【書籍化】会社を辞めて不死身のフェニックスとのんびりスローライフ&ダンジョン配信生活!

菊池 快晴@書籍化進行中

スローライフを目指すのだ編

第1話 不死鳥、フェニックスとの出会い

「はっぴぃーばーすでー、俺……」


 俺――山城阿鳥やましろあとりは、公園で一人寂しく誕生日を祝っていた。

 コンビニで買ったケーキを見つめて、会社の不平不満を頭の中でぶちまける。

 残業終わりの深夜、当然ながら周囲には誰もいない。


「……25歳か」


 いそいそとスプーンを取り出して、夜風を感じながら一口。


「んまっ……」


 今の仕事を一言で表すならストレスだ。

 ありえない量の仕事に、もらえない残業代。

 パワハラ上司に命を削られる毎日。


 初めは良かった。優しい上司もいたし、頼れる同期も。

 ただ、前社長が事故で亡くなって、息子に成り代わった途端、経営がズサンになった。


 一人、また一人と辞めていく中、俺は踏ん切りがつかなかった。

 次の仕事が見つかるのかもわからない。それにまだ残っている人を見ると、全てを押し付ける気がして辞められなかった。


 上からは責められ、下は可哀想で、一体どうしたらいいのか……。


 そのとき、空に赤い光が見えた。

 物体が、炎のようにメラメラと揺らめいている。


 それはまるで蛇行運転を繰り返す飛行機のように、ゆっくりと落ちていく。

 

「なんだ? 何が燃えてる?」


 よく見るとそれは鳥だった。鳥が、燃えている。悲痛の鳴き声が、今の俺と重なって見えた。

 急いで追いかけると、公園の空き地に倒れ込んでいた。大きさは猫ぐらい、苦しそうに声をあげている。


 ……昔、資料で見たことがある。たしか、伝説の魔物、フェニックスだ。


「キュウン……」


 美しい羽毛、赤や黄色の光を放って、綺麗な炎を纏っている。

 常人なら近づくことすらできない熱波だが、幸い俺には何の問題もなかった。


「おい、大丈夫か?」


 数十年前、世界各地にダンジョンが現れた。それ以降、人類は魔法が何故か使えるようになった。

 俺が授かったスキルは【火耐性(極)】。


 初めは喜んだ。極というのは、レベルを表しているが、最上級のものだ。ありとあらゆる炎を無効化する。

 だが、攻撃ができるわけではない。

 初めは消防士を目指そうと思ったが、手から水を出せるやつもいる。ただ無効化できるだけでは、お荷物と変わらなかった。

 つまり俺のスキルは役立たずだったのだ。


 今やダンジョンの攻略は職業の一つで、素材やアイテムで一攫千金を得たやつだっている。


 基本的にダンジョン外にモンスターが出てくることはない。

 だが、極まれにこうやって外に飛び出すやつがいたり、何らかの理由で外で魔物が現れたりもする。


 理由はわからないが、危険とみなされたらもちろん討伐対象となる。


「伝説級が……なんで怪我してるんだ?」

「キュイッ!」


 羽根に触れようとすると、思い切り威嚇された。もしかすると、人間たちに追い回されたのだろうか。

 同じ火のスキルを持つものとして、なんだか切ない。


 助けたい、そんな気持ちで、声をかけ続ける。


「大丈夫だ。俺はお前を怖がらせたりなんてしない」


 ようやく気持ちが通じたのか、フェニックスは鋭い目を和ませる。再び羽根に触れると、一部が欠けていることに気づく。

 何らかの攻撃を受けて、羽根がズタズタになっている。だから飛行がままらなかったのか。

 

 鋭いスキルでも打ち込まれたのだろうか。とても苦しそうだ。

 モンスター病院もあるが、ここからじゃ距離がありすぎる。魔力が弱っていくのが、感じる。


 俺には傍にいてあげることしか……。


「……ごめんな」


 ゆっくり撫でていると、後ろから何か魔力を感じた。かなり強い、殺気の籠った魔力だ。

 驚いて振り返ると、そこにはとてつもなくでかいオークが立っていた。

 ありえない、なぜ公園に?


 慌てて離れようとしたが、思いとどまる。俺がここから離れたらフェニックスが無残にも殺されてしまう。

 ……たとえ助からなくても、そんな死に方だけはさせたくない。


「くそ……やってやる」

 

 戦闘については、昔何度か学校で教わったことがある。

 大したことはできないが、時間を稼げば助けがくるかもしれない。


 オークの叫び声で公園が震える。覚悟を決めて、胸ポケットにあった万年筆を取り出す。


「でかぶつが、かかってこい!」

「グガアアアアアアアアアア!!!! ……ガ……ガ……」


 しかしとてつもない赤い光が飛び出し、それがオークにぶち当たると、どでかい穴が開いた。

 オークは地面に倒れ込み地震のように震わせた。


 驚いたことに、それを放ったのはフェニックスだった。

 身体中に纏った炎を打ち出したのか、今はただの真っ白い鳥になっている。


「俺を助けてくれたのか?」

「キュウ……」


 駆け寄って、フェニックスを抱き抱える、だが、俺の腕で亡くなった。


 本当にできることはなかったのか? くそ……。


 と、思っていたら――フェニックスは、徐々に炎を纏いはじめる。

 小さな火が、やがて全身を覆う。


 そういえば、聞いたことがある。

 フェニックスは――死ぬたびに強くなる。そして、不死身だと。


「キュー!」

 

 元気になったフェニックスは、バサバサと羽根を広げた。まるで熱い抱擁のように、俺の肩に乗る。


「心配して損したぜ……」

「キュウキュウッ!」


 まるでキスをしているかのように、くちばしで俺の頬をつんつん。

 何度も、つんつん。

 

 まるで、『すきすき!』と言っているかのようだった。


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 初めての現代ファンタジーです。

 配信×ペット×おじさん? をしてみたくて書きはじめました。

 右も左もわかりませんが、見て頂けるとありがたいです。


 ぜひとも、フォロー&☆で応援をお願いします!


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 『大事なお知らせ』

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 タイトルは【七日後、君は死ぬ。だから僕は全力で君を描く。】です。

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