第46話 ベルファの挑戦
ドンドンドン! ドンドンドン!
…………な、何だ? この音は…………?
「目を覚ますのよナリユキ! 起きろってば!」
ベルファの声だ。ドアの外から聞こえてくる。オレは慌てて、その場で跳び起きた。さっきの騒音は、ドアを叩く音だ。
「ふあ~、何の用だよ。今日は休みのハズじゃないのか?」
オレは、あくびをしながらドアを開けた。見ると、ベルファが鬼の形相でオレを睨んでいた……一気に目が覚めた。
「あたしは今日、大事な用ができたのよ! 奴隷のあんたも、あたしについて来なさい! わかったわね!?」
「な、何だよ、大事な用って……」
「口答えするな! さっさとついて来るのよ!」
完全に取り付くシマもない。オレは諦めて、ベルファについて行く事にした。どこへ行く気だ?
ベルファとオレは、王都の繁華街を歩いて行く。通りのあちこちに店が立ち並び、まだ朝だというのに賑やかだ。
そして、その中心部に大きな建物があった。冒険者ギルドと同じくらいデカい。ベルファは、その入口で立ち止まった。
「ベルファ、この建物に用があるのか? この店は何だ?」
「ここは、この国で唯のカジノよ! くっくっくっ……今日こそは、今までの負け分を全部取り返してやるわ!」
「ええええっ!?」
大事な用って何かと思ったら、ギャンブルかよ!? しかも、今までの負け分を取り返すって、完全にギャンブル依存症の発言だよ! アホのオレでもわかるよ!
「さあ、行くわよナリユキ! あんたは、しっかりあたしのサポートをするのよ!」
ベルファはそう言って、敢然と建物の中へ入って行く。オレは慌てて後を追ったが、中を見て絶句した。
内部は、豪華な飾り付けが施されていた。床には、赤い絨毯が敷き詰められ、ルーレットやスロットマシン、トランプゲーム用の卓などが整然と並んでいた……異世界にも、こんな娯楽施設があるのか……。
「よし、この台がいいわね」
ベルファは、1台のスロットマシンの前で立ち止まり、懐から財布を取り出した。凄いな、こんなマシンを作る技術があったとは…………。
ベルファは財布から銅貨を取り出して、次々とマシンに投入していく。慣れた手つきで…………怖いよ。
「レディー……ゴー!」
自らかけ声を発して、スロットのレバーを勢いよく下げるベルファ。
やべえ! ベルファの瞳の奥にメラメラと炎が燃えてるよ!
「ほら、これ! 両替してきて! パクッたら殺すわよ!?」
ベルファが突然、オレに金貨を差し出してきた。これじゃ、完全にパシリだ。やれやれ…………。
オレは金貨を持ってカウンターへ行き、ディーラーに銅貨100枚と交換してもらう。枚数が多いので、カウンターの脇に置いてあったカゴの中へ入れて運び始めた。
まだ午前中だというのに、結構客が多いな……よし、あの柱を曲がれば、ベルファがいるハズだ。
曲がろうとした、その瞬間だった。
ガツン!
突然、柱の陰から誰かが出て来て、オレにぶつかった。
ガシャガシャガシャンッ!
銅貨の山がカゴの中で激しい音を立てる。あ、危ねえ……。
もう少しで、転倒して銅貨をバラまくところだったぜ……。
「何じゃ、おぬし! しっかり前を見んか!」
ぶつかった相手に怒鳴られた。「それはアンタも同じだろ!」と言い返そうとして、相手の姿を見た途端、ハッとした。
茶髪だけど白髪交じりの初老の男。服装はややみすぼらしいが、鼻の下とあごの下に生えたヒゲだけは妙に立派だ。そして、この顔はどこかで見た事があるような気がする……。
この男…………誰だ?
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