第95話 銀冠の中、君は輝く 3
コトリの手を持って屋台が並通りを歩いていく。
既に沢山の人出になっているから、少し歩きづらい、いきなり逸れられても困るんで店側を歩いてもらった。
どうもそれがいけなかったかな。
「ねえ、お兄ぃポンチキンって何?」
「ねぇ、お兄ぃ電球ソーダって何? 光ってきれー」
「ねぇ、お兄ぃ焼きそばとオムレツな焼きそばってどう違うの」
「ねぇ、お兄ぃチーズハットグって何?
「ねぇ、お兄ぃトルコアイスって美味しいアイスなの?」
こんな具合に、店の前を通るごとに聞いてくるんだ。俺だって知らないものは多かった。
ホットドックが韓国語でハットグ! わかるかあ。
でも好奇心に負けて聞いてしまう。もちろん買って食べてるけどね。
「ねぇ、お兄ぃ大阪焼きと広島焼きって何?
「コトリはお好み焼きは、食べた時あるか?」
ちょっと聞いてみた。
「あるよー」『あるー、ママの作ったの美味しいよ』
よっぽど好きなんだろう、美鳥まで答えて来た。そうか美鳥も見えてるんだっけ。
なんとなく、コトリの屋台を見てるのを涎を垂らしながら感じてる美鳥が見える。
「概ね、それが大阪焼き。広島焼きはキャベツや麺を重ねて肉とかイカとか載せて焼くだろう」
コトリの喉からゴクリと動いた。
「それにおたふくソースって専用ソースをかけてマヨネーズとかノリとかトッピングするんだ。後ね、上から、ギュって圧縮するのがコツなんだって」
コトリは、両手を上げて、
「広島焼き食べたい。食べたいの。お兄ぃも食べたいでしょ」
俺の腕をグイグイしてくる。
「ダメダメ、まだ神社にお参りしてないでしょ。それにここまでちょこちょこ食べていっぱいじゃないの」
「美味しいのは別腹だもん」
悔しそうに大変なことに言ってる。
「まっ帰りによるから、今は堪忍な」
コトリは口を尖らせて、
「わかった。絶対だよ」
もう。大人の雰囲気の浴衣もバッチしメイクも吹き飛ぶ子ども顔になってる。笑いを堪えるの大変でした。
でっ、また進むと
「お兄ぃ、スティックワッフルって何?」
また、コトリが屋台の前で止まった。確かに、俺も初めてだ。
「買うか」
コトリは俺の作務衣の袖を握り、グイグイ引っ張って、
「ずるいよぅ、お兄ぃだけ買ってええわ」
「コトリ何にする」
と聞くと、表情がいきなり変わり満面の笑顔でストロベリーチョコのものを指差した。
どれどれ、ワッフル生地をステック状にしてチョコとかクリームをつけて、シュガーチップとかフルーツをトッピングしてあるんだ。確かに持ちやすくて食べて安い。
俺の知らない間に新しいものが出てるんだね。
2人でそれを食べながら神社に向かった。
もう少しというところで、辺りが静かになった。
バシュツシュシュシュシュ、バシユン。
花火の連続発射音がした。スターマインの連続打ちじゃないか?
いきなりだったんでコトリを捕まえて、抱え込むことができなかった。
単色牡丹の早打ちが始まる、それも3箇所同時に、すぐに混合色玉の早撃ちに変わる。
地面からも火柱が数本上がり出した。切れるかと思うと花雷・号砲のフラッシュと轟音。
そしてキラキラ、ピカピカと点滅する星が一斉に降り注いできた。
すぐに上空で爆ぜて四方八方へに飛散する飛遊星花火が空を飾り、シュルシュルとユーモラスなに音を出しながら飛び回る群蜂が続く。
そのうちに二重牡丹、三重菊先の早打ちが始まる。
俺はコトリをみた。ボーっと花火を見ているように安心していたんだ…
最後に、銀冠の連射が夜空を埋め尽くした。辺りは金と銀の光に満ち溢れ、体を芯から振るわす大音場が鳴り響いた。最後に柳となって光が地上まで落ちてくる。
そんな中、コトリは振り返り、俺の顔を見てきたんだ。うっすらと微笑んで。
で、そのまま膝から倒れてしまった。
「コトリー」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます