第131話 水の帳

 銀色が揺蕩うなか、白い煌めきが舞い踊り、落ちて行く。水のカーテンが棚日いています。表から照らされた水面が演舞を披露している。


「綺麗ぇ」


 しばらく眺めていて,やっと一言が出てくれました。心が震えているんです。

 隣で同じものを眺めてる一孝さんも同じかな同じだといいな。

引いてくれている手を組み替えて彼は恋人結びにしてくれる。

ぎゅっと握ってくれるの。手から伝わり私の胸もあったかくなる。


「美鳥…」

「はい  」

「こんな感動ってあるんだね」

「はい、私も感じますよ」


 その後、景色に圧倒されて言葉が続かなかった。


 でも、心が少し残るような感覚があるけど、滝の流れ落ちるところを後にする。


 すると。


「キャッ、キャッハハ」


 楽しそうな嬌声が聞こえてきました。私たちより先に進んでいるカップルでしょう。楽しんでる雰囲気が感じられます。


「この声って?」


 そう、声質が私に似ているというより私と同じなんです。私は声を出していないよ。

そうか,彼女がきているんだっけ。

 あの滝での景色に圧倒されて記憶がいくらか飛んでしまっています。


「美華姉だね。楽しそうだな。いいものあったかな?」


 一孝さんも気づいたようね。先を見ると脚が見えた。

 空に脚? おかしい、空に足が浮いているの。視線を上に移していくと、美華姉さんは和也さんの腕にぶら下がっていたの。

 いくら私たちが小柄と言っても、お姉さんの彼氏の膂力はかなりのモノです。感心してしまう。

 だからだね、少し握られただけで私の腕に痣ができたのか納得してしまう。でも女の子に跡を残すのは感心しませんが? 

 でもね、楽しそうに蕩けた顔で彼氏と話をしながら戯れているのを見ると羨ましいと思ってしまう。

 ポニョポニョ腹の今の私では体が重くて、一孝さんに怪我をさせてしまうんではないかと考えてしまう。

 それでも心の中のモヤモヤが顔に出たのだろう。唇に指をつけて上目遣いで一孝さんを見てしまう。

 彼は困った顔をして、


「無理,無理,無理無理」


 そうでしょうね。

 一孝さんは大怪我を治してから、そう日が経っているわけじゃないの。


「ごめんなさい。我儘言っちゃて」

 

 にっこりと微笑みを返してあげるの。


「行こ」


 私達は先を目指していく。もう少しでウォータースライダーのエントランスまで到着するところまで来ました。

 一孝さんのフォローで、ここまで登ってこれました。何度,彼の手や腕を頼りにしたか知れてしまいます。

 そして最後は池を渡っていくようになってるの。水面の所々に足の置き場所として浮島みたいに岩が配置されている。その上を歩いていくようになってるみたい。

 岩と岩の間隔は私でもなんとか歩いていけるぐらいの間隔。ここまで一孝さんに頼り切りだったんで最後ぐらい、私がって、頑張ることにしました。


「美鳥、大丈夫か? なんなら俺が」

「うん、ありがとう一孝さん。是非とも私にやらて欲しいの。お願い」

「お前がいうなら、いいけどなあ。本当にいいのか?」

「ええ、頑張る」


 早速、池の境から1個目の岩に足をくり出していくそおっと踏み出していきました。足の指先が岩につく。


  ホッ


 そのまま体を岩の上に飛び移って、


「やったあ、やりましたよ一孝さん」


 彼に振り向いてガッツポーズを見せてあげました。

 だって心配だったんだもん。私はそんなに運動神経あるとは思っていない。池を見ると濁っていて、どれだけ深いかわからないし落ちたらって思うと足がすくんでしまったのは,本当。

 勇気を出して踏み出したんだ。一歩だけど無事に済んでよかったぁ。


 彼も、そこら辺をわかってくれている。だって振り返って顔を見たら安堵してたのは見逃していないよ。

 じゃあ、次のところと物色して足先伸ばした。指先をつけて押してみる。


 うん,大丈夫。それではと軸足で蹴り出して渡った。


ん!


 足をついた時に石が沈んだ。なんでさっきは沈まなかったのに。

  

  えー


 そのまま,体が硬直して水面に落ちていく。


   ザブンッ


「美鳥!」


 あぁ、どうやら、小さい時から私は、水の神ウンディーネに嫌われていようね。









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