


『いいえ、いますよ! あそこにいる奴らです!』


魔剣グリムは、ある方向を指差す。

確かに何かいる。

どんどん近づいてくるぞ。

大きくて強そうな体だな……さっきのゴブリンとは大違いだ。

どれだけ魔物を引き寄せるんだよ、グリム……。


『ゴブリンキングという強力な個体です! どう致しますか?』


「どうするって、戦うしか無いだろう? 早く教えてくれよ」


『承知しました。それでは【破壊】のスキルをお使いください』


「わかった! 【破壊】のスキルよ!」


黒い斬撃が飛ぶ!

なんか、ずっとこの技だな……。


「ギャアアッ!」


魔物を倒した。

すごい強そうなゴブリンだったが、結局グリムの【破壊】のスキルで一撃だったな。


『我が主よ! 前方に大きな岩が見えてきました! あの先を曲がると、すぐに街道へ出ます! そこを真っ直ぐ進めば王都です! あと少しです! 頑張りましょう!』


「そうか! よし、行こう!」


俺は魔剣グリムを片手に、王都を目指して歩いた。

そして、遂に辿り着いた。

王都アルボー公爵領。

ここに来た理由は、1つしかない。

俺は、グリムの仲間の魔剣を探すんだ。

そして二刀流でもっと強くなる。

俺は魔剣グリムと一緒に王都に入った。

王都の中は人で溢れていた。

活気があって、とても賑わっている。


「おお! 見ろよ魔剣グリム! 人がいっぱいだ! すごいな!」


俺は興奮していた。


『はい。我が主よ』


「なあ、あれは何だ?」


俺は露店にある品物に興味を惹かれた。


『はい。我が主よ。あれは、武器屋です』


「ほう。どれくらいの値打ちがあるんだろうな?」


『はい。我が主よ。あそこにある短剣は、金貨一枚でございます』


「高いのかっ!?」


『高いです。王都ですから』


「すげえな!じゃあ、そっちの杖はいくらなんだ?」


『はい。そちらは銀貨七枚でございます』


「これも高いのか?」


『高いです。王都ですから』


「へぇ。ちょっと見ていこうぜ!」


同じセリフを連発したグリムに不信感を抱きつつ、俺は露店を回った。

しかし、魔剣グリムは喋らない。

俺がちょっと冷たい視線を向けたことに気づいたのか?

だって同じセリフだったんだもん。

まあいいか。

魔剣グリムがどんな性格なのか、よくわからないけど、こいつは俺のことを主人として認めてくれたみたいだし、これから仲良くやっていけると思う。

それにしても、ここは人が多いな。

歩いている人は皆、王都に住んでいるのだろうか。


「おっ! 美味そうな串焼きだ!」


俺は露店で売っていた串焼きを買って食べた。


「うまい! これ、すごく美味いな!」


『はい。我が主よ。その肉は、コカトリスの肉です。なかなか手に入らない高級食材です』


「へー。そうか。グリムって、何でも知ってるんだな。本当にすごいよ」


褒めておこう。

関係を修復しておく。


『ありがとうございます。我が主よ』


「おい! お前ら! 邪魔だ! 道を開けろ!」


誰かが叫んだ。


「危ないっ! 逃げろっ!」

「きゃあああっ!」


悲鳴が上がる。

な、なんだなんだ!?

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