第25話 NTRの危機【梨衣目線】【胸糞】

 ひとりでお手洗いに行くのなんて、中学以来かも。


 真莉愛がお腹冷やしてしまったみたいで、学校を休んでて、美音もほの香も木崎くんロスで机に突っ伏して落ち込んでるから、誘おうにも気が引けてしまう。


 しおりちゃんを誘おうかと思ったけど、仲の良い子たちと楽しそうに話していて、少し気が引けちゃった。


 中学のときなんて、カーストの高い女子たちにお手洗いに行ったのが、バレたら水をかけられたり、覗かれたりして、ゆっくりと個室にこもることすらままならなかったのに、いまは本当に落ち着いていられる。


 すると折り重ねたトイレットペーパーで尿道周りを拭き取り、滴を吸わせたあと、便器に捨てた途端に急に切なくなった。


 ダメ、ここは学校なんだから……。


 ――――数学の肝付きもつきってマジキモい。


 ――――わかる、目つきがやらしいよね。


 ――――そうそう胸とかスカートばっか見てる。


 鈴城くんのことを思うと夜も眠れずに、自慰オナニーふけっていても、また秘密の花園に手が伸びそうになってしまう。


 ドアの外には嫌な教師を、よそのクラスの女の子たちが愚痴ぐちる声がしてきているのに。


 ハンカチを噛んで、声を殺しながらすれば、誰にもバレないかも、なんて馬鹿なことを考えていると鈴城くんのことが恋しくて、切なさが増してくる。


 今日も絶対に彼といっしょに放課後を過ごしたいと思った。


 手を洗い流しながら、自分の姿を見ると中学の頃とはまるで別人が写っている。


 隣でお化粧直ししていた子が私を見るなり、恥ずかしくなってしまったのか、ずらりと並べられたファンデやリップをポーチにしまい慌ててお手洗いから出て行ってしまった。


 醜い醜いデブのアヒルの子だった私が、芸能事務所もしてる鈴城くんの……家族だった人からスカウトを受けるなんてにわかには信じがたいのだけれど。


 また鈴城くんのお世辞みたいな誉め言葉でも、努力した結果が実ったような気がしてうれしい。


 いじめられていることをお姉ちゃんに正直に打ち明けたら、「梨衣は私の妹なんだから、せたらきっとかわいくなる。間違いない!」って言葉に励まされて頑張ってこれた。



 お手洗いから出ると待ち伏せしていたかのように浜田くんが現れ、教室に戻ろうとする私の進路を塞いでくる。


 それでも彼を避けようとすると浜田くんはドンっと壁に手をついて、私を通そうとしなかった。


「なあ、伊集院。オレとデートしてくんねえかな?」


 音にちょっとびっくりしたけど、鈴城くんに恋する私に吊り橋効果なんか無駄だってば!


 それでも怖くて両腕を抱えて警戒してしまうけど、はっきりと浜田くんに私の意思を伝えた。


「私、鈴城くんのことが好きだから!」

「別に鈴城のことが好きでもなんでも構わねえよ」 

「えっ!?」


 それが分かっていてデートがしたいだなんて、どういうことなの?


 浜田くんの意図が分からないでいると、彼は私の肩に馴れ馴れしく触れると、私の身体をいやらしい目つきで舐めまわすように見ながら、言ってのけた。


「今日だけ、オレらの相手してくれりゃ、いいんだよ」

「相手……?」

「伊集院みたいなかわいい奴と遊びてえんだよ、それくらいわかんだろ」


 察しの悪い私に怒ったのか、浜田くんはもう一方の手を腰に回してきていた。


「いやっ! 馬鹿なこと言わないで!」


 私は彼のいやらしい手つきを平手で打ち払って、逃げだしたが、


「おっと、だったらいいのかなぁ? みんなにおまえの過去をバラしてやってもよぉ!」


 大柄の江川くんが両手を広げて私の前に立ちはだかり、まるで壁のようだった。


 彼の見せるスマホの画像には、醜い頃の私の姿が写っていた……。


「どうしてそれを……」

「ああ? そりゃ調べたからに決まってんだろ」


 私は目の前が真っ暗になる。


 ただ力なく立っている私に後ろから浜田くんが肩を叩いて、ひとこと残して教室へ戻って行ってしまった。


「つうこった。放課後、体育倉庫まで来いよ。誰かに言ったら、即バラしてやっから覚悟しとけ」


 そんな……私の過去がみんなにバラされたら、もう終わりだ。


 真莉愛も、美音も、ほの香も、私を軽蔑けいべつするに決まってる。私をかわいい、きれいと言っていた男子たちも幻滅するだろう。


 醜い容姿でいじめられていたと知られるだけで、また女子からは無視され、男子からはいじめられる。


 そしてなにより一番恐れているのが、鈴城くんに私の醜い過去が知られてしまうことだ。



 ――――おえっ! おえっ!



