第16話 葛藤

6月に入った。

一年生達はなんとかきつい練習を乗り越え少しづつ強くなっているのを感じた。

そして6月は期末テストなのだ。

勉強とスポーツを両立させないといけない時期なのである。

キーンコーンカーンコーン

一輝「敦くん、勉強室いこ」

敦「おう」

先輩達も続々集まった。

テスト前になると一室を借りて勉強会を開くのだ。そして丁度いい時間に練習を行う日課だ。

静かにカリカリと書く音が聞こえる。

すると横から鴨川が「なぁ、今日教科書忘れて見せてくれない?」

おどおどと小声の様子で頼んできた。

一輝「いいよ、ちょっとこっちよりなよ」

こそこそとやり取りをした。


後ろからガラガラと扉が開いた。

来た、雰囲気でわかるこの感覚。

ドスッドスッと足音がのっしりと聞こえる。

教卓に足を運んだ。

野太いガラガラの声で「集まったな、ちゃんと勉強に励んでテストに望めよ」

一年生の小島がビクッと起きてガタっと机を揺らした。

どうやら寝ていたらしい。

幸い監督は気づいてなかった。

しかし先輩に睨まれていた。

小島は焦った顔で顔を隠した。

1時間半くらいの勉強時間が終わると軽く練習がある。

その練習を終えて家に帰れるというものだ。


勉強会が終わり早速小島がこっぴどく先輩から注意を受けた。

部室に行き練習の準備をしている時にふとこんな話題があがった。

「練習が辛いからこの部活やめたいよな」

何気ないこの会話にみんながそそられ、確かにとうなずく者もいた。

しかし、バックス陣の人達は「辛いならやめろ、半端な気持ちでここにくるな」と反発をした。

しばらく口論は続いたが話は後にして練習に向かった。

一年生はギスギスした雰囲気で練習が始まった。

あまり声が出せない部員もタックルをやたら怖がる部員もいた。

進藤コーチ「そろそろですね」

監督「ああ」

監督はなにかを察していた。

そう、この6月という時期は別れ道になるのだ。ここが辛いと思うなら去る、それでも諦めず最後までやり遂げる者もいる。

今まさにこの葛藤の中なのだ。

最後までやり遂げた者にしか見えない景色もある。ラグビーに限らずどのスポーツもどの分野でも言えることだろう。

そして練習も終わりストレッチをして解散をした。


どことなく暗い雰囲気のまま一年生は部室で着替えた。


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