ワイ、30歳無職がお見合いをした結果

第9話 おじさん構文ンゴ

　スレ民たちが「マヨネーズ」の呼び方を「マヨ」か「ネーズ」のどちらで呼ぶかそんなどうでもいいことで対立していた。

　第三の勢力として「マーズ」が出てきて混沌を極めた時、ようやくイッチが帰還。

　ちなみに「マーズ」の話題で「それは火星や」と一人のスレ民の発言。

　「マーズ」が「火星」のことだと気づくまで30分を要した。

321 下僕一号　2023.7.6（土）01:22

〔うちの妹が「変態」な件について〕

　なんとか無事生還できた賢司はさっき自分の身に起きた出来事を簡潔にまとめて。

　熱いうちに鉄を打てとは違うが忘れぬうちに投下せよを実行。

322 無知の極地　2023.7.6（土）01:26

〔眠れなくなったわサンガツ〕

323 無知の極地　2023.7.6（土）01:26

〔愚息が起きたでしょーがァァァ！！〕

324 無知の極地　2023.7.6（土）01:26

〔ずっと、スタンバっていました〕

325 無知の極地　2023.7.6（土）01:27

〔予想はしていたけどこうも期待通りだとは思わなんだ〕

326 無知の極地　2023.7.6（土）01:27

〔全裸になれました〕

327 無知の極地　2023.7.6（土）01:27

〔精通しました〕

328 無知の極地　2023.7.6（土）01:28

〔kwsk〕

　賢司（イッチ）の帰還を待っていたスレ民とその細かい詳細を聞き出そうとするスレ民が書き込み。

　「土曜日」に加えて「メシウマ案件」ということからか深夜一時過ぎにも関わらずいつも以上に民度が濃いように感じる。

335 無知の極地　2023.7.6（土）01:32

〔セクロスしたに一票〕

336 無知の極地　2023.7.6（土）01:32

〔セクロスされたに一票〕

337 無知の極地　2023.7.6（土）01:33

〔にしては帰りが早いな〕

338 無知の極地　2023.7.6（土）01:33

〔早○なんやろ。察せや〕

339 無知の極地　2023.7.6（土）01:33

〔>>338 それはすまなかったで候〕

340 無知の極地　2023.7.6（土）01:34

〔>>339 誰が上手いこと言えって言ったww〕

　スレ民たちは勝手に賢司（イッチ）がおせっせをしたと無駄な勘繰りをし出す。

380 下僕一号　2023.7.6（土）01:49

〔童貞どももちつけ。ちゃんと説明するから。まず、ワイは妹の部屋に――〕

　体験した内容を事細かくカキコ。

　その間、何もなく解放されたことに安堵しつつこれからの生活に危機感を覚えながら――瑠美（妹）とのやりとりを思い出す。

　想像を絶する場面に出くわし少し時間が経って自分の思考も正常に定まった時。

『元々いつかは打ち明けるつもりだったんだ。でも安心してねお兄ちゃん。今すぐにどうこうするつもりはないから……お兄ちゃんがどうしてもって言うなら……』

『だ、大丈夫！！　ほら、俺も瑠美を大切に想っているから体を大切にしてくれ！！』

　放心状態から解けると少しでもこの場から穏便に脱出できるように言葉を選ぶ。

『ふふふ。私ももっとムードのあるところで――お兄ちゃんに初めてをあげたいから』

『――ぃ！？』

　こちらの耳にそっと顔を近づけてそんなトンデモナイことを小悪魔のような囁く。

　こんな局面なのに瑠美の生暖かい吐息が耳をくすぐり愚息が……。

『そ・れ・と……過去を克服して変わろうとしているお兄ちゃんを手伝ってあげる。瑠美も昔のお兄ちゃんに少しでも戻って欲しいから。二人で頑張ろう、ね？』

　床に倒れ伏す賢司に立ち上がった瑠美は満面の笑みでそう伝え。

『そ、それって……』

『うん。お兄ちゃんが○ちゃんねるで昔の過去を話して変わろうとしていることは知ってるよ。散髪に行った理由も知っていたけど。何も話してくれないお兄ちゃんが悲しくて……今日はキツく当たっちゃった』

