第9話 出来るぞ

 

 配信をぶった切り、迷宮ダンジョンから帰宅。流石に電車で帰ると色々めんどくさそうだったからタクシーを使って帰る。アルの背に乗って帰るのも検討はしたけど、事情を知らない人からしたら恐怖でしか無いので却下した。


 タクシーの中ではアルと雑談してた。

話したいことあったけど、流石に人前では喋れないからただの雑談。因みに最初、タクシーの運転手さん凄いビビってた。アルがポケットに入ってて姿が見えないから、側から見れば何処からか発せられてる声とそれと会話している少年っていう構図だからな。

そりゃあビビるよねって。俺だってビビると思うよ?多分。ちゃんとアルの存在を伝えたら納得してもらえたから良かったけど。先に言っとけばよかったな。


 何はともあれ、帰宅。

これで人目を気にせず話せる。


「……で、存在強度って何なの?聞いたこと無かったんだけど。」


 存在強度。こんな言葉は一度も聞いたことがなかった。多分だが、探索者のトップ勢でも知らないんじゃ無いだろうか。


『ふむ。そうだな……一つ、先に言っておこう。その現象、事象、或いはそう在るもの、それを我が勝手に存在強度と言ってるだけにすぎん。』


「ってことは、もしかしたら他の言葉で表されてるかも知らないってことか。」


『そうだな……だが、加護に対する認識があのようなものになってる時点でそれは無いだろう。』


『それで存在強度についてだが、一つは分かりやすく言えば、身体の基礎能力だな。存在強度が上がることで、筋力、瞬発力、回復力、思考力、魔力などが上昇する。この世界にあるもので端的に答えるならば、ゲームのレベルという概念があっただろう?それを思い浮かべれば良い。』


「ってことはつまり?存在強度ってのは、ゲームのレベル的なやつで、上がれば身体の基礎能力が上がると。」


 本当に分かりやすく説明するなら上がれば上がるほど強くなるってことか。


「あ、ってことは加護系のスキル取得したら、傷の治りが速くなったりするのは存在強度が上がることで回復力が上がってるからってことか。」


『うむ。平たく言えばそうゆうことだ。そして、もう一つ。龍樹、概念干渉系の魔物を知っているな?』


「概念干渉系というとあれか、自分ルール押し付けの……概念さえ変えるっていう。たしか、龍も使えるんでしょ、あれ。」


 概念干渉系。現状、迷路型S級迷宮ダンジョンの深部、その階層守護者フロアボスの魔物が持っている能力。名の通り、概念、世界の法則に干渉し、一時的に書き換えることが出来るという能力。平たく言えば、自分ルールの押し付け。そんな魔物が世の中にはいる。そして、今まで確認されてきた龍もそんな能力を使えていた。アルが使えるのかは知らないけど。


『そうだ。そして、存在強度が高いほど、概念干渉に抵抗しやすくなる。明確な原理は知らんがな。』


「そういや、陛下が概念干渉系の魔物と戦った時気合いで乗り越えたって言ってたけど、それは存在強度が高かったからってこと?」


『陛下という人物のことは知らんが、つまるところはそうゆうことだ。』


 最初、気合いで乗り越えたって言ってた時はそんな馬鹿なって思ってたけど、あながち間違いでは無かったのか。……ってことはもしかして


「もしかしてさ、存在強度って魔物を倒すと上がったりする?」


『ああ、上がるぞ。微量だがな。』


 あぁ、どうりで。探索者は、一般人より高い身体能力を持っている。それも、上位の探索者になればなるほど。今までその原因は不明だった。まぁ、通説では魔物を倒すことが関係してるだろうとは言われてたけど。つまるところ、その通説はあっていたということだ。


 大発見すぎるなこれ。


 まぁ、アルが言ってるだけだから証明しろって言われたら難しいけど。


「話変わるけどさ、アルって何が出来るの?」


 アルと出会ってからそれなりに時間が経ったが何が出来るか何一つ把握してないんだよな。


『何でも出来るぞ。』


「何でもとは……」


『何でもは何でもだが?』


 何でもだと分からないんだが?


「……龍魔法は?」


『使えるぞ。龍が使えなくてどうする……』


「でかくなることは?」


『出来るぞ。』


「空を飛ぶことは?」


『飛んでるぞ。』


 まぁ今も飛んでるしな。


「ブレスは?」


『吐けるぞ。』


「剣は?」


『出来るぞ。』


 え、まってその体躯からどうやってやんの?


「……空間転移は?」


『出来るぞ。』


「概念干渉は?」


『出来るぞ。』


崩壊式ディストラクションは?」


『出来るぞ』


……やっぱり出来るのか。


「時間移動は?」


『流石に出来んな。』


 これで出来るぞって言われたらどうしようかと思った……


『訂正しよう。ほぼ何でも出来るぞ。』


 あ、訂正した。


「逆に出来ないことってなんかあるの?」


『そうだな……流石に世界の理を変えることは出来ん。死者を蘇らせたりとかな。あと、人になることも出来ん。』


「あぁ、擬人化ってこと?」


『うむ。中には出来るやつもいるとは聞いているが我はしようと思わないが。この姿が一番だからな。まぁ、龍樹がどうしてもして欲しいっていうなら考えなくはないがな。』


「いや、別にいいです。アルはこのままの姿が一番だからな。」


『…………そうか。ならずっとこの姿で共にいるとしよう。』





───────

あとがき


アル様は擬人化しません

なんか擬人化して美少女になるとかないです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る