第6話美月と結衣、一歩ずつ
曇り空が続く肌寒い日々だったが、美月と結衣は放課後の時間を大切に過ごしていた。美月は、控えめで品のある美しさを持ち、ショートボブの髪型が彼女の大人っぽさを引き立てていた。一方、結衣は明るく活発な性格で、長い髪を後ろでくくり、表情豊かで笑顔が素敵だった。
美月は家庭の事情で厳しい環境で育ち、親からの期待に応えられず、いつも無口で人との関わりを避けるような態度を取っていた。それに気付いた結衣は、美月に声をかけて友達になった。結衣は美月の内に秘めた才能を見抜いていたのだ。
結衣自身も家庭の問題を抱えていた。母親がいないため、父親から家事や弟の世話を任されていた。しかし彼女は、明るく振る舞い、自分の悩みを周囲には見せなかった。
二人は互いの悩みを打ち明け合い、深い絆で結ばれていった。美月は結衣の明るさに引かれ、徐々に心を開くようになった。一方、結衣は美月の落ち着いた性格に安らぎを感じ、心の支えとして彼女を必要としていた。
放課後、美月と結衣は図書館で過ごすことが多かった。そこで美月は、結衣に本の世界を紹介した。結衣は本を通じて、美月の豊かな感性に触れることができた。また、結衣は料理を通して美月に癒しを提供し、二人でお菓子作りを楽しんだ。
二人は図書館の隅にある小さな窓際の席で向かい合って座り、外から差し込む柔らかな光が美月の顔を照らしていた。美月は結衣の瞳を見つめた。
彼女の心は、鼓動が速くなり、胸が熱くなるのを感じた。
美月はまだ気づいていなかったが、結衣に対する友情以上の感情が、じわじわと芽生え始めていた。
美月と結衣は図書館で一緒に読書をしていた。美月は詩集を手に取り、その中の一篇を結衣に紹介した。詩の中には、淡く切ない恋心が綴られており、美月の心にも響いていた。結衣は詩を読み終えると、美月に柔らかい表情を見せた。
数日後、放課後に美月と結衣は公園で過ごしていた。結衣は美月に向かって、「最近、君と一緒にいると、何だか心が軽くなるんだ。君は私にとって大切な存在だよ」と告げた。美月は結衣の言葉に照れながらも、嬉しそうに微笑んだ。
その瞬間、美月は結衣に対する気持ちが友達以上のものに変わっていることを確信した。しかし、彼女は戸惑いを感じつつも、その気持ちを結衣に伝える勇気がまだ湧いてこなかった。
ある日、二人はいつものように図書館で過ごしていた。美月は結衣がお気に入りの小説を読んでいる間、自分の心の中で葛藤していた。結衣に対する気持ちを伝えるべきか、それともこのまま友達として過ごすべきか、彼女は決断を迫られていた。
そしてついに、美月は自分の気持ちを結衣に伝える決心をした。彼女は図書館で結衣に近づき、心を込めて言葉を選んだ。「結衣、実は私…あの日の公園での会話から、ずっと君のことが気になっていて…友達以上に好きだと思うんだ。」美月は緊張しながら告白した。
結衣は、美月の瞳に映る自分の姿を見て、彼女が抱える不安や期待を感じ取った。彼女は自分の心を整理しようと、深呼吸をして、美月に向かってゆっくりと言葉を紡いだ。「美月、私も君のことが大好きだよ。友達以上の気持ちを持っているかどうかは、まだわからないけど…でも、これからも一緒にいたいし、お互いの気持ちを大切にしていこうね。」
美月は、結衣の言葉に胸が締め付けられるような思いがした。それは、結衣への想いが叶った喜びと、まだ確かではない不安が同居する複雑な感情だった。しかし、彼女は結衣の言葉を大切に受け止め、笑顔で頷いた。「うん、ありがとう。これからもよろしくね。」
二人は互いに手を取り合った。空はまだ曇りがちだったが、美月と結衣の心は、新しい展開に向かって少しずつ晴れやかになっていた。彼女たちの関係は、これからも深まり続けることだろう。一歩ずつ、お互いの気持ちを確かめながら、二人は未来へと歩み始めた。
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