　『ごめんね』と舌を出して可愛くウインクしてくる。

『そ、そうか』

　なんでも知っている妹に対してその言葉を返すことだけで精一杯だった。

　つまるところ瑠美は賢司の計画を初めから知っていて、仲直りの機会を探っていた。

412 下僕一号　2023.7.6（土）02:05

〔――ワイらは妹の手のひらの上だったんや〕

413 無知の極地　2023.7.6（土）02:06

〔こえぇぇ。けどいいなぁ〕

414 無知の極地　2023.7.6（土）02:06

〔結局イッチの臭いパンツの行方は妹の元だったんやな。勝手な推測でとばっちりを受けたネル様カワイソス〕

415 無知の極地　2023.7.6（土）02:06

〔兄好き（結婚したいほど）の可愛くて病み気味の妹がいるイッチとか何者なんや？〕

416 無知の極地　2023.7.6（土）02:07

〔裏山けしからんがイッチなら許す。普通のカスならすぐさま処刑だがな〕

417 無知の極地　2023.7.6（土）02:07

〔前世の善行凄そう〕

418 無知の極地　2023.7.6（土）02:08

〔待て。おまいら逆に考えるんだ。「無職」のイッチにこんな幸福があるというわけは同族であるワイらにも同程度の祝福があってもおかしくはない……かも……知れない〕

419 無知の極地　2023.7.6（土）02:08

〔>>418 最後まで自信持てよww〕

420 無知の極地　2023.7.6（土）02:09

〔>>418 まず前提の話。イッチと同じ過去を辿ってだな〕

421 無知の極地　2023.7.6（土）02:09

〔出直せなんて優しい言葉は言わん。>>418 お前じゃ逆立ちしても無理や。諦メロン〕

　賢司（イッチ）について祝福の言葉だったり妬み恨みの言葉だったりと色々な見解が飛び交う。

460 無知の極地　2023.7.6（土）02:22

〔今も妹に監視されてるんだろ？　これからは下手なことは書き込めんちゃうか？〕

　そこに一人の書き込み。

461 無知の極地　2023.7.6（土）02:22

〔確カニ。下手なこと発言したら粛清されそう〕

462 無知の極地　2023.7.6（土）02:23

〔イッチの妹ならここの特定班よりも卓越とした嗅覚と情報網でワイらの家を特定しそうやな。怖くてワロエナイ〕

463 無知の極地　2023.7.6（土）02:23

〔触らぬ仏に祟りなしやな〕

464 下僕一号　2023.7.6（土）02:24

〔おまいらそこんとこは安心してくれ。妹には事前に話してきた。ワイ以外にはあまり干渉しないことを。監視されているかはまぁ……神のみぞ知るなんとやらや〕

　「女性の影が少しでもあったら○ちゃんねるは閲覧させないからね」と釘を刺されたことは伏せる感じで。

465 無知の極地　2023.7.6（土）02:25

〔さすが、有能イッチは違うな〕

466 無知の極地　2023.7.6（土）02:25

〔そこに痺れて憧れるぅぅ！！〕

467 無知の極地　2023.7.6（土）02:26

〔干渉できるのはワイらだけ。ならば――ヤッホー😃✋妹チャン。見てる😅「無職」のイッチ🤭なんてやめて🙅‍♂️有名大学卒で大企業に勤める年収8000万勝ち組のｵﾚ😎とオトナのランデブーしよ😍なんちゃって😃♫イマも見てるなら連絡ちょうだいネ😘〕

　性懲りも無くまた「40歳無職」が登場。

　それも――

468 無知の極地　2023.7.6（土）02:28

〔>>467 また来たと思ったら路線変えて「おじさん構文」で草生えるww〕

469 無知の極地　2023.7.6（土）02:28

〔>>467 ごめんこれは吹いたww〕

470 無知の極地　2023.7.6（土）02:29

〔こいつもう自慢という以前に笑かしにきてるだろww〕

　「おじさん構文」

　SNS内で流行っているというおじさんの痛い文章で綴られた書き込みが炸裂。

　叩く以前に笑い転げるスレ民たち。

482 「妻」　2023.7.6（土）02:36

〔>>467 山田照夫。43歳、中卒、無職にして○根県に住む子供部屋おじさん。これ以上の情報を漏らされたくなければ子供部屋に消えなさい。私のお兄ちゃんを次、馬鹿にする発言をしたら……ね？〕

　「妻」とコテハンを使って名乗る人物。

　※コテハンとは通称「固定ハンドネーム」と言われる「別名:HN」の意味。

　本来は「コテハン」と呼ばれる人物達は他と「名前」が違うため「目立ちたがり屋」「イキっている」と思われがちで「主」以外が使うと嫌われることが多い。

　ただ、訓練されたスレ民たちはその「妻」が誰を示すのかなどすぐに理解した。

　だからこそ無駄な書き込みなどできやしない。いや、したら運悪く自滅する。

483 無知の極地　2023.7.6（土）02:39

〔>>「妻」さん　調子こきましたほんと申し訳ありません。もう二度とイッチさんには絡まないので勘弁してください。頼みます〕

　恐らく、いや絶対に「40歳無職」の「山田照夫」だろう人物の書き込みが上がる。

　そのあと、他のスレ民たちの書き込みも途絶え始め。

484 下僕一号　2023.7.6（土）02:41

〔暗い雰囲気になっちゃったから今日はこれで終わるな。明日というか今日用事あるし。付き合ってくれてありがとな〕

　普段と変わらないように装っているイッチの書き込みでスレは終わりを告げる。

485 無知の極地　2023.7.6（土）02:42

〔本当に本名特定されていて草〕

　という書き込みを最後に。