元公務員が最強の魔剣を手にして自由奔放に楽しむ異世界生活

ちさと

第1話 はじまり

異世界転移した。

魔剣騎士という職業らしい。

俺はハヤト。

前の世界では真面目な30歳の公務員だったが、この世界では魔剣を奮って好き勝手やっちゃおうかな。

異世界転移するときに案内してくれたのは魔王だった。

まさか魔剣をくれるなんてね。

この魔剣は強いみたいだし。

なんでも魔王の遺物らしい。

死んでしまったんだな、魔王。

まぁ、好き勝手やらせてもらうぜ。

強ければ女の子が寄ってくるかも。

ははは。今までモテなかったからモテたい。

この異世界で……!

とは言っても、目の前には草原と木々が広がっているだけで、異世界という実感はないな。

さっきステータスを開いてみたが、聞き慣れない職業である魔剣騎士だった。

この魔剣を使えるから魔剣騎士か。

俺が魔剣に力を込めると、周囲の空気が変わったぞ。

まるで何かに監視されているような視線を感じるのだ。


『我が主よ』


俺の脳内に直接声が響く。

これは魔剣の声なのか?


「だれ? もしかして……魔剣が喋ってる?」

『我は魔剣グリムリープ。かつて魔王と呼ばれた者の愛権なり。今は貴方様を主としましょう。さあ、その力を解き放ちなさい! 『滅べ』と叫ぶのです』


魔剣に膨大な魔力が漲っている! ……ような気がする。

そして、俺は魔剣を地面に突き立てた。

なんとなく。


「滅べ!」


言われたとおりに叫ぶと、地面が大きく揺れた。

地震かと思ったら違ったようだ。

俺の周囲にある木が枯れていくのだ。

周りの草も茶色く変色して、やがて粉々になった。

枯れた……!? 俺が……やったんだよね!? というか、この魔剣がやったのか!?

俺は驚きながら魔剣を見た。

すると、柄頭に埋め込まれた赤い宝石が光っている。


『素晴らしいです! 我が主よ!』


魔剣は嬉しそうだ。


「今のは……なに?」

『私のエネルギーにより、大地は破壊され、自然は崩壊したのです! これで我らの勝利は確定しました! 魔物はこの辺り一帯の植物を全て枯らされました! もはや栄養が取れなくて絶滅するでしょう! もうこの辺りの敵には襲われません! いやぁ~、お見逸れ致しました! 我が主よ!』


魔剣は饒舌に語り出した。

ただの自然破壊じゃないか……。

いや、俺は真面目に生きないんだった。

気にしないぞ。

自由奔放に生きるよ。


『我が主よ。まずは王都へ参りましょう。ここは危険です』

「さっき敵に襲われないって言ってたじゃないか」

『魔物は遠くからどんどんやってきます。私が魔剣ですから、魔王と勘違いしてしまうのでしょう。しかしご安心ください。申し遅れましたが、私は魔剣グリムリープ。魔王の遺物であり、最強の魔剣でございます。私のスキルは【破壊】です。先ほどは周囲の植物を枯らしましたが、敵を直接破壊することもできます。魔剣から黒い衝撃波のような斬撃を放つことができます。これもまた、触れた物を破壊するのです』


なるほど……。

つまり、こいつはとんでもない武器ということだ。


『それでは参りましょう! 我が主よ!』

「えっと……」

『どうかされました?』

「なんて呼んだらいいかな?」

『なんか恋愛みたいですね! 私には性別がありませんけど! 呼び方はお好きにどうぞ!』


俺は考えた。

魔剣グリムリープだから……グリムとか?


「じゃあ、お前の名前は……グリムだ」

『グリムですか! 安直で良い名です! これからよろしくお願いします! 我が主よ!』


安直? なんか褒めてない気が……。

とにかく、こうして俺の旅が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る