第9話出会いは、どこにでもある。疲れた心に光を灯すコンビニ

ある日の夜、疲れ果てた会社員の美香は、帰り道にあるコンビニに寄って飲み物を買うことにした。


店内に入ると、カウンターに立つ店員の姿が目に飛び込んだ。その店員は、美香が来るまでスマホで遊んでいたが、美香がカウンターに近づくと、一礼して笑顔で挨拶をした。


美香は彼女の態度にほっとした。普段、疲れた体と心を抱えて帰宅するのが辛いことが多かったが、彼女の親切な対応が少し救いになった。


美香は冷蔵庫から飲み物を取り出すと、カウンターに置いていた財布からお金を出して支払いをした。その時、美香は店員の手元に腕時計があるのに気がついた。


「それ、素敵な腕時計ですね。どこのブランドですか?」と美香が尋ねると、店員はにっこりと笑って答えた。


「実はこれ、私が作ったものなんです。趣味で時計作りをしているんですよ。」


美香は驚いた。こんな普通のコンビニ店員が、自分で腕時計を作るなんて思いもよらなかった。


「すごいですね。私も趣味はありますが、仕事の疲れで最近は全然できていなくて……」と美香が言うと、店員は微笑んで答えた。


「仕事の疲れはつらいですよね。私もコンビニの仕事は体力的にはきついですが、お客様が笑顔で帰っていってくれると、その疲れも吹っ飛びます。」


美香は彼女の言葉に、何か心が温かくなるものを感じた。そして、その後もしばらく店員と話をしてから、お互いに「また来ますね」と言い合って、店を後にした。


その日以来、美香はそのコンビニに通うようになった。彼女は、仕事で疲れた時にはいつもその店員の元へ足を運び、彼女と話をすることで、少し心が休まることができた。


そして、ある日の夜、美香がコンビニに行くと、店員がいつもよりも少し元気がないように見えた。美香は心配になり、店員に声をかけた。


「お疲れ様です。何かあったんですか?」


店員は少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに笑顔を取り戻して答えた。


「いえ、大丈夫です。ただ、最近仕事が忙しくて疲れがたまっているだけです。」


美香は彼女の様子が気になって、しばらく話を続けた。そして、話の中で、彼女が趣味で時計作りをしていることを思い出した。


「そういえば、前に言っていた時計作り、最近はできていますか?」


店員は微笑んで答えた。


「はい、最近は時間が取れないこともありますが、できるだけ時間を作って作っています。」


美香は思いついたように言葉を続けた。


「それなら、私も趣味でカスタムドールを作っているので、手先は器用な方なんです。お手伝いさせてくれませんか?」


店員は驚いたような表情を浮かべたが、すぐに嬉しそうな笑顔に変わった。


「本当ですか?ありがとうございます!」


美香はその後、休みの日には彼女と一緒に時計を作るようになった。


そして、ある日、彼女たちは完成した時計を抱えて、コンビニの前でお互いに見つめ合った。


「これで私たちの初めての作品が完成しましたね。」


店員は嬉しそうに言い、美香も笑顔で答えた。


「私たちの初めて作品ですね。でも、自己紹介がまだでしたね。私は美香です。あなたの名前は?」

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