魔法戦 炎土

「ちょいちょいちょいちょいそれマジで洒落になんねーから!?」

 

 炎を纏ったサヤの短剣を見てカイが空中で真っ青になるが、サヤは容赦なく地面を蹴った。放り投げられたカイに難なく追いつき、大きく短剣を振りかぶる。


「あー……。」「怒ってる、というか不貞腐れてるね、サヤ」


 サヤが振り落とした短剣の刃がカイの首を切り落とす寸前、カイが空中で身を捻って短剣を蹴りつけ、回避。同時に手に持った泥団子もとい爆弾をサヤに投げ付け、短剣で受けたサヤを巻き込んで爆発させる。


 派手な土煙が上空を覆う。風でボクたちや校庭の右側に砂塵がいかないようにする。目が砂に入るのは避けたい。頑張って魔法の練習をしている後輩たちの邪魔をするわけにもいかないし。


 ビカ、と上空の土煙に雷が走り、カイが飛び出してきた。軽い身のこなしで着地し、制服についた砂塵を払っている。一拍遅れてサヤも飛び出してくるが、こちらは制服の端を焦がしている。雷がちょっと当たったかな。


 ふわりと重力を感じさせない動きで着地したサヤは、短剣の切っ先をカイに向けて地団駄。


「ほらぁ!初っ端から爆発させてくるんだよおかしいでしょ!」

「おかしくねーし!てかそも短剣で斬るのがわりぃんだろーが!」


あー、始まった。サヤとカイは口喧嘩も込みの魔法戦が常なのだ。セラがジト目で見てくる。何?


「……カイに体術教えたの。ステラだよね」

「別に教えてないし。前対戦したときに、ボクだけ身体強化魔法しか使わないっていう制限かけたのそっちでしょ!?」


 だからボクは泣く泣く短剣も抜けず魔法も使えず頑張ったのだ。サヤの剣を足で叩き落として、カイの魔法を手で叩き潰して、セラの矢を捌いて。そもそも一対三って酷くないか!その時にカイが勝手にボクの体術を見て覚えたんじゃないかなー、と言うボクを白けた目で見続けるセラ。ちょっと。


「………次は身体強化もなしでいこうか」

「さすがにそれ死ねって言ってるよねセラ?魔力循環活性化だけで乗り切れって言ってるもんだよね?」

「ステラならいけそうだしね。次は後輩達も一緒にしよう」

「殺す気だ」


 腹黒には人の心がないらしい。もうこれは次の魔法戦で叩き潰すしかない。セラの視線を無視して目の前で繰り広げられている魔法戦を見守る。


「にしてもまー……カイの、土属性魔法の制御は負けるかなぁ。」


 あそこまで繊細に素早く操れる自信はない。こればかりは土属性の魔法を使ってきた時間と経験だ。ボクは普段、氷属性しか使わないからなー。セラの、嘘こけ同じくらいできるでしょうがという目線も無視する。嘘じゃありませーん。


 数十の土属性の魔法生物を巧みに操るカイと、その魔法生物を次々と叩き斬っていくサヤ。一体倒されたら二体作る、という流れで一秒で作られる魔法生物はどんどんと増えていく。が、サヤも剣の一閃で数体を同時に屠るという器用なことをやってのけているため、拮抗。


「互角かな?」

「さあ?でももうちょっとで動くと思うよ。ほら、カイが仕込んでる。」

「?」


 カイらしい仕込みだな。苦笑するボクに、セラが首を傾げた。そんなボクたちの目の前でサヤがとある狼型の個体を両断した。

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