第6話(4)紫髪の超能力者
「す、姿が変わった……?」
「ティッペ……これはどういうことかな? うん?」
俺は自分の口調に首を傾げる。
「さすがは『七色の美声』、ミステリアスな中性的な人物を演じても違和感が無いっぺ……」
「感心している場合ではないよ……」
「え?」
「何故『赤髪の勇者』の絵を渡さないんだい? なんなのだい、この恰好は?」
「い、いや、かつてこの世界の危機を救った伝説の『虹の英雄たち』の一人、『紫髪の超能力者』を描いた絵を渡したっぺ!」
「超能力者?」
「そ、そうだっぺ!」
「……例えば、どんな超能力があるのかな?」
「さ、さあ? 詳細に関してはなんとも言えないっぺ……」
「まったく……毎度のことながら君は出たとこ勝負だな……」
俺は長い髪をかき上げる。
「し、しかし、余裕を感じさせるような振る舞いだっぺ!」
「これは癖のようなものだよ」
「そ、そうだっぺか?」
「そうだよ、内心……」
「内心?」
俺は胸を抑えて呟く。
「胸の鼓動の高まりが抑えられない……」
「……心臓バクバクだということだっぺか?」
「まあ、そうだね」
「だったらそう言えば良いっぺ」
「こういう言い回しになってしまうのだよ」
「面倒だっぺねえ……」
「いや、君のせいだろう?」
「……お取込み中のところ大変申し訳ないけど……」
「!」
「始末させてもらうよ」
トーマがタブレットを操作しようとする。俺はティッペに問う。
「どうすれば良い?」
「! そ、その指輪だっぺ!」
「指輪?」
見てみると、両手の十本の指全てに指輪をはめている。
「恐らく、その指輪が超能力の鍵になるっぺ!」
「恐らくって、ティッペ、君ねえ……」
「……終わりだ」
「早く!」
「本当にどうすれば良いんだい?」
「指輪をかざしてみるっぺ!」
「……こうかい?」
俺は右手の人差し指をかかげてみる。すると指輪が光る。
「!」
俺たちに向かって槍を突き立てようとした骸骨兵士たちの動きが止まる。
「ふむ、これは……」
俺は人差し指をクイっとしてみせる。兵士たちが後方に倒れ込む。トーマが驚く。
「な、なんだと⁉」
「なるほど、念動力のようなものか……」
「くっ!」
俺は自らの体を抑えて頷く。
「ふむ、体に多少負担がかかるな。多用は危険か。タイミングが重要というわけだね」
「調子に乗らないでもらおうか!」
「む……」
トーマがタブレットを操作すると、また多くの骸骨兵士たちが現れる。
「かかれ!」
「うむ……例えばこれはどうかな?」
俺は右手の中指を突き立ててみる。
「⁉」
骸骨兵士たちが突き出した槍が空を切る。ティッペが声を上げる。
「と、透明になる能力だっぺ!」
「なっ⁉」
「……」
「‼」
透明になった俺は骸骨兵士たちをバッタバッタと投げ飛ばしていく。
「こ、小癪な真似を!」
「もらった!」
「そうはさせない!」
「む⁉」
俺はトーマに勢いよく飛びかかろうとしたが、バリアのようなものに弾かれる。透明状態から元に戻る。トーマがタブレットを片手に笑う。
「ははっ! このタブレットさえあれば、怖いものはないんだよ!」
「やれやれ……なんでもありだね……」
「人のことを言えるのかい⁉」
「まあ、それは確かにね……」
俺は苦笑する。ティッペが叫ぶ。
「スグル! その奇妙な道具をどうにかしないとダメだっぺ……!」
「それについては同感だ……」
「ふん、君は僕には近づけないよ!」
トーマの周囲に骸骨兵士たちが群がる。俺は顔をしかめる。
「バリアに加えて、その警護……防備は完璧というわけかい……」
「そうだ! 手出しすら出来ないよ!」
「それはどうかねえ?」
「うおっ⁉」
骸骨兵士の一体が急にトーマに向かって槍を突き立てる。慌てたトーマはタブレットを落とす。すぐに拾ったものの、目には見えないが、バリアが解除されたようで俺は一歩を踏み出すことが出来た。
「いける! それ!」
「ぐおっ!」
俺は右手の人差し指を思いきりクイっとさせると、兵士たちもろとも、トーマが吹き飛ぶ。
「⁉」
「くっ……撤退だ!」
体勢をなんとか立て直したトーマがタブレットを操作し、自らの体を骸骨兵士に運ばせて、撤退していく。ティッペが声を上げる。
「スグル! 追撃を!」
「いや、残念ながら、能力の連続使用にまだ耐えきれない。ここは追い払うことが出来ただけでも良しとしよう……ん?」
しばらくして姿が戻った俺が見ると、骸骨兵士の一体が残っていた。トーマに突如槍を突き立てた者である。その者が呟く。
「【憑依】解除……」
「む⁉」
紫色のウェーブがかかった長い髪をしたスタイルの良い女性が姿を現した。
「やっとこさ、合流出来たぜ……」
「あ、貴女はどこかで見覚えがあるような……」
「コスプレイヤーの
「‼」
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