第40話 新たなる旅立ち
突然のユリカの提案に、ベルファは困惑していた。
「あ、あたしがあんたたちの仲間に…………? そんなバカな…………」
「私にはわかるの。ベルファ、ホントは仲間が欲しいんでしょ? 強がってもムダムダ~♪ 素直になりなよ~?」
ユリカの顔がイヤらしく歪む。さすがのベルファも引き気味になる。
その時だった。
「う、う~ん……ボ、ボクはいったい…………?」
気を失っていたエアリス目を覚ました。ゆっくりと体を起こす。
「さあ、ベルファ! エアリスに、ちゃんとお礼を言わないと、ダメだよ~?」
今や、場の空気は完全にユリカが支配していた。ユリカ……恐ろしい子!
「エ、エアリス…………あんたのおかげで、あたしは助かったのよ。本当に……あ、ありがとう…………」
真っ赤になって俯くベルファ。しかし、エアリスは全く気にする様子は無く、
「何言ってんだよ! そんなの当たり前じゃないか! ボクたちは仲間なんだから!」
と、清々しく言ってのけた。カッコつけてVサインまでしてみせる。
その様子を見て、ユリカは跳び上がって喜んだ。
「やったね! ベルファ! エアリスも認めてくれたよ! これで私たち4人は仲間だよ~! ズッ友だよ~!」
「そうだね! ユリカもナリユキも、良いヤツだから仲間だよ!」
すっかり意気投合してしまったユリカとエアリス。あの、オレはまだ何も発言してないんですけど…………まあいいか。
「そういう事で、いいのかベルファ?」
オレは、あらためてベルファを見た。ベルファはずっと顔を赤く染めたままだった。こうして見ると、意外とかわいいな。
「ま、まあ…………エアリスとユリカは仲間にしてあげてもいいわ…………でも特別なんだからね!」
ん?
「あれっ? オ、オレは?」
「あんたは、今日からあたしの奴隷になるのよ! あたしのために働きなさい! わかったわね!?」
「ちょ、ちょっと待て! なんでオレだけそんな理不尽な扱いなの!?」
反論するオレを無視して、ユリカもベルファに乗って来る。
「あっ! それグッドアイデア! みんなでナリユキ君を奴隷にしよう!」
「ユ、ユリカ!? お前、オレの事を救世主だって言ってたじゃねえか! 話が全然違うぞ! 飛んだ手のひらクルーだよ!」
「奴隷、いいね! ナリユキには、ボクの剣を磨いてもらおう!」
ダメだ。トドメにエアリスまで乗っかって来てしまった…………3対1でオレの負け。完全な敗北だった。
そして、新しく生まれ変わったパーティー『チームナリユキ』は、西の塔を後にした。ユリカは残されていた巨大な剣を大事そうに抱え、オレは手持ちのリュックに加えてエアリスを背負ってトボトボと力無く歩いていた。
エアリス、お前は全快したハズだろ……?
ベルファは、機嫌良く鼻歌を歌っていた……コイツは余計な事を言いやがって!
今回の一件は、正直にギルドへ報告するという結論になった。
『秘密兵器が巨大な石像で、魔王軍の四天王が関わっていた』と話しても信じてもらえないかも知れないが、今後に備えて打てる手は全て打っておくべきだろう。
人間サイドで情報を共有しておけば、対策も立てやすい。王室へ相談に行けば、エルディア姫が何か案を出してくれるかも知れない。
しかし……オレは溜め息を吐いた。
エルディア姫に頼まれて、忍者になったところまでは良かったが……今や3人の女王様に仕える下僕にまで成り下がってしまうとは…………。
だけど、オレは負けない! 必ずやエルディア姫と結婚して、この異世界で楽しくハッピーな日々を過ごしてみせる!
オレは、夕焼けで赤く染まる空へ向かって叫んだ。
「オレたちの冒険は…………これからだ!」
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