第63話 フォトスタジオ インキャリッジ
電車がホームで止まると共にホームドアと電車ドアが連動して開く。先にホームに上がっていたシアンさん達とは別になってしまったけど、なんとか荷物ごと電車に滑り込んだ。
ライムが、俺の抱えているバックを見て、
「こんな大きなバックを2つも載せて、別料金とか言われないの?」
「確か、大丈夫。3片全部で2.5メートル以下ってなってた。それも2つまで」
額を二本指で摩りながら、マゼンタが答る。流石に思って俺は、
「よく知ってますねぇ、初めて聞いたかも」
「ソムソナイト。ああっ大きな旅行ケースを使う時あるから調べたわ」
さらに聞いてみる、
「じゃあ、結構、海外とか旅行行くんでしょ。いいなあ」
そっぽを向いて彼女は、
「まあ、それだけじゃないんだけどね」
恥ずかしそうに頬を掻いて答えてくれた。
「何、やってるんだか?」
「別にいいじゃない」
電車の中は、席がほとんど埋まり、通路に立っている乗客もちらほらいたりする。かくいう俺たちも立ち組。子連れの親子もいた。
「一孝さん、肩借りていい?」
ライムが体を寄せてきた。
「良いけど、疲れたのか?」
早速、ライムは肩に頭をのけてきて、
「ちょっと眠いの」
「昨日、ゲームでもやってたのか?」
「違うよぉ〜。早く寝たもん」
マゼンタがライムに近づいて、
「甘えたいだけじゃないの〜。 ん。 あんた、まさか」
「うん、近いかも」
「あ〜ぁ」
なんか、気付いたようだ。
「一孝、バック1個下ろして、ライムは座りな」
「大丈夫だよ」
「いいから、座りなよ。マゼンタさんも言ってるし、ねえ」
遠慮しようとするけど俺はバックのスリングを外しながら、下に下ろしてライムに座らせる。
「ありがと、お姉ちゃん、一孝さん」
ホッとしたように答えるライムでした。
「それと」
ライムはキョロキョロと周りを見出し、体を捻って後ろまで見ている。
「なんか、視線感じるんだけど。チラッチラッと」
すると丁度、ライムの前で立っていた女の子が、話しかけてきた。ライムが座ったことで目が同じ高さになって話しかけやすくなったんだろう。
「お姉ちゃん、メイドさんなの? キレイだね」
「お姉ちゃん! キレイ! 」
ライムは、驚きつつも笑顔で俺に顔を向けてくる。どうだろとばかりに。
そして目線を俺から、その子に移して、
「ダイナーガールっていうんだ」
女の子は顔を曇らせていく、
「なんだぁ、違うんだぁ」
ガックリと肩を落とす仕草までしたのをみて、
「ごめん、ごめん! メイドさんです。ライムって言います」
一緒に、
「私はマゼンタだよー。可愛い子!」
その子も機嫌を直したのか、
「赤いお姉ちゃんもキレイ!」
と笑顔で話すと、マゼンタも俺にドヤ顔を見せてきた。
「メイドさんがなんで、電車乗ってるの? どこかいくの?」
女の子は首を傾けて聞いてくる。
「港に行って、お手伝いしてくるんだぁ」
「やっぱりメイドさんだね。じゃあ」
女の子を肩からかけていたポシェットからスマホを取り出して、ポチポチっと操作し始め、て、
「みんなで写真撮ろう。メイドさんて一緒に撮るんでしょ」
俺は、くるりと背を向けて吹き出してしまった。どこからの知識だろう。
すると、そばにいた母親が、女の子のスマホを握ってきて、
「ダメですよ蒼生、お姉ちゃんたち、これからお仕事なるだから、お邪魔になるてしよ、辞めなさい」
母親は、こちらに向いて謝ってきた。
「すみません。パパから、お下がりのスマホ貰ってから、なんでも撮り始めてしまって。ご迷惑でしょう」
ライムは手のひらを振り答える。
「迷惑なんて」
そして、女の子に向かって、
「蒼生ちゃんならブルーだね」
「そうなの?」
「そう、お姉ちゃん、ライムはグリーンなの。マゼンタはレッドだし、3姉妹になるんだよぉ」
女の子は手をあげて喜んだ、
「 やったあ、私もブルーでメイドさんなんだぁ。じゃあ3人で撮ってえ」
マゼンタさんが母親からスマホを受け取り、俺に投げてきた。
「一孝、お前カメラマンな。しっかり撮れよな」
「わぁっちぃ! いきなり振らないでください」
俺は受け取り損ねて、手の中でファンブルさせてしまった。しっかりと握り直して、女の子を含め3人にスマホのカメラを向ける。
「いくよー1たす1はー」
ライムとマゼンタが女の子を真ん中にして、両サイドで手をヒラヒラさせてアピールする。
「「「に」」」
すると複数の数えきれないほどとシャター音が列車内に鳴り響いた。
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