変身
シン仮面ライダーを観た。石ノ森イズムが濃い作品だった。
今作の本郷の性格は、これは石ノ森章太郎が主人公にしそうだな、と思えるような男で、優しく優秀でどこまでも優しい男だった。
それから、シン仮面ライダーはとても上手い作品だとも思った。映画という短い時間の中でキャラクターの特徴を出す手法、アクションにドラマ性を盛り込む語り口。どれをとっても唸らされる物であった。
それでも、私は楽しめなかった。たぶん、監督とのライダー感が合わなかった。
私にとっての仮面ライダーとは、平成初期ライダーの事である。ドラマ性を出したそれを観て育った私には、シン仮面ライダーのドラマ性の薄さについていけなかった。
もっと端的に言えば、『変身』というライダーのアイコンに向き合えていないのではないかと感じてしまった。
『変身』の再解釈こそ平成ライダーの挑戦の歴史でもある。ファイズが顕著だが、『変身』とはただ身体が仮面ライダーになる事ではない。それは魂の慟哭である。それは決意の表明である。それは運命に抗う人の叫びである。
『BLACKSUN』はこの肝は外さなかった。主人公、南光太郎が仮面ライダーへと変身するシークエンスで撮影関係者が泣いて撮影したという逸話がある。それほどライダーにとっての『変身』は重い物のはずだ。ただのギミックではない。
シン仮面ライダーを観て変身ポーズをやりたくなる人はいるのだろうか。私はやりたいとは思えなかった。マネをしたくなるようなあの感覚なくして、特撮としての仮面ライダーとは言えないのではないだろうか。それこそが、数多の等身大ヒーローがある中で仮面ライダーの特筆すべきヒーロー性なのだから。
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