本戦の、最初の相手は、イキりペア
「本戦開始20分前となりました。本戦出場をするペアは控室まで集まってください」
拡声魔法によって会場にアナウンスがかかる。
「ふたりとも、そろそろ行くといい。負けるんじゃないぞ」
「もちろんだよ。ユノと私のコンビネーションに舌を巻く準備をしてたほうがいいよ」
「リゼ。大口をたたかないほうがいい……いや、まあ、負けるつもりもありませんけどね」
クレアさんの激励を受けて、俺たちは本戦に出場しに行った。
=============
「さあ! 本戦の1戦目を飾るのはこのペアだ!」
アナウンスが高らかに出場者の名前を読み上げる。
「王立学院主席、リゼ・テレストラシオン! 次席、ユノ・アスフェルト! 学院の最強ペアがこのまま優勝へと駆け上るのかぁ―!」
「頑張れー! リゼー! ユノ君ー!」
戦いの場となる会場に紹介された2人の姿が現れる。2人共緊張した様子はなく、談笑さえしていた。
そこで、クレアはリゼの変化に気づく。
彼女がいつも携えているレイピア『エバーブライト』がなく、代わりに刃のついた円環……チャクラムを4つ、腰のホルダーに提げていた。
「あれが、ユノ君が見出したリゼの才能…」
前衛職ではなく、後方支援職のチャクラムがリゼの本当の武器なのだ。
「その2人と戦うのは! 有名ギルド『ライズ』の賞金稼ぎペア! ヒューズ・ゲイルとロナ・ゲイルの兄妹ペアだ!」
リゼとユノいる場所の反対側から2人の男女が入場してくる。
こちらも余裕綽々と行った様子でユノとリゼを見つめていた。
「ライズのゲイル兄妹か…」
あの2人はアーセナル内でも有名だった。ギルドの活動資金の4割は彼らが武王祭で稼いだ賞金であり、二人の連携は王国一だと噂されたこともある。
「ユノ君はともかく、リゼも相手のことは知っているだろうに…」
クレアは仲良く談笑する二人に視線を向ける。そこからは今から買い物に行くかのような雰囲気が漂っており、一切の緊張を感じさせない。
「それほどまでに、勝つ自信があるというのでしょう。それはまあ、お相手も同じようですが」
ヒューズたちも余裕をかましているが、あれはクレアからすれば油断に近いものであった。
恐らく、予選のユノの広範囲魔法を見て、魔力枯渇によってユノが使い物にならないと考えているのだろう。
「甘いな。これから痛い目を見ることになるだろう」
クレアは対戦相手の無事を祈りつつ、大型新人の2人の活躍を注視するのだった。
=============
「さあ! 戦いの前に、両ペアの意気込みを聞いていきましょう! まずはゲイル兄妹から!」
「そうだね、ユノの方に関しては、もう魔力切れで戦えないんじゃないかな? やせ我慢せずに、さっさと棄権したら良かったのに」
「ああ、リゼも実力者とはいえ、俺たち2人を相手するのは難しいだろうな」
「なるほど! 余裕綽々というわけですね!」
なかなかに煽られたが、勘違い野郎過ぎて可哀想になってきたユノである。
「次にリゼ・ユノペアのお二人! 意気込みをお聞かせください!」
マイクを向けられたユノは、なんとも言えずに答えた。
「え、こういうの慣れてないんだけど…リゼ、こういうときって何言えばいいの?」
「思ったこと言えばいいんじゃない? 頑張りますとか、緊張してますとか」
「あー…なるほどね」
リゼのアドバイスを受け、ユノが口を開く。
「えーっと、正直言ってなんで負けるのかが理解できないくらい弱い相手が初戦なので、若干心配ですね。あんまり怪我させないようにしないといけないので」
しん……と会場が静まり、数秒後に爆笑の渦が巻きおこった。
「アイツやべぇぞ! 身の程知らずか実力者か、俺たちが見極めてやろうじゃねぇか!」
「さすがによゆーかまし過ぎじゃない!? 相手は賞金稼ぎよ!?」
などなど、客からの反応は上々、反対に、相手ペアからは殺意が向けられていた。
「身の程知らずめ」
「あはっ、むかつく」
「さあ! 盛り上がってまいりました! 武王祭本戦第1試合、開始です!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます