第20話 ひとまず

次の日の学校のお昼休憩。

一輝の教室に早速伊沼と井宮が訪れた。

伊沼「どうだったよ、美人先輩は?笑」

一輝「うっせ、お前らに関係ないだろ」

井宮「一人だけ怪我してんのに足早かったしな笑 分かりやすすぎ笑」

一輝「そういうお前らだってマネージャーにデレデレしてただろ」

伊沼「あのなー、男は正直なんだぜ笑」

三人は笑顔で談笑した。

廊下にふと敦の姿があった。

げっそりと元気がなさそうな敦だった。


一輝は思わず、「敦君!!」と叫んだ。

敦は声に気付きこちらに近づいて来た。

敦「お、おはよう」

一輝「お、おう。今昼だぞ」

敦「そうか、昼休みだもんな」

伊沼が心配そうに「どうした?具合でも悪いのか?」

敦「いや、初日の補講で地獄を見た...」

一輝「そ、そうか頑張れ」

敦「で、なんか用?」

一輝「あー、俺らで話してたから敦も一緒にどうかなと思ってさ」

敦「俺はいい、パン買ってくる」

一輝「そ、そうか。行ってらっしゃい」


敦はトボトボと教室で出て行った。

伊沼「ありゃ相当応えてるな」

井宮「初日でああなるとか逆に気になるー」

一輝「あ、ところで夏休みに夏の合宿あるの知ってる?」

井宮「何それ初耳」

伊沼「うわー。キツそう」

一輝「なんでも、長野県にある菅平ってところで2週間ほど泊まるらしいんだけど...」

伊沼「2週間!?殺すきか!」

井宮「おいおい、貴重な夏休みが...」

一輝「まあ、お盆前には帰るらしいからそこで大型連休があるって話」

伊沼「まじ?しゃ!!海行こうぜ!」

井宮「いいね!他も誘うか!」

三人は盛り上がった。


楽しい時間も過ぎそれぞれが教室に戻った。

そして学校が終わり部室に向かった。

補修組は昨日で大体の人が戻ってきた。

そして今日から夏に向けて走り込みが始まった。

いつも練習はきついが今日はなんだか先輩方がピリピリした様子だ。

ちなみに敦は補修を抜け出せていなかった。

村雨キャプテン「おい、一年しっかり声出して走れ!!」

一年生達「はい!!」

ジグザグに走ったりダミーにタックルしたりコーンを避けたり、そんなルートをひたすら走り続けた。

ダミーは交代メンバーがせっせと起こしてくれていた。

牧マネージャー「残り10分!残り10分!」

一輝「はあ、はあ」

伊沼「頑張れ、あと少しだ」

伊沼が背中を押すように後ろから声をかけてくれた。

一輝「うし!」一輝はひたすらスピードを上げた。


横から「おい、宇佐見!!しっかり走れよ!とろいんだよ!!」

3年の種美先輩が大きく叫んでいた。種美先輩は嫌味が多くあまり親しまれていない先輩だ。後輩に厳しく監督にいい顔をする少し嫌な性格の人だ。

牧「ストップ!!」

牧マネージャーの美しい声がグランドに広がった。

牧マネージャー「交代!!」控えてたメンバーが交代で走った。

30分間ひたすら走り続ける過酷なメニューだ。

三年の守道先輩「動ける一年はすぐにダミーを起こしにいけ、交代でな」

一年生達「はい!!」

一輝「はあ、はあ、はあ」

佐々木マネージャー「はい、お水。大丈夫?」

一輝「あ、ありがとうございます」

ゴクゴクッ ふう

佐々木マネージャー「頑張ってね、応援してるよ ボソ」

一輝はドキッとした。一輝は紛らわすためにすぐにダミー交代に向かった。


30分が経ち一斉に一年生達が先輩方にお水を届け休憩をしてから次のメニューに移った。

次はひたすら対人でダミーヒットするメニューだ。

一人は体が隠れるくらいのハンドダミーを持ち、もう一人は10分間ひたすらヒットするメニューである。一番過酷なメニューである。

岡田マネージャー「スタート!!」

一輝は岡田先輩のヒットを受け続けた。

何度も何度もヒットして後ろに押されそうになった。

岡田先輩は怯むことなく10分間やり通した。

次は一輝の番...

岡田マネージャー「スタート!!」

一輝はひたすら岡田先輩にヒットし続けた。

バチッ!と次第にぺチッ!と音が弱々しくなってきた。

岡田先輩「もっと激しく押してこい!!」と押し倒された。

それでも諦めず立ってヒットし続けた。

ふと隣に宇佐美がいた。

2年の島崎先輩「おいしっかり当たれよ!この!」

宇佐見は島崎先輩にわざと顔にぶつけられ顔を抑えながら後ろにのけぞった。


一輝の心の声「宇佐見!頑張れ!」

宇佐見は立ち上がりヒットを続けた。

島崎先輩「力が足りねーんだよ!おい!」

島崎先輩はダミーで上手く手を隠して宇佐見に腹パンをかました。

宇佐見「うっうぐ」宇佐見は腹を抱えて倒れた。

岡田マネージャー「ストップ!!」

一輝はすぐに宇佐見に近寄った。

一輝「大丈夫?お腹痛いのか?」

宇佐見「う、お腹を...殴られた...」

一輝「え?ほんとか?」

種美先輩「おい、休憩中に何やってんだよ」

3年飯野先輩「たて!宇佐見!」

宇佐見は無理やり立たされた。

一輝「ちょっ、飯野先輩!宇佐見はお腹痛いって」

飯野先輩「知ったことか、お前は黙って水でも飲んでろ」

そこに島崎も加わった。

島崎先輩「おい、宇佐見大丈夫かwwwしっかりしろ、な」

種美先輩「島崎ちょっとやり過ぎだろwwおもろいからいいけどwwしっかりしろよw」

種美先輩は宇佐見の頭をはたいた。


周りは見てみぬふりをした。





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