第24話 ある世界樹のはなし
眠る前に昔話をしてあげようね。
お前の好きな雨のお話だよ。
はるかな昔、この世界は瘴気に覆われていた。
生き物は知性を失い、本能のままに暴れていた。
それを悲しんだ神さまは世界に一つの種を落とした。
順調に芽吹いてその木はとても大きく育った。木が育つにつれて魔物は大人しくなり、人は知性を取り戻した。
この時、意識を取り戻したエルフをダークエルフ、他の人族の事を魔族になった。
その根が惑星を包み込んだ頃、広がった枝からたくさんの実が落ちた。
一つはひょんと跳ねて兎になった、一つははたはたと羽ばたいて鳥になり、一つはこうこうと火を吹いてドラゴンになった。
そうして最後に人間が生まれた。
森に落ちた実がエルフと呼ばれるようになり、鉱山に落ちた実はドワーフと呼ばれるようになり、獣の横に落ちた実は獣人と呼ばれるようになった。
しばらくは平和な生活が続いた。
だが人間たちは協力して神さまが落とした種が成長した木――世界樹を切ってしまった。
魔物を生み出す木を魔の大樹として、枝を落としてついには根本から切ってしまったのだ。
そうして世界樹がなくなってしまった時、世界はまた瘴気に包まれた。
人は闇と共に歩むことはできなかった。
別の世界から瘴気を払う巫女を呼び出した。
そうして呼ばれたのが私たちの先祖であり、聖女と呼ばれた異世界の女性だった。
聖女は瘴気を払ったが、世界樹がなければまた瘴気はわいてくることを世界に訴えた。聖女は癒しの力で世界樹の切り株に魔法をかけた。そしてひょこりと新たな双葉が芽生えた。
それ以来、聖女の子孫は癒しの一族と呼ばれ、世界樹の若木の成長を見守っているのだ。
聖女さまがなくなり、また人々が瘴気に苦しむこととなった頃、癒しの一族が祈りを捧げると雨が降った。
その雨は瘴気を洗い流した。
瘴気を払う雨は、世界樹の成長を喜ぶ神の思し召しだと言われている。
そうだね、だからちゃんと祈りの踊りの練習をするんだよ。
聖女さま? いつも広場で聖女さまの像にお祈りしてるだろう、あの方だよ。
さあ、早く眠って。明日もたくさんお話してあげようね。
おやすみ 良い夢を
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