第25話椎奈と美緒、傘を忘れても

雨の日、高校生の椎奈は、傘を忘れたために教室でこのまま雨が止むのを待つか諦めて傘を差さずに帰るか決めかねていた。

彼女は人見知りであり、友達が少ないために孤独を感じていた。

友達がいれば雨に濡れながら帰るのも楽しいだろうなと椎奈の心は沈んでいた。


「雨、大変ね。傘を持っていないの?」


椎奈と同じクラスの美緒が声を掛けてきた。美緒は椎奈と反対に他人と親しくなるのが得意で、積極的な性格の持ち主だった。


戸惑う椎奈をよそに美緒は先生の手伝いをしていて帰るのが遅くなったこと、お気に入りの傘を持ってきたこと。その傘は大きいから十分二人が濡れずに帰れることを話し始めた。


「だから、一緒に帰らない?」


椎奈は、美緒の明るい笑顔を前にうなずくしかなかった。


二人でひとつの傘を差して歩いた。美緒は音楽が好きで弟がいることを話し始めた。楽しそうに話をする美緒につられて椎奈は読書が好きで、一人っ子だということ友達が少ないこと美緒に一緒に帰らないかと誘われて嬉しかったことを伝えた。椎奈は、美緒の明るさに引き込まれ、少しずつ心を開いていった。


二人は連絡先を交換し、お互いの存在を大切に思うようになった。椎奈は美緒と過ごす時間を楽しみにし、美緒は椎奈の心の内側を知ることに興味を持った。


そしてまた雨の日、美緒は椎奈の家を訪れ、二人で雨の音を聞きながらお茶を飲んだ。椎奈は美緒に向かって、自分の孤独感を打ち明けた。美緒は椎奈の言葉に、彼女を抱きしめて伝えた。


「椎奈、これからは私がいるから、大丈夫だよ」

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