 私はトイレに舞い戻り、吐いてしまっていた。


 もう鈴城くん以外の男の子に軽く触れてしまうだけでも吐き気がしてくるのに、べたべたと嫌らしく掴まれたら、気持ち悪くてどうしようもない。


 浜田くんたちは私を性欲のはけ口にするつもりなのは分かっているけど、あの地獄の日々を考えると浜田くんたちの下へ行かざるを得なかった。



 なんとか吐き気と涙目をぬぐい、教室へ戻り授業に出ていたが、


「お~い、伊集院」


 あれだけ伊集院、伊集院って言って慕ってくれてたんだもん、浜田くんたちだって退学になってしまうような酷いことはしないはず。


「伊集院!」

「はいっ!?」


 ずっと放課後になにをされるのか、頭のなかが不安でいっぱいになっていると、現代文の先生が大声で私の名前を呼んだことで、席を立ちながら返事していた。



 ――――あはははははっ!



 私の挙動がクラスメートたちからすれば、よほどおかしかったのだろう。


 いやだ……いやだ……。


 昔みたいに男子にいじめられて、醜い容姿を笑われるなんて耐えられない。


 お腹を抱えて笑う子までいたが、先生は軽く注意すると私に座わるよう促していた。


「伊集院にしては珍しいな。まあ、つぎからはちゃんと聞いておくように」

「はい、すみません……」


 席につくと刺すような視線を浴びる。


 浜田くんが私が怪しい真似をしないか、ずっと見張っていたのだ。鈴城くんに見られるのと真逆で、彼の視線を浴びるだけで凄まじい悪寒が走り、またトイレに駆け込みたくなった。



 そんな苦しみに耐えつつ、放課後になり鈴城くんが帰宅のために机の棚から教科書とノートを鞄に移していて、しまい終えると彼がこちらを向いた。


「鈴城くん!」


 私は鈴城くんに助けを求めるように席を立ち駆け寄るが、浜田くんと江川くんが揃って私を監視しており、江川くんの手には例の画像が収められてあるスマホを掴んでにやにやと笑っていた。


「伊集院、今日もついてくんのか?」

「ご、こめんね。今日はいっしょに鈴城くんと帰れないの。先生から用事を頼まれちゃって」

「そう? じゃあ明日な」

「う、うん……」


 行かないで!


 ずっと私を見ていて!


 不幸から私を助け出して欲しい……。


 あのときの電車で助けてくれた彼のように。


 鈴城くんにすがるような思いは届くことなく、窓から彼の姿を追うが、学校の玄関で靴を履き替え、校門へと向かう彼を見て、ただ絶望するばかりだった。



 ――――体育倉庫。


 コンクリートブロックを積み上げた簡素な作りに鉄の引き戸をつけた倉庫まで重い足取りで来ると扉の前で浜田くんと江川くんがスマホを見ながら、壁にもたれかかっていた。


 私の顔を見るなり、江川くんが目を丸くしていた。

 

「うおっ、マジで来たよ」

「おらっ、オレの勝ちだ金よこせ」


 私が来るかどうか二人は賭けていたらしい。浜田くんは江川くんが財布から出した五千円札を取り上げていた。


「ま、みんなには黙っててやるから、オレらの相手してくれよ」


 浜田くんは扉を開け、私の背中に触れながら倉庫へ招い入れるなり跳び箱の上に座り、腕組みしていた。


 江川くんはにやけながら、ベルトのバックルを外し、ズボンがストンとコンクリートの床に落ちて、下着が露わになっている。


「何回、抜いたか分かんねえ、伊集院を好きにしていいって考えただけで興奮してきたわ。んじゃ、軽くしゃぶってもらおうか」


 江川くんがパンツに手をかけ、下ろそうとすると浜田くんが跳び箱から下りて、私の後ろへ回りこんでいた。


「おいおい待て待て、おまえは馬鹿か。そこらの女とはわけがちげえ! 伊集院っつたら、その爆乳を拝んでやんねえとな」



 ――――ブチブチブチッ!!!



