第2話 薔薇の魔法少女
ボロボロになったビル群がさらに朽ちてただの残骸になった頃、チャイナ服を着た少女がそこに降り立った。
少女の足がふわりと文明の残りかすにふれた途端、まるで魔法のようにそこから一帯が緑に覆われた。
『リン、そのまま次の区域に向かってくれ』
「はいはい」
通信機から流れる声に気だるげな返事をした少女――リンは、てくてくとゆっくり歩いていく。
昔、人々がいたところ、そしてこれから人がくるところ。何だか感慨深いと、リンはあたりを見渡す。
何やらリンが生まれる前にあった争いだか災害だか、それ以前のデータやなくなり文明は一度滅びかけたという。しかしその地球全体へ起きた不幸は進化の予兆だったのかもしれない。
リンのようにほんの少し特殊な能力を持つ子供たちが生まれた。
リンは手の甲を見た。リンの手足には植物のような文様が生まれた頃から刻まれていた。
直接触れたものは分解されて、植物に変換される。
彼女が初めに分解し変換したのは、母親だった。
直後に隔離され、それ以来『魔法少女』という蔑称をつけられて働いている。
『どうした? 考え事か?』
「そうですね。進路について考えてました」
ボロボロになった人間社会で、それでも人間に受け入れられることなく消費されてく私たち。可哀想に同期などは、むりやり魔法少女のていを保つために、絶望しながら魔法少女衣装を着せられてる少年もいる。
「なんでチャイナ服なんですか? ジャージでよくないですか?」
リンのその言葉に、通信先の司令官は言葉に詰まったようだった。
『未来から助けにくるのはチャイナ服を着た少女だっていう……』
「言い伝えですか?」
『昔の人気曲のノリを会議中に言ったら採用されちゃった……みんな酔ってたんだ』
どうしようもない大人たちだ。
母が生きていたらどういっただろう。
リンは母を思い出す。生まれたばかりの時の記憶。美しい巨大な一輪のバラの花。鮮烈な色はずっとリンの心に残っている。
その花の記憶だけがリンの思い出だ。
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