第2話(3)公園へ
「ここは公園だけど……」
「ああ、この広場から魔力を感知した」
「子供たちも大勢遊んでいるわ! モンスターと遭遇したら大変よ!」
ななみが慌てて周囲を見回す。しかし、モンスターの姿は見当たらない。
「む……?」
「ねえ、本当にここで合っているの?」
「姉ちゃん、レイブンさまを疑うのか⁉」
「レイブンさまに間違いはねえだ!」
「レイブンさまの判断は絶対っす!」
ゴブとクーオとルトがななみに詰め寄る。
「わ、分かったから……顔を近づけないで、まだ慣れてないから……」
「この辺りで合っているはずなのじゃが……」
レイブンも周囲を見回す。ななみが頭をかく。
「頼むわよ、レイブン……」
「レイブンさまだろう!」
「なんと恐れ多い小娘だべ!」
「口の利き方がなってないっす!」
ゴブたちが再びななみに詰め寄る。
「くっ……う、うるさいわね!」
「うおっ⁉」
ななみがいきなり大声を上げたため、ゴブたちは怯む。
「大体アンタたちのつまみ食い代を!」
「!」
「立て替えてやったのは私よ!」
「‼」
「つまり、アンタたちは私に恩があるわけ!」
「⁉」
「分かった⁉」
「分かった、姉さん!」
「恩は返すべ!」
「ついて行くっす!」
「……分かればよろしい」
ななみが満足気に頷く。
「良いのか、それで……?」
レイブンが首を傾げる。
「そんなことより、モンスターたちは?」
「いや、あの辺だと思うのじゃが……」
レイブンが公園のある部分を指し示す。
「え? あの辺は遊具が集まっているところで……」
「む?」
「ははっ、ネバネバして面白え~」
「姿が変わるぞ、すげえ!」
「いや~そんなに喜んでもらえると変化のし甲斐があるラ~」
水色の泥状のものが形状を変化させながら、嬉しそうな声を上げる。
「あ、あいつは⁉」
「知っているの、ゴブちゃん⁉」
「もちろんだ、姉さん! オイラたちと同じく、レイブンさまの配下、スライム軍団の軍団長、『スラ』だ!」
「ス、スラ……」
「語尾にラ~を付けるので、ピンと来たぜ!」
「ピンとくるのそこなの⁉ はっ⁉」
「うおっすげえ、こいつ動くぞ!」
「おおっ! ロボットみてえ!」
「楽しんでもらえているのならなによりだ……」
土色の泥人形が子供たちを肩や頭に乗せながら、淡々と呟く。
「あ、あいつ⁉」
「知っているの、クーオちゃん⁉」
「ああ、オラたちと同じ、レイブンさまの配下、ゴーレム軍団の軍団長、『レム』だべ!」
「レ、レム……」
「『どちらかと言えば不器用な方ですから』というのが口癖だべ!」
「口癖長いわね! はっ⁉」
「きゃあ~カワイイ♡」
「ねえ、次はわたしに抱っこさせて~」
「ふむ……転移も意外と悪くないみゃあ……」
服を着た猫が女子高生たちにちやほやされている。
「あ、あいつはもしや⁉」
「知っているの、ルトちゃん⁉」
「オレたちと同じ、レイブンさまの配下、ケットシー軍団の軍団長、『トッケ』っす!」
「ト、トッケ……」
「気まぐれなところもある、プライドが高い猫の妖精っすが、あごの下を撫でられると弱いっす!」
「プライド無いわね!」
しばらく待っていると、子供たちや女子高生たちがそこから去っていき、スラとレムとトッケが残った。彼らは自分を見つめるレイブンに気付く。
「レ、レイブンさま⁉」
「魔王さま⁉」
「こ、こんなところで会うとは奇遇だみゃあ~」
「……幸せそうなら、それでいい……」
「ちょ、ちょっと待ってラ~!」
「お待ちを……!」
「やっぱり魔王に頼らせてくれみゃあ~」
立ち去ろうとするレイブンをスラたちが慌てて呼び止める。
「どうするのよ?」
「……見なかったことにしようかと……」
「酷くない⁉」
ななみがレイブンを非難する。レイブンが腕を組んで首を傾げる。
「そうは言ってもじゃな……」
「強力な6団長はどうしたの?」
「うっ⁉」
「まさかこの方たちが……?」
「ど、どうやらその様だな……」
「強力だとか恐怖の象徴だとか言っていたわね……」
「お、恐ろしいじゃろう⁉」
「女子供に親しまれていたけど……」
「むう……」
「はあ、まあいいわ。えっと……スラちゃんにレムちゃんにトッケちゃん、うちのクラブハウスに来なさいな」
「え!」
「な、なんと‼」
「マジか⁉」
「ええ、どうせ行く当てもないでしょう? うちなら雨露もしのげるわよ」
「あ、ありがたいラ~!」
「め、女神か……?」
「た、助かるみゃあ……」
「おい、ななみ、まさか……」
「とりあえずこの6団長でなんとかやってみるしかないんじゃないの?」
「ほ、本気か……?」
ななみの思いもよらない提案にレイブンは唖然とする。
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