 浜田くんは私のスクールニットを強引に脱がすと投げ捨て、ブラウスの前立てを両手で掴んで一気に引き裂いた。


 勢いの余りボタンがはじけ飛んでしまい、それを見た江川くんが笑っていた。


「ははっ、すっげー! 伊集院の爆乳でボタンがはじけ飛んじまったみてえだよ」

「いやぁぁぁぁーーーーーっ! 見ないでぇぇ!」

 

 鈴城くんに見て欲しくて買ったピンクのかわいいブラジャーが見せたくもない二人の前に露わにさてれしまう。


「ひょぉぉーーーっ! すっげ! 俺、伊集院にパイズリしてもらいたかったんだよなぁ、くっくっくっ」


 私は両腕で露わになった乳房を必死で隠そうとしていたが、江川くんが強引に私の腕を引き剥がそうとしてくる。


「おいおい、伊集院。減るもんじゃねえだろ。しっかり乳首と乳輪も拝ませろや!」

「やめて、お願いだから! こんなことしたら二人とも学校辞めさせられちゃうよ!」


「ああん? んときはおまえのはめ撮り動画がネットにばら撒かれるときだなぁ、はっはっはっ」


 浜田くんは後ろから私のお腹を腕で抱き抱えながら、もう片方の手にはスマホを持って、下着の露わになった私を撮影してこようとしていた。


 高校デビューを果たして、生まれ変わったはずなのに、私の人生がクラスメート二人によってめちゃくちゃにされようとしていたときだった。


 かたかたと倉庫の鉄の扉がなったかと思ったら、微かに開いて、ほこりっぽい倉庫のなかに光が差し込む。


 きっと誰が助けに……いいえ、そうでなくても誰でもいいから、二人が私を犯そうとしていることを先生たちに知らせてほしいと思っていたら……。


「マジかよっ!? あれがデブ地味子かよっ! すっげ、マジもんの美少女じゃん!」


 完全に開いた倉庫の扉の前に立っていた男の子たちを見て、私は完全に膝の力が抜け浜田くんの腕からずるりと滑り落ちて体操マットの上に跪いてしまっていた。


「うそっ!? なんで阿久津たちがここに……?」


 鈴城くんが助けにきてくれたかと思ったら、私を中学時代にいじめていた男子たちだったので涙があふれてきて、目の前がまっくらになって感情を失ってしまいそうになる。


「なんでって、教えてやんよ。俺がおまえの過去を調べてたら、阿久津らと仲良くなったんだよ。いっしょに伊集院を輪姦しねえかってなぁ。いまのおまえの写真を見せたら、二つ返事でオーケーしたぜ。やっぱかわいくなるとモテるよな、くっくっくっ」


 跪いた私の顎を阿久津くんが掴んでまじまじ顔を見た。


「確かに面影はある。ほんと伊集院は俺たちの玩具になってくれてありがたいな」


 阿久津くんは別の高校の制服を着ており、浜田くんたちのように着崩しておらず、真面目そうな感じだった。中学のときもそう。


 たから阿久津くんたちは私をいじめていたのに疑われることがなかった……。


「私は阿久津くんたちを許さないんだから! 屈服するとか、思わないで」


「不細工だったくせに、かわいくなったら、それかよ!」


 阿久津くんは私の頬を平手で叩いた。


 私の身体はその勢いでマットの上に倒れてしまい、中学時代のトラウマがよみがえってきてしまっていた。


「懐かしの再会はその辺にして、身体で旧交を温め合おうといこうや」


 浜田くんが倒れた私のブラジャーを掴んで乳房を露わにしようとしてきたときだった。


 いきなり体育倉庫の扉が全開にされ、逆光で見えにくいが人影が立っていた。


「誰だっ!?」


 薄目で人影を見ると……。


「「鈴城!?」」

「鈴城くんっ!」


 帰ったはずの彼が戻ってきてくれて、私は涙が出そうになる。


「あー、おまえら邪魔だから倉庫から出ていってくんね? 俺が伊集院と今からこっそり体操マットの上や跳び箱に手をついてお楽しみしようと思ってんだからさあ」


 鈴城くんは倉庫に入ってくるなり、浜田くんたちと阿久津くんたちに飄々と言い放っていた。あれだけ私の告白を断っていたのに、助けに来てくれ俺の女扱いしてくれたのがうれしくてたまらない。


「ははっ! 鈴城ぉぉ、おまえもこれ見たら、驚くぜ。幻滅して、かばう気すら失せるくらいの不細工な伊集院を見ろや!」


 だけれども、一番私が恐れていたことが起こる。江川くんがスマホを片手に鈴城に太っていて醜い姿の画像を見せていた。


「いやぁぁぁぁーーーーーーっ、見ないでぇぇぇーーーーーーーっ!!!」


―――――――――――――――――――――――

いよいよクライマックス&ざまぁですよ!

梨衣たんと経世くんのいちゃいちゃで終わるから、それまでフォローと★つけながら待っててね。


梨衣たんがオナってるとこ、書いてしまって慌てて消した作者でした。

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