10/12
「リリイ・シュシュのすべて」という映画を観た。
ツイッター(X)でも感想を言ったけど、まだ消化不良な部分があるので、ここに記す。
2001年の映画で、主演子役として市原隼人も出てる邦画。ざっくり一言で表すなら、誰も救われない映画である。
例によって、がっつりネタバレしていくのでご注意を。
*****
あらすじとしては、中学生一年から二年までの出来事を追っていく物語。いじめられっ子で気弱な主人公「
共通してるのは「リリイ・シュシュという歌手が好きなこと」だけ。そして、蓮見の秘密の趣味がリリイ・シュシュのファンサイトに入り浸ってリリイへの愛を書き込むこと。
まず最初に言わせてもらうならば、「映画が長い」ということに尽きる。
二時間半ある。
正直なところ冗長と言わざるを得ない。序盤から一時間くらい、普通の(過度なイジメの描写はあれど)中学生活を淡々と映していて、カットできるところは多かったのでは……と思ってしまった。特別なことは何もないちょっとヤンチャだけど普通の中学生を印象付けるためなのか、中盤から後半にかけての落差を感じてもらうための助走なのかわからないけど、少しアクビが出てしまった。
けれど、その中盤から後半からの悪意の畳み掛け方はエグかった。
いじめっ子の星野が家庭環境の悪化により、さらに非行がエスカレートして校内暴力や同学年の女子を脅して売春斡旋、レイプ教唆などなど酷すぎる不良グループのボスというカスに変貌。けれど、一人のときに広大な畑の真ん中でリリイ・シュシュを聴きながら、埋まらない心の寂しさや苛立ちに声が枯れるまで悲痛に叫び続けるシーンなんかも挟まれる。
主人公の蓮見も、元々は友人関係だった星野の舎弟みたいな立場に収まってしまい、やりたくもない犯罪に手を貸さざる得ないような情けない自分に変わってしまってる。売春斡旋にも、同級生レイプにも間接的に関わってしまい、不甲斐なさとか現状を打破できない無力感とかをリリイ・シュシュを聴くことで無理やり蓋をしているような鬱屈した日々のシーンが延々と続く。
結局、オチとしては、ある事件によって星野は中学二年で死ぬ。というか、殺される。
かといって、蓮見がそれによって人生上向きになったりとかはせず、むしろ今までの犯罪行為や色々なトラウマで、悔恨や自責の念に押し潰されたまま無気力少年として担任の先生に成績ガタ落ち問題児扱いされて終わり。という、後味の悪いオチである。
気弱な蓮見と不良グループ率いる星野では同じ中学生でも、様々なものを経験するスピードがどんどん乖離していって別の存在になっていく焦燥感も観ていてツラかったし、カモにされた同級生の女子もどんどんスレていって助けを求められても、助けられないところまで落ちてしまったことも知っている無力感もキツかった。
あまりに救いもなく閉塞した映画だけれども、それを中和するかのようにドビュッシーの美しいクラシックが全編に散りばめられていて、あたかも繊細なガラス細工のように芸術的な雰囲気にしてるのも歪で面白かった。
この映画を通して、何を伝えたかったのか僕にはわからなかった。繰り返すようだが、残ったのは後味の悪さと、暗黒青春の陰鬱さや虚無感、リリイ・シュシュの歌が物語の中心にあったということだけ。
これを人に勧められるかと問われれば、勧められないと思う。嫌な気持ちになりたい人は見てもいい映画かもしれない。刺さる人にはめっちゃ刺さるという評判も、なんとなくわかる気はする。
子供社会の病みと闇、あまりに呆気ない命の儚さ、それをドビュッシーの美しい旋律で上手くごまかされながら観終わった映画だった。でも、リリイ・シュシュの歌はSalyuが歌ってるので、めっちゃ良い曲。沁みます。
おわり
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