第6話 第6話 世界樹攻略②…と思いきや休戦

「お、お兄ちゃん…。ちょっと、わがまま言っても…、いい、かな?」

「なに?したいことでもあるの?」


72柱の序列7、火炎侯爵アモンとの交戦を見事に乗り越えた僕とアオイは2階層に到着したところだった。


「ねぇ、そろそろご飯にしない?」

「いいけど…。また奇襲されるかもしれないよ?」

「こんな綺麗な場所に来れたんだしさ、今日はここに泊まって、攻略はまた明日からにしよ」

「うん。でも、もし敵が来たり、強いモンスターに襲われそうになったら呼んでね」

「ふふっ。お兄ちゃんは過保護だなぁ」

「だって、アオイが僕について来たんだから守ってあげないとだし…」

「そうやってお兄ちゃんぶるお兄ちゃんも私は嫌いじゃないな、私」

「き、嫌いじゃないって、どういうこと?」

「そんなことはいいから、お兄ちゃんもキャンプの準備して」

「キャンプの準備って、何をするの?」

「そうだな…。キャンプらしいことがしたいし…そうだ、カレーライスを作ろうよ」

「カレーライスって、あの異世界人が伝えたキャンプの定番って呼ばれてるやつ?」

「そう。お兄ちゃんはカレーライス食べたことある?」

「僕は食べたことも見たこともないんだよ…」

「そっか。なら、私が教えてあげる」



「まずは、お米を炊くの」

「米って、異世界人が好んで食べてる穀物?」

「うん。洗って水を変えてを何回か繰り返して」

「うん」



「洗えたよ」

「じゃあ、これを鍋に入れて、お米より少し上くらいに水面が来るまで水を入れて弱火で1時間くらい放置するの」


「これでいい?」

「うん。次は野菜を切ろう」

「野菜って何を使うの?カボチャとか?」

「カボチャもいいかもしれないけど、ニンジンとタマネギ、ジャガイモも入れるとおいしい」

「え!?根菜ばっかり入れるの?」

「うん。でも、これがすっごくおいしいの」

「だいたいどれくらい使うの?」

「ニンジンは1本まるまるで、タマネギは半玉、ジャガイモは5個くらい、かな?」

「…お米、もうちょっと多く炊いた方がよかったかな?」

「別に私が食べる量制限するだけだし…」

「で、でも、アオイは成長期だし、僕はアオイに食べてほしいな」

「わ、私を太らせてどうするつもり!?」

「別にそういうつもりは…フフッ、ハハハッ」

「どうしたの?」

「いや、急に笑いがこみ上げてきて。アイツらを封印して、早いとこ世界中のみんながこうやって笑いあえる世界がくるといいね」

「…うん!」


「お兄ちゃん、野菜は切ったことある?」

「ない…、けど」

「なら、私と一緒に切ろうよ」

「いいけど…」

「包丁と野菜をもって」

「うん」

「手、握るよ」

「うん。…え?」

「お兄ちゃん、手あったかいね」

「ちょ、ちょっと、人がいなくてもそうやって意識させるようなこと言われると恥ずかしいんだけど…」

「恥ずかしいって言って、一緒に切らなくてケガしても知らないよ」

「わかったよ。でも、恥ずかしいから意識させるようなことは言わないでね」



「お、終わった…」

「お兄ちゃん、顔真っ赤だよ。ついでに言うと耳まで…」

「い、言われると余計恥ずかしいから!!あと、無意識だったかもしれないけど、結構意識しちゃうようなこと言ってたからね!?」

「お兄ちゃんも男の子だね」

「きゅ、急にからかわないでよ」

「ごめんね。恥ずかしがるお兄ちゃんが可愛くてつい」

「そ、それで、スパイスは?」

「スパイスならオデヌヘイムでもらって来たよ。」

「用意周到だね…。野菜はどうするの?」

「まず、ニンジンを茹でて、その間にタマネギを炒めて、ジャガイモも鍋に入れて、最後にタマネギを入れるの。」

「それから?」

「スパイスとブタニクを入れて煮込むんだけど、ここに時間と手間が…」

「ちょっと待って!?ブタニクを入れるって?あのオークの肉を?」

「異世界の人たちはみんな入れて食べてたみたいだよ」

「そういうものなのか。…なら入れよう」



「煮込んでる間はどうするの?」

「この階層は湖がきれいだから、あの周りを散歩したいな」

「いいけど、鍋の中は混ぜたりしなくていいの?」

「大丈夫だよ。混ぜなくても焦げないように魔法がかけられてる鍋を選んだから」

「まさか、これもオデヌヘイムからもらって来たの?」

「そうだよ」

「こんな物まで…」


その瞬間、空気が変わった。巨大な魔力を持った何者かが来てる…。


「そこの君たち、カップル?」

「どっかに非リアいないかな~」


「お、お前たちも72柱か!?」

「おいおい、今は少しイタズラしに来ただけだ。そう警戒すんなよ」

「イタズラ?まさか、この階層を破壊するつもりか?」

「こんなにいいデートスポットを俺が破壊するだって?冗談言うなよ。俺は72柱の序列32にして『七つの大罪』、[色欲]担当のアスモデウス様だぜ?まあ、今回のイタズラは俺はあんまり関係ないんだが」

「おい、それはどういうことだ?」


すると、もう1人の72柱の魔人らしき陰湿な男が近づいてきた。


「今回のイタズラの主犯は俺っすよ」

「お、お前は?」

「敵意が抜け切ってないっすね。俺は72柱の序列16、ゼパルっす。ルシファー様が千里眼で見てるものを見せてくれたもんっすから、ついつい俺の脳が疼いちまったっすよ。お前、今から見える世界が大幅に変わるっすよ。さあ、かつてのお前と決別する準備をするっす。準備が終わったら合図をくれっす」

「お前が何を言いたいかが僕には理解できない。さあ、どこからでもかかってこい!」

「さあ、お前の色欲に、今俺が種を蒔いてやろう。『恋の種ジャーリヘット・フルー』」

「今、何を…。なっ!?」


その時、確かに僕に見える世界は変わった。何故!?分からない…。ただ、そこにはいつものアオイが腕に抱き着いているはずなのに…。そこにいるアオイは、いつもより可愛らしく見え、何よりも愛おしく感じられた。ダメだ、きっとさっきからかわれた所為だ、きっとこれは違う、深呼吸、深呼吸…。何だろう、この胸のモヤモヤは…?


「どうっすか?見える世界、変わったっすか?」

「べ、別に何か変わってははないぞ」

「その様子だと、変わったみたいっすね。まあ、これから今までよりも楽しい人生を送ってくれっす。ただし、俺たちと戦うまでの話っすけど」

「いいよ、その時は全力で相手してやる」



「お兄ちゃん、何か変わった?」

「い、いや、別にそう対して変わったとは感じないけど…」

「やっぱり。お兄ちゃん、顔真っ赤だよ。明日も休む?」

「か、顔が近いよ。おsれに僕は何ともないから明日はまた攻略に戻るよ」

「本当にそれでいいの?」

「本当は、僕だってもっとアオイとこんな風にしていたいけど、世界中の人たちが吸血連合の封印を待っているから、僕たちは進まなくちゃいけないんだ」

「そっか。なら、一つ約束してほしいことがあるな」

「なに?」

「もし、ここみたいないい景色の場所がまだ他にあったら、そこでちゃんと休憩にしてね」

「…いいよ。僕の可愛いアオイの頼みだから、それくらいは全然オッケーだよ。」

「お兄ちゃん、今のってもしかしなくても仕返し!?さっき私が意識させるようなこと言ったから!?」

「べ、別にそういうつもりじゃなかったし」

「絶対わざとじゃん!!」

「そ、そういうところも可愛い」

「これ以上からかわないで!!おかしくなっちゃいそう…」

「え?何だって?」

「べ、別に何でもない!!」


何故僕はアオイをからかうようなことを言っていたんだろう?まあいっか。


続く 次回こそは世界樹攻略再開しよう。

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