第54話 深層へ16


 悪魔はひかるんの足を持ち、思い切り壁に向かってぶん投げる。


「きゃああ……!?」

「ひかるん……!!!!」


 ――ドカーン。


 壁にぶつけられるひかるん。

 くそ……どうすればいいんだ……。


『ひかるん大丈夫か……!?』

『やべえよやべえよ……』

『こいつは強い……』

『まずいぞ……』

『勝てるのか……?』


 俺はいそいでひかるんにもヒールをかける。

 くそ……ペットたちはすっかり悪魔にびびって、弱腰になってしまっている。

 戦意喪失とまではいかないが、これでは戦力は期待できないだろう。

 どうすればいい……。


「ひかるん、大丈夫か……? 戦えるか……?」

「大丈夫です……剣はなくしちゃいましたけど……」


 地面に落ちたひかるんの剣を、悪魔は踏んずける。

 そして悪魔はいたずらな笑みをうかべた。

 俺たちがおいつめられたと理解しているようだ。


「くるぞ……!」

「グモオオオオ!!!!」


 悪魔はこっちに突進してきた……。

 くそ、俺とひかるんをピンポイントに狙ってきやがる。

 俺意外なら回復できるけど、俺を狙われたらたまらない。

 悪魔は意外と賢く、俺を狙えばいいとわかっているようだ。


「ハヤテさん……! 私がまもる……!」

「ひかるん……!?」


 ひかるんは俺をかばうようにして、俺の前にたちはだかった。

 だめだ。このままじゃ、ひかるんが悪魔の攻撃をもろに受けてしまう。

 さすがのひかるんも生身で悪魔の攻撃を直撃したら、まともではいられないだろう。


「だめだひかるん! 逃げて……!!!!」

「大丈夫です……!!!!」


 ――ドガーン!!!!


 土煙があがる。

 なにがあったんだ……。

 ひかるんは無事か……!?


「ひかるん……!」

「大丈夫ですよ……!」

「ひかるん……!?」


 そこには、変わり果てたひかるんの姿があった。

 なんと、悪魔の拳を、ひかるんが片手で受け止めているのだ。

 しかも、ひかるん……人間の姿じゃなくなっている。

 まるで、獣人だった。

 ほとんど獣に近い、猫のような獣の姿になっている。

 一応人型ではあるのだが、身体に体毛が生えて、牙や爪も伸びている。


 まさか……。


「ひかるん……!? 進化したのか……!?」

「どうやら、そうみたいですにゃん」

「にゃん……!?」


『なんかキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』

『ひかるん……!?』

『ひかるん覚醒……!?』

『はぁ……!?』

『ひかるん獣人だったのか……!?』

『ひかるんが進化……!?』

『どういうこと……!?』

『あーこれ、ひかるん亜人症だったんか……』

『まじ……? 亜人症ってほんとにあるんだ……』

『なにそれ』

『猫耳ひかるん可愛いじゃん』

『にゃんとか萌え』

『ひかるんおじさんにテイムされてたのか』

『これは勝ったながはは』


 コメント欄が一気に加速する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る