第17話 アスレチックに行きました ③


 『ここが最後のステージとなります』

『ついに来たわね……魔王!!』

『さすがに魔王ではないでしょ』


 まぁ、最後のステージ……最後の敵という意味では魔王という言い方もできるかもしれない。


『【このステージは絶対に命綱を付けるようにしてください】と書いていますね』

『いのち? なにそれ』

『はい、この紐を腰に巻き付けてください』

『動きにくいわ』

『絶対イヤよ!』


 前に調べた限り、このステージでは、この紐をつけないとこの世からいなくなる可能性があるらしい。


『死ぬ可能性があるということですが?』

『く……』



:命綱は付けてー!!!


:ここマジで危険だからな……


:↑到達ニキ現る


:命綱無しは猛者で草


:ラストどんなステージ?


:確か浮いてる木とかを伝って進んでいくステージだったような気がする? 横に紐があるから、それを支えに使えば行ける。


:確か崖と崖を繋いでいるんだよな。難易度は今までのに比べたら劣るが、恐怖心だと最難関だぞ。長さも第5ステージとほぼ変わらんらしい


:落ちたらガチで死ぬやつやんそれ



『それではまず私から行きます』


 そうして、どんどん画面の中の私は進んでいく。

 この時私は何を考えていただろうか……

 全く思い出さない。

 1つ言うとするならば風がかなり強かったことだろう。

 横風が強く、木があちらこちらに揺れているのだ。



:待て、フィナリアが先に行くとまずくないか?


:一緒に行くという選択肢は……


:↑そっちの方がかえって危険。最適解はフィナリアが最後に行く方が良い



『つきました! あれ?』


 そう、私もミスをしたことにようやく気が付いた。

 あまりにも離れているため、声が届かないのだ。

 つまり……


『フィナリアはもう行ったのかしら?』

『どうやら行けたようね。私も行きます』

『え!? 私も行くわよ!』

『危険じゃない! ここで待ちなさいよ! ディア!』


 とスメラ嬢が先に行ってしまった。

 ここは私のカメラではなく、2人に被らせているヘルメットのカメラを使っている。



:ディア王女1人はまずくね?


:王女ならいける!


:これで行けたらマジ伝説だぞ


:スメラも悲鳴上げてるし……


:やばいやばい……


:しかもここ崖の上だから、助けようにも助けれないんだよな。第5ステはまだ地面まで近かったからあれやけど


:スメラ嬢クリアしてワロタ



『私も行きますわよ!!』


 ディア王女も進みだした。

 しかし。


『うわぁぁぁーー!! すめらぁー!! フィナリアー!! 怖いよぉー!! 高いよおお!! 助けなさいよー!! うわぁぁぁ!!』


 ど真ん中で立ち往生し、泣き叫んでしまった。

 命綱は付けているので、下に落ちることは無いだろうが……


『下を見たらダメです! ディア王女様!』

『いやぁぁぁ!!! 揺れてる!! 死ぬのはやだぁぁ!!!』

『うるさいわね』

『スメラ嬢あれが普通の反応です』



:フィナリアも普通じゃないんだよなぁ……


:普通に可哀想


:助けに行ってあげてー!!


:↑ここで助けに行くと余計揺れるぞ




『待っててください! すぐ行きますから!』


 そうして画面の中の私はゆっくり伝っていく。

 もちろん覚えている。


『フィナリアァァ! 揺らさないで! ゆっくり来なさいよ!! うわぁぁぁ落ちる落ちる!』

『落ちませんから! 大丈夫です! しっかり紐を持っててください!』


 どうやら私が行った時よりかなり風が出てきているようだ。

 私でさえバランスをとるのは難しくなっている。

 ここでカットが入り、次きた時にはもうディア王女の目の前まで来ている。

 実際には、ここに来るまで20分はかかった。

 思った以上に風が強かったのを覚えている。

 そしてここからが一番の難所だった。


『ディア王女様! 手を掴んでください!』


 そうして、ディア王女は私の方に片手を伸ばす。

 そうここで……

 暴風が吹き、ディア王女のバランスが崩れたのだ。


『きゃあぁぁ!!』

『王女様!』


 私は、ギリギリ王女の手を握り勢いよく自分のところに引き寄せた。

 これ程、本当にディア王女を失うと思ったのは無いだろう。

 本当に危なかった。


『ぐすん……死ぬかと……思いましたわ……』

『すみません。私の不注意でした。私が背負うので進みましょう』


 そうして何とか私の背にディア王女を乗せて、最終ステージを渡りきったのだった。


:ナイスーーー!!!!


:すげぇぇぇぇ!!!


:あれ? 俺なんで前ぼやけてんだ?


:( ・´ー・`)っ□<涙拭けよ…


:ありがとうございます。


:泣いてたからありがとう!


:私にも下さい!


:まさか動画で、泣かされると思わんかった


:え? これ映画だよね?


:違います




『はい、という事で今回はこのアスレチックに挑戦しましたがどうでしたか?』

『怖かったわ』

『だらしない王女』

『なんですって! もう一度やってみなさいよ! スメラ!』


 いつも通りのディア王女になってよかった。


『疲れるから嫌に決まってるでしょ』

『とりあえず、ディア王女様も元に戻ったので今回はこれで終わりたいと思います』

『絶対登録しなさいよ!? 良いわね!? 王女命令よ!! あと! この動画には絶対いいねしなさいよ!!? 良いわね!?』


 もう息が上がり続けている。 

 相当怖かったのだろう。


『はぁ……』

『それでは皆様、また次回の動画でお会いいたしましょう』



 気付いたら動画が終わっていた。

 この動画は本当に色々あったなぁ。

 と私1人、画面を見て呟いているのだった。



:おつかれー!!!


:いいものみた!!!


:次の動画楽しみ!


【猫鎌ヒカリ✔】:おぬあれちゃー!


:↑司会ぼやけてて草


:↑お前とだろ


:↑おめーもじゃねぇか!( ・´ー・`)っ□<涙拭けよ…


:ハンカチ助かる


:そういえばあの問題児は来てないのかな?


:上の時にいたぞ? 多分……


:第5ステージの話にいたような? 覚えてないけど


:泣いてるんじゃねぇか?


:有り得る………


:上を向いて大号泣


;↑想像つくからやめろwww


【スラム国】:フィナリアです。本日も動画をご覧いただきありがとうございました。

 これからもどんどん更新していくのでどうか、登録といいねよろしくです。


:泣いたので登録しました


:いいねしたよー!


:これからも無理ない程度で頑張って!!


:お疲れ様!!!



 そうしてコメント欄が途切れた。

 結構見るのにも体力が必要らしい……

 私はそのままベッドで眠ってしまったのであった。



 一方その頃。


「フィナリァァァ!!! ディア王女ぉぉぉ!! うわぁぁぁ!! 良かったよぉぉぉ!!! うわぁぁぁ!! ラストおおお!! あああ!!! ゴホッ! ゴホッ! うわぁぁぁん!!!」


 夜亜きらりは、床に平伏しながら、何と、1ステージ目からずっと号泣しているのであった。

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