六杯目 神様嘘つかない。

 スマホで拡大してみようか? 現代の富山県の地図、五箇山周辺ね。便利なもんだね。


 まず相倉集落には「相倉地主あいくらじぬし神社」がある。創建が何時か記録はないらしいが、地主神社の主祭神は大国主命おおくぬしのみことだ。土師氏の主神でしょう?


 少し東に動くと、「愛宕あたご社」がある。祭神は推定だが、「愛宕神あたごのかみ」と「火之迦具土神ひのかぐつちのかみ」。愛宕神は火防の神、火之迦具土神は火の神だ。鍛冶師の信仰を集めた神様だ。


 俺の勝手な妄想だけどさ。火之迦具土神ってのは生まれたときに母親の伊耶那美神いざなみのみことを焼き殺してしまうんだが、国生みという天地創造の文脈で考えると火山とか溶岩のイメージじゃないのかねえ。山の持つ災害属性だもんだから、伊邪那岐神いざなぎのみことに殺されてしまった。


 鍛冶師が戴く神様となれば、土師氏の守り神としてピッタリでしょ。


 もうちょっと東に行くと「神明社しんめいしゃ」だ。主祭神は堂々の「天照大神あまてらすおおみかみ」であることは言うまでもない。土師氏であろうと、大和朝廷への帰順姿勢は示さないとね。


 神明社の北方には「春日社」がある。祭神は「春日神かすがのかみ」。春日大社から勧請かんじょうを受けた神様だね。春日大社といえば、ご存じ藤原氏の氏社。藤原氏に放逐された菅原氏としては敵筋ではあるのだが、一族皆殺しは許してくれた訳でこれまた恭順の意を表している感じだな。


 さらに東には「かまど神社」。名称通りこれも鍛冶師や炭焼が祀る神様と見て良いだろう。「竈門かまど」と書けばアニメファンが喜ぶんだろうがね。「竈門神社」は太宰府鎮護の神と言われているそうだ。天神様とは縁が深そうじゃないか?

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