友題

まれ

第1回 改札口・駅のホーム・電車の乗り換えで困ってる人・車窓鏡に映る君・イケボのアナウンス・アスファルトを割って生える草(現代ドラマ)

 私は大学の四年間を東京で過ごし、今年卒業した。

 この春からは地元の企業に務める。

 その企業は地元では有名な酒造蔵で地元の名産品だ。

 そんなところへ今日は帰る。

 手には小さめのスーツケースを持ち、肩からはちょっとした小物を入れるための黒のショルダーバッグを下げている。

 


 地元へは新幹線で三時間ほどかけて行く。

 今頃、地元の改札口で小学校・中学・高校と同じのいわゆる幼なじみが待っているだろう。いや、さすがにまだいないか。



 東京駅にはホームにもかなりの人が溢れかえっている。旅行に行く人、私と同じように帰る人、上手く乗り換えが出来なかったのか待ちぼうけになってしまってる人、会社に出勤する人。いろんな目的の人がこの東京駅のホームに溢れていた。

 


 しばらく、待っているとようやく地元の近くの駅に止まる新幹線がきた。今日は生憎の天気で遅れていた。駅の改札口の辺りでイケボのお兄さんのアナウンスがあったので、周りの人もイライラする人は少なかった。そんなことはなかった。私と同じようなそれで許せる人だけだった。

 仕事で急いでる人からしたら余計に腹が立っただろう。



 無事に乗る予定だった新幹線に二十分遅れで乗ることが出来た。指定席で予約していたため、その席へ迷わず座る。私の席はE席であり、ガッツリ窓側だ。

 新幹線の扉が閉まってもしばらく隣の席は空いていた。どうやら、隣の席の人はいないみたいだった。荷物でも置こ。



 富士山が見えた。山頂の雪が溶け始め、春が近いことを改めて実感する。これから社会人だ。アスファルトを割って生える草のようにどんなに重たい責任がのしかかろうとも頑張って割って潜り抜けて行こう。責任やめんどくさいこと全般がアスファルトで私が草。そう私は草。それも雑草!逞しい社員になって、いつか花を咲かせてやろう。きれいな花を。



 車窓に映る自分の顔が地元で待つ幼なじみの顔と重なった。

 早く会いたいな。

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