第14話

金属同士が激突し、火花を散らす。

火の玉を水流で受け流す音がじゅうと鳴り、水を伝う電撃が、どん、がらがっしゃんと鳴り響く。


舞い上がる血潮に粉塵、鉄の刃。


かつて冒険者だった戦士たちが雄叫びをあげて、たった20人の魔人へと立ち向かう。


「緩い」


しかし、数人がかりで編んだ上級の魔術でさえ、魔人ひとりの魔術に勝てなかった。


「くそ、数が多い…!」

「20って聞いてゾッとしたぜ…前回の4倍以上じゃねぇか」

「残る人の地ももう少ない。絶対に守り切るぞ、お前ら!」


応っ!

と掛け声一閃。

男たちが魔人へと果敢に立ち向かう。


しかし、敵は狡猾にも手傷を負った味方を後退させ、回復魔法で治療し、体勢を崩さない。


魔人たちは皮の服しか着ていないのに、ステータスの差が大きすぎて、人間ていどの力では正攻法で致命傷を与えるのは困難だった。


「誰かが特攻をかけて、あの陣形を崩さなければ負ける…」


「誰かが、か…」


ふ、とタルっ腹の大男が目を瞑った。


「お頭?」


彼がその瞼の裏に映し出すのは、守るべき家族の顔。愛するべき街のこと。

そしてちょっぴり色目を使った受付嬢のこと。


「…俺が行く」

「ダメです、お頭!」


仲間の制止を振り解き、男は力強く一歩を踏み出す。

ずしん、と唸るその一歩は、魔人たちでさえ怯みを見せた。


「愛するこの街のために、命を賭して戦う。次はお前たちの番だ。俺の背中を見て学べ!!若者どもぉ!!!」


巨大な斧を振り上げて、男が突撃した。

なりふり構わぬその突撃に、魔族の男が舌を打つ。


「愚族が。知性さえ捨てたか」


しかし、そうなった人間ほど手強い存在もない。

かつて、自らの人生さえかなぐり捨てて魔王に立ち向かった人の子を、勇者と呼んだのだ。


「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」


タルっ腹の男と魔人が激突する。


その、次の瞬間のことだった。


「光あれ」


カッ

私は閃光の魔術を放ち、天より下る光の帯を伝ってその戦場へ舞い降りる。


「な、何者だ貴様!」


魔人が叫ぶ。


「私の名前はクリストス。汝、人間を愛しなさい」

「は?」

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