第28話カフェ、読書、彼女とふたりで

私はいつものようにカフェで一息ついていた。外は小雨が降っており、窓のガラスには雨滴がたまっていた。カフェの中は落ち着いた雰囲気で、柔らかい音楽が流れていた。私はゆっくりとホットチョコレートを飲みながら、読書を楽しんでいた。


すると、隣の席に座っていた彼女が目に入った。彼女は美しい髪を後ろで束ねており、本を読みながら真剣な表情をしていた。彼女とは何度か顔を合わせたことがあった。お互いにこのカフェの常連であることを認識してはいたが会話をしたことはなかった。


ふと、思い切って話しかけることにした。

「すみません、その本は面白いですか?」


彼女は微笑んで答えた。

「はい、とても面白いです。この著者は私のお気に入りなんです」


私たちの会話はそこから始まり、その日からどんどん親密になっていった。カフェでの読書が楽しみになり、彼女との会話が私の日常の中で特別なひとときとなっていた。


ある日、彼女が私にある提案をした。「一緒に、美術館に行きませんか?先日新しく開館したところがあるのですが、一緒に行ってみたいと思いまして」私は喜んで承諾し、週末に美術館へ行くことになった。


美術館では、彼女が熱心に絵画を観察している姿に、私はますます惹かれていった。彼女と一緒に過ごす時間は私にとってかけがえのないものであり、心の中で彼女への想いが強くなっていくのを感じていた。


美術館を出た後、私たちは公園に向かった。木々の間から差し込む陽光が、小雨が消え去ったあとの澄んだ空気にふんわりと光を与えていた。公園のベンチに腰掛けながら、彼女との会話に花を咲かせていた。私たちはお互いの趣味や好きなものについて語り合い、ときおり笑い声が木漏れ日の中に響いていた。


次第に、私たちの会話はより深い内容へと移っていった。人生の目標や夢、悩みなど、これまで語り合ったことのないことまで打ち明け合い、互いの心をさらけ出す瞬間が訪れた。彼女が話すたびに、私は彼女への想いが一層深まっていくことを感じた。心の奥底で、告白する勇気を持とうと、自分に言い聞かせていた。


日が傾くころ、公園のベンチで静かな時間が流れていた。彼女は少し疲れた様子で、目を閉じて深呼吸をしていた。その無防備な姿に、私は彼女への想いを伝えずにはいられなくなり、勇気を振り絞って告白することに決めた。


「実は、あなたと過ごす時間がとても大切で、あなたのことが好きになりました」と、私は小さな声で告げた。彼女は目を開け、驚いた表情を浮かべながら私を見つめた。その瞳には、私が期待していたものとは異なる感情が宿っていたが、言葉はまだ出てこなかった。


私は続けた。「もちろん、無理に答える必要はありません。ただ、私の気持ちを伝えたかっただけです」


彼女は少しの間沈黙し、その後微笑んで答えた。「私も、あなたと一緒にいる時間が大好きで、気になっていました。こんなに素晴らしい想いを共有できるなんて、夢みたいです」


私たちの間に新たな絆が生まれ、これまで以上に深い関係が築かれ始めた瞬間だった。二人の心の繋がりは、まるで互いに寄り添っている二つの樹木が根で結ばれているかのように、揺るぎないものになっていくだろう。


季節が巡り、またカフェで一息ついている私たち。

外は穏やかな日差しが降り注いでいた。空は広く、青く、まるで心まで晴れ渡らせてくれるかのような美しい光景が広がっていた。太陽の光は木々の葉や花びらを照らし、緑や色とりどりの花々が生き生きと輝いていた。そして、その温かな光はカフェの中にも届き、私たちの心を明るく包み込んでくれた。


私は彼女の手を握りながら、これからもずっと彼女と一緒に過ごす未来を夢見ていた。そして、私たちは互いの心を通わせるたびに、新しい愛の物語が始まることを確信していた